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国際水平分業を実現する3つの条件

グローバルソーシング(global sourcing)とは
企業で必要となる財やサービスを、必要な時に必要な分だけ世界中の最適地から適正価格で調達する企業戦略のこと。
水平分業とグローバルソーシング(global sourcing)

私の知る限り、グローバルソーシングの日本語訳はありませんが、本誌では“国際水平分業”を使います。拙著『オフショア開発に失敗する方法』では「ソフトウェア開発も国際分業体制に移行する」と表現していますが。

本稿では、これまで意図的に異文化コミュニケーションの話を多く取り上げました。中級者にとっては物足りないかもしれませんが、初心者の目から何枚も鱗を落として、一刻も早く「こっちの水」に馴染んでもらいたいからです。

そして、昨日と今日はグローバルソーシングについて。多様性マネジメントの観点から、オフショア開発組織の成熟度は4段階あります(*)。グローバルソーシングを実現するためには、最も成熟した第4段階「統合」レベルに達することが必須条件です。

(*)文化や言語の壁を超えるオフショア開発とは?(@IT情報マネジメント)

「統合」とは、日本式でもなく外国式でもない第三の組織文化が醸成された状態です。統合された組織文化の影響力は、各国民文化を凌駕します。人々は、組織的にコントロールされた標準プロセスに基づき、無意識のうちに多様性を考慮した適切行動を取れるようになります。

最も成熟した組織の課題こそ、グローバルソーシング(国際水平分業)に他なりません。今日は、ソフトウェア開発で水平分業を実現する3つの条件を考察します。


<条件1>I/Fが世界共通化されたソフトウェア部品の再利用

ソフトウェア部品やパッケージ製品を自由自在に組み合わせて、市場が満足する製品を作り上げなくてはいけません。今どき、RDBやアプリケーションサーバーをわざわざ自作する企業はないでしょうから、何かと批判の多い業務アプリ開発でも半分は水平分業が実現されています。とはいえ、米国流のグローバルソーシングに従えば、EPR導入の際の日本的アドオン開発は水平分業の精神に反します。


<条件2>ソフトウェア開発プロセスの標準化と再利用

企画、設計、製造、組み立て、納入から保守までの一連の工程がそれぞれモジュール化されており、全てのソフトウェア開発で標準プロセスが再利用可能な状態が理想とされます。例えば、企画は日本本社が担当、設計は米国とインドで、製造は中国とルーマニア、組み立て以降の工程は顧客のデータセンターがある沖縄で、一部バックアップとしてベトナムを使う、が実現する状態です。


<条件3>人的資源の最適化

時間の制約が弱い典型的なV字型開発なら、前出の2つの条件だけでソフトウェア開発の水平分業体制は確立されます。顧客からの厳しい要求に素早く柔軟に対応するためには、世界中から最適な人材を調達できる仕組みが必要です。中国語を使ったイスラム教徒向けの流通ソリューションを提供するなら、それなりの人選と最適配置が求められます。日本市場で、日本語で、日本的商慣習に則ったITサービスを構築する仕事では、日本人を中心とした開発体制が最適です。


2009年1月現在、若手SEの立場では、グローバルソーシングの3条件を意識する必要はありません。なぜなら、伸び盛りのSEにとっては、異文化適応の知識とスキルを身につけることが最優先課題だから。

と同時に、正しい文書を作成するための論理思考力を鍛えて、品質保証の礎となる統計をたしなむと良いでしょう(SE系技術は完備しているとの前提)。

今のところ、グローバルソーシング戦略が必要なのは、研究者や大上段から企業戦略を語る者のみです。あくまでも、今のところは。

■問いかけ

<問1>
一般論として「水平分業」と「垂直統合」の違いを説明しなさい。

<問2>
ソフトウェア開発における「水平分業」のメリットとデメリットを挙げなさい。

<問3>
ソフトウェア開発における「垂直統合」のメリットとデメリットを挙げなさい。

<問4>
グローバルソーシングが日本のシステムインテグレーターに与える影響を論じなさい。財務への影響、人的資源への影響、仕事の進め方に対する影響、企業文化への影響など。

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Comments

><問4>
>グローバルソーシングが日本のシステムインテグレーターに与える影響を論じなさい。

短期的には、グローバルソーシングが日本企業に与える影響は小さいと考えます。

なぜなら、日本にはソフトウェア開発の仕事が山のように溢れているからです。業界再編、企業の合併統合による基幹システムの統合プロジェクト。走るソフトウェア部品といわれる自動車とその関連製品。一昔前のホストコンピュータを上回る処理能力を有した日本のお家芸"小型"携帯端末。

このように、日本国内においてもソフトウェア開発への需要はうなぎ登りですが、開発を担うヒトが圧倒的に足りないのが日本社会の負の特徴です。中には、担当者不在でせっかく持ち込まれた開発案件を断らざるを得ない会社もあります。ところが、詳しく話を聞くと、どの会社も受託開発では儲かっていません。大手システム開発会社ともなると、株主への配当責任を果たすために、自社に所属するプロジェクトマネジャーの数では絶対に達成不可能な売上目標を掲げますが、その実態はビジネス・パートナーと称する下請けの中堅ソフトウェア開発会社に仕事を丸投げしてお茶を濁すだけ。

このままだと、ソフトウェア業界全体が疲弊してしまい、体調を崩すソフトウェア技術者が続出してしまいます。特に、脂の乗り切った、真面目で責任感の強い中堅リーダへの負荷は限界に達しています。一部の大手優良企業を除いて、受託開発を専門とする日本のソフトウェア開発現場は、まさに崩壊寸前といったところはないでしょうか。

Posted by: 幸地司 | January 20, 2009 at 12:30 AM

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