外国人技術者は雇用調整弁、オフショア開発は需給調整弁
中国オフショア企業の雇用形態
1年間の短期契約では、従業員にとっても、会社にとっても、大変リスクが高い制度だと思います。日本のオフショア開発が垂直統合モデルである以上、中国でも長期雇用契約に移行するべきではないかと考えています。
(オフショア開発勉強会参加者)
日本人技術者向けIT研修サービス会社を経営する竹田孝治は、NIKKEI NETの有名コラムでこう述べます。
『西葛西ではインド人の姿が急激に減ってきている。「半分くらいになったのでは」。正確な数字はわからないが、友人はそう言う。もちろん、この不況のためである。中国人技術者だけでなく、インド人IT技術者も職を失っている。職を失えば物価の高い日本になど住みたくない。次々と帰国しているようである。中国人技術者は職探しに頑張って残る人も多いが、インド人の場合は中国人ほど日本にこだわりがない。諦めも早いのだろう。』
雇用の調整弁(※)として、日本企業は外国人オンサイト技術者を気軽に活用してきました。昔から、日本のシステムインテグレーション業界では、多数の派遣技術者(偽装請負を含む)が働いています。しかも、派遣技術者は、日本SI企業の競争力の源泉として重宝されてきました。発注企業の指揮下で働くオンサイトの派遣技術者は、利用者側にとって“便利”で欠かせない存在でした。
上記と同じ感覚で、需給の調整弁として「オフショア開発」に目をつけた日本企業ですが、こちらは失敗の連続でした。オンサイト派遣技術者の活用に成功した日本企業ですが、オフショア開発では苦労の連続です。どうやら、従来の人材活用の延長では、オフショア開発を需給の調整弁として活用することは困難なようです。
※雇用の調整弁とは:繁忙期には自動的に人を増やし、閑散期には自動的に人を減らして、日本企業の正社員雇用数を最適化するための仕組み。世界同時不況に陥った昨今は、「雇用の調整弁」=「日本人・男性・正社員の雇用を守る仕組み」として非難の的となっています。
■問いかけ
日本のシステムインテグレータ各社は、オンサイト技術者やオフショア開発を雇用や需給の調整弁として使ってきました。幸いにも、右肩上がりの経済成長が続く間は、古き良き日本的な多重階層構造は、全く問題視されませんでした。調整弁として使われる側も、それなりに自衛策を講じるなどして、長期的には互恵的な関係を築いてきました。
ところが昨年から事態が急変しました。世界同時不況に最も過敏に反応した日本では、各社とも一斉に需給調整弁を閉じました。これが、無数の派遣切りやオフショア凍結を生んだ原因です。
※
以上を踏まえて、下記の設問に答えなさい。
<問1>今後、オフショア需給調整弁が頻繁に開閉されることを前提に、自社に必要な人材マネジメント方針を議論しなさい。従来方針との違いを意識して、一般論ではなく自社の事情を踏まえて議論しなさい。
<問2>今後、オフショア需給調整弁が頻繁に開閉されることを前提に、自社に必要な標準化活動方針を議論しなさい。従来方針との違いを意識して、一般論ではなく自社の事情を踏まえて議論しなさい。
<問3>もしも、あなたの会社が「オフショア開発は需給調整弁ではない」と公式見解を発表したら、今までの人材マネジメントや標準化活動はどのように変化しますか。
※
念のため、下記アンケートにご協力ください。
「あなたの組織にとって、オフショア開発は需給調整弁ですか?」
◆Yes:オフショア開発は需給調整弁
◆No:違います
◆分かりません
◆その他
締切:2009年04月08日18時00分
協力:クリックアンケート
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Comments
「受注量が激減したので、中国とのラボ契約を解消したい」
「中国やインドと協業して、大規模開発の一括受注を目指したい」
「将来、日本人SE不足は必死なので、オフショア開発を活用すべき」
これらは、全て「オフショア開発=需給調整弁」との前提に立った発言です。言葉のイメージは悪いですが、「オフショア開発=需給調整弁」は合理的な判断です。決して、間違った経営戦略ではありません。「派遣労働者=雇用調整弁」だって、決して非人道的な発想ではありません。誤解の無いように。
ただし、これまでの日本SI企業は、雇用・需給調整弁をきつく閉める方法を学んできませんでした。常に「最大多数の最大幸福」を満たす為に十分な仕事量を確保できたからです
Posted by: 幸地司 | April 02, 2009 09:55 PM