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進捗管理の「モノサシ」

初めてのオフショア開発で手こずっています

東京都内のある独立系ソフトウェアハウスにお邪魔して、苦戦が続く中国オフショア開発の実態についてお聞きした。全国数箇所に拠点を持つこの会社、国内の分散開発ではそれなりの実績を残しているが、中国企業との共同開発は今回が初めてだという。

さまざまな工夫を凝らして慎重に進めているものの、なかなか思うようにはかどらないようだ。
<プロジェクト概要(※)>
・対象システム:Web系業務アプリケーション
・活用技術:Java, UML
・中国担当:製造~テスト(2ヶ月間)

■進捗管理の「モノサシ」、三つのポイント
◇:本誌執筆者(幸地) ◆:取材先のプロジェクトマネージャー

◇どのような開発体制ですか?

◆日本側6名、中国側4名、総勢10名の開発チームを組んでいます。中国オフショア開発の下準備という位置づけなので、現在は4名の中国人技術者をすべて社内に常駐させています。

◇中国ベンダに委託した開発工程は?

◆当初は、詳細設計から結合テストまでやってもらうつもりでした。ところが、こちらが期待するレベルのモノが出来上がってこないんです。残念ながら、今は計画を変更して、製造工程からやってもらうことにしました。

◇具体的にはどのような問題が発生したのですか?

◆本来、詳細設計で作成すべき資料を100だとすると、60点、いや、それ以下のモノしか作ることが出来ません。彼らの意識では、このレベルで合格だと思っているのでしょう。本当に参っています。

◇日本が期待するレベルを定量的に評価する基準はありますか?
例えば、この段階なら80点、ここまで出来たら100点満点など、明確で分かりやすい判断の拠り所となる「モノサシ」はなんでしょうか。

◆おっしゃることはよく分かります。口頭ではよく説明したはずなんですが、残念ながら、中国側と共有できるような判断の「モノサシ」は準備していませんでした。逆にお聞きしますが、具体的にはどのような基準を用意すればよいのでしょうか。

◇ポイントは3つあります。

1.全工程の成果物を漏れなく定義する
2.成果物のサンプルを事前に提示する
3.サンプルをお手本として、中国側に水平展開させる

中国オフショア開発では、最終成果物をチェックすればいいという考え方は通用しません。たとえ、あなたが正確な仕様書を提示したとしても、途中の開発プロセスが正しく実施されているかどうかまで、根気強くフォローする必要があります。

◇ご用意いただいた、レビュー報告書を拝見させてください。

◆はい。こちらになります。

詳細設計からコーディング初期に実施されたレビュー報告書の一部抜粋。

・検索機能の仕様が全く理解されていないような気がします
・「わかりました」「出来ます」といったのに、全くNGです!
・何度も同じ説明を繰り返したのに、全く対処されていません
・ソースコードにコメントが全く書かれていません

(本誌では、やわらかい表現に直しましたが、実物の報告書はもっと直接的で批判的な表現でした)

◇かなり辛辣な言葉が並べられていますね(汗)。この報告書を書いた(日本人の)担当者は、かなり感情的になっていますね。

◆そうなんです。実は、中国側との連絡窓口は経験の浅い若手社員が担当しています。いや、もちろん、技術的にはそこそこ出来るのですが、いろいろ事情がありまして・・。何とかしたいとは思っているのですが。

◇どこの会社さんも、そうおっしゃられます(笑)中国オフショア開発実践セミナーでも触れていますが、中国ベンダとの連絡窓口は、やはり実戦経験が豊富な方が適しています。社内事情があるのはお察しいたしますが、中国オフショア開発は一種の新規事業ですから。

◆・・・(苦笑)
中国オフショア開発は新規事業ですか。確かにそうかもしれません。短期的には絶対に原価削減効果は現れないので、長期的な視点で取り組む必要がありそうです。

◇おっしゃるとおりです。ところで、中国オフショア開発の設計からコーディング中に発生するトラブルの要因は大きく二つに大別されます。

1.中国側の仕様理解不足、あるいは考慮不足による設計差し戻し
2.日本側の仕様提示ミス、説明不足、設計不足による手戻り

前出のレビュー内容から察するに、中国側の作業が滞った原因は2.の割合が大きいような気がします。6:4、ないしは7:3の割合で、日本側に改善の余地があるのかと。

◆確かにそういう見方もあると思います。もちろん、開発標準などは、うちから事前にちゃんと提示しています。それでも、設計の考慮漏れやコーディング規約違反が大量に発生します。
こうなると、さすがにうちの担当者も頭にきて、先ほどのように、報告書で厳しいコメントを書いてしまうのです。

◇ところで、レビュー報告書には、担当者の愚痴も多く見られますね。担当者間で不満を言い合うのは、オフショア開発の負けパターンにはまっています。

◆では、どうすればいいでしょうか。

◇担当者の愚痴や不満を吸い上げるのは、大切なことです。特に、今回は若手社員に負荷がかかっているようなので、マネージャーや管理部門の方が親身になって話を聞いてあげてください。その上で、中国ベンダに伝えるべきことがあれば、担当者からではなく会社幹部が直接中国ベンダの総経理にぶつけてください。

御社の例では、現場レベルの対策ではなく、会社間の問題として扱うべきでしょう。風通しのよいコミュニケーションを実現させることを優先させてください。

◆そうですね。場合によっては、中国側現場リーダーの変更もありえます。実は、委託先の中国ベンダには3名の優秀な中国人マネージャーがいます。
次のプロジェクトからは、3名の役員のうち、最低一人は直接現場をマネジメントしてくれるよう要求を出したいと思います。

◇いい考えですね。可能なら「次回対応ではなく、即時対応」を要求してください。

◆次回対応ではなく、即時対応ですか。

◇そうです。中国オフショア開発では、トップダウン的なアプローチが効果的です。リーダーが替われば、プロジェクトの様相は一変します。ぜひ、会社上層部を巻き込んで組織的な解決を目指してください。

◆はい。ありがとうございます。

■成功の勘所
中国オフショア開発は新規事業という考え方を持ってみよう。視点を変えるだけで、違う解決策が見出せるかもしれません。
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