日本にテスト専門技術者がいない理由を説明せよ
日本には、なぜテスタが存在しないのか
なぜ、日本では、テスト専門技術者”テスター”を使わないのか。自分で作ったプログラムを自分でテストするだけですか。本当にそれで品質保証できますか?
(AOTS研修/中国人)
AOTS研修プログラム二日目の風景から。
◇:幸地 ◆:中国人管理者
◇日本の業務系アプリケーション開発では、いわゆる"テスタ"を起用した第三者による試験は少ないと思います。プログラマが自分の担当箇所を自己責任でテストするのが一般的です。
◆中国では、開発部隊とは独立した品質保証部が必ず存在します。なぜ、日本ではテスト専門技術者を使わないのですか。
◇そうですね。いくつか理由を挙げてみましょう。まず、オーダーメイドの業務系アプリケーション開発が中心の日本企業では、テスタによるホワイトボックステストは効果的でないことが多い。次に、・・・・・・
◆ですが幸地先生、自分で作ったプログラムを自分でテストするだけですか。本当にそれで品質保証できますか?
私はこの時点で、日中の様々な相違点が頭に浮かんだ。
・日本と中国の「プログラマ」の成熟度の違い
・日本と中国の初級プログラマ数の違い
・日本と中国のSE、プログラマ、テスタの給与格差の違い
・日本と中国の「品質保証部」の役割や実態の違い
・プロセス重視と結果重視の違い
・無謬性を追求して副作用を起こす日本と合理主義を貫く中国の違い
■成功の勘所
あなたは、日本のシステム業界の事情を知らない外国人管理者から、「日本はなぜテスト専門技術者を使わないのか」と聞かれたとする。
あなたなら、どのように答えるか?日本市場の特徴を簡潔に示し、相手が納得する説明を考えなさい。(相手に持論を押し付けないこと、相手を批判しないこと)
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Comments
我が社の取り組みにタイムリーな記事なのでコメントさせていただきます。
私なら以下のように答えます。
■1.結果が芳しくない
テスト部隊を設置している案件もそうでない案件も結果は変わらない。
(テスト部隊有無に関わらず、良いものもあれば悪いものもある)
■2.プログラマが無責任になる(らしい)
テスト部隊を設置している案件で、品質が悪い場合に必ず以下の報告がなされる。
・プログラマがテスタに依存してしまう。
・テスタのレベルが低い。
■3.ソフトウェア開発はセル生産方式の考え方が向いている(と思う)
ソフトウェア設計は複雑・多品種少量というカテゴリに入るので、
個人が担当する範囲を広げたほうが良い結果がでると思われる。
1・2については反論もあるでしょう。
例えば、1なら「品質がよい/悪いの定義は?」「良い悪いとテスト部隊設置有無の相関関係を分析しているのか?」
「テストのレベルは?」「テスタのレベルは?」などなど
2なら「PGへの指導が不足なのでは?」「スキルのあるテスタを配置すれば?」などなど
それぞれに回答がありますがここでは控えます。
・・・と、テスト部隊効果に懐疑的な内容を書いてきましたが、実はテスト専門部隊を立ち上げようとしています^^
Posted by: かつ | November 23, 2007 09:21 AM
すいません。改めて読んでたら、全く問いかけと噛み合ってないことに気づきました(^_^;)
"テスタ"という言葉だけに反応してました。よければ、消していただきたく・・・。
Posted by: かつ | November 24, 2007 12:24 AM
かつさん、いつも参考になる情報ありがとうございます。
AOTS受講生から、日立には独立した品質保証部があると聞いたが、幸地先生の話と違う。実際はどうなのか?と質問がありました。
「日本には品質保証部はあるが、いわゆるテスターはいない」
と答えました。つまり、メーカー系とソフト専業系では、そもそも開発プロセスの発想が違う、と日本の一般傾向を説明しました。
具体的に確かめたわけではありませんが、中国ベンダーで活躍するテスターと日本のメーカー系列の品質保証部とは、全く機能が違うと思います。
前者は20代前半のプログラマ候補、インターン学生、または、日本語が得意だけど技術を知らない業務系アシスタント。
後者は30-40代のプロジェクトマネジメント経験者で、いわゆる「品質管理」「品質保証QA」に責任を持つ人々。
私が知る限り、中国ベンダーには、システムの品質を保証する専門部隊はほとんど存在しません。中国のSQA部署にいるのは、ドキュメントチェックやツールを使った簡易チェック、そして品質報告書を作成するドキュメント作成の専門スタッフです。
もしかしたら、情報が古いかもしれませんので、幅広く情報を集めたいところです。
Posted by: 幸地 司 | November 24, 2007 08:57 AM
かつです。フォローありがとうございました。
懲りずに追記します。
>「日本には品質保証部はあるが、いわゆるテスターはいない」
私の実感と一致します。少なくともうちの上海拠点はまさにおっしゃるとおりの人材がテストをやってます。
本社(日本)の品質保証室は、技術/マネジメントともに豊富な経験をもった優秀な方々です。(別要因で機能していないのですが・・・)
そこの人がCMMIのセミナーで知り合ったNEC(SONYだったかも)の人に聞いたところ、NECではPM(経験者でなく現役)がSQAをやっているそうです。
品質保証部の出荷OK/NGに対する権限も強大で、顧客が「もういいから出荷させて下さい」というケースもあるそうです。
>メーカー系とソフト専業系では、そもそも開発プロセスの発想が違う
おっしゃるとおりだと思います。
ちなみに、うちは親の親がメーカで厳しい円高を乗り切ってきた会社なのですが、その成功体験をソフト開発に適用できると考えている人が多く、時々、困らされます。
・・・と、嘆いていても仕方がないので、今度、広州の工場を見学させてもらって改善ネタと品質保証ネタを仕入れてきます。
Posted by: かつ | November 25, 2007 03:08 PM
別記事読んでて、また、ずれに気づきました^^;
>メーカー系とソフト専業系
意図はハード製造とソフト製造では、ないですよね・・。
以下の理解でよろしいでしょうか?
■メーカ
UI部よりも下回り(デバイスドライバ/ミドルウェア/画像処理等先端アルゴリズム)の目に見えないところが肝。一般コンシューマ向けに販売するので「ごめんなさい」では許されない。医療機器や自動車等のバグは顧客の生命に関わる。
→高品質
■ソフト専業
業務系のソフトでUI/ビジネスロジックが肝。特定企業向けなので「ごめんなさい」でなんとかなる。顧客の命に関わることはない
→(メーカのソフトと比較して)低品質
私のキャリアのスタートは携帯電話の下回りだったので、業務系のいい加減さ(鷹揚さ)は理解できます。
ただ、メーカ並みのプロセス/品質保証を適用すると、、、、
営業が受注した案件のコストと納期が達成できなくなるために、品質を犠牲にしてるのだと思います。
ということで、やはり幸知さんの↓の主張に同感です。
>メーカー系とソフト専業系では、そもそも開発プロセスの発想が違う
Posted by: かつ | November 25, 2007 03:42 PM
ウチにはテスト専門部隊がいますが、
一般論として本内容はその通りだと思います。
品質保証は本当に難しい問題ですね。
>> 自分で作ったプログラムを自分でテストするだけですか。
>> 本当にそれで品質保証できますか?
逆に、テスト専門部隊を作れば品質が保証できるのか?
という事にもなると思います。
もちろん、あコストを考慮して、です。
品質計画として、専任部隊がいる!というのは顧客にとって魅力的ですが、
システム・アプリによっては、前提知識が必要で、
その教育投資も必要になってきてしまうんですよね。
例えば、そこら辺のおばちゃんに、
AdobeのPhotShopのテストやらせるなんて無謀です。
画像処理の知識が無いと、何が正しいのか分かりませんから。
結局、業務知識を持った開発者がそのまま・・というのが、
トータルコスト的に落ち着いているのかもしれません。
統合テスト中の仕様変更が無くなれば
やり方も変わってくるのだと思いますが(笑
Posted by: しみけん | November 26, 2007 03:55 PM