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プログラマ35歳限界説がブリッジSEのストライクゾーンを狭める

日本語はたどたどしい上に、今回が初来日です。あなたの指導方針は? の問いかけに寄せられたコメントに返信書いていたら、長くなったので新記事としてエントリします。

芋 たこ 北京さん
> そんなの送ってくるな!受け入れるな!
> 招聘保証状をだすな、が、正解。

異業種の方のご意見は、やはり参考になります。ソフトウェア分野だけに目を奪われると、「日本語」と「専門力」の両立は無理・・・と最初から諦めてしまいます。

景気悪化のせいで下火になったものの、昨年までは「手垢」のついた生意気な中堅中国人SEよりも、純粋無垢の新卒中国人プログラマ候補生の方が好んで採用されました。彼らの一部は、来日して日本でOJT的な指導を受けて中期育成されました。

日本語もおぼつかなく、初来日(滞在期間は長めに設定)

最初から、日本語と技術力の両立は諦めモードです。ただし、新卒の中国人プログラマ候補生には、ブリッジSEのような高度な仕事は到底無理です。

厄介なことに、言葉が流暢であってもブリッジSE業務が務まるとは限りません。技術力に優れていても同様です。その原因は、彼らには、日本のソフトウェア開発現場を支配する「空気」と呼ばれる高コンテクストなコミュニケーションを成立させるための文脈的スキルが足りないから。

そもそも、日本人の30歳ソフトウェア技術者ですら、初対面の顧客と自社をつなぐブリッジ業務は困難なはず。自社製品やサービスを海外市場で販売したことがない組織では、和風な文脈的スキルの獲得に長い年月を要します。過去には、それが高い参入障壁となって、自社のビジネスを外敵から守ってきました。

今や20~30代のソフトウェア技術者の転職は当たり前となったのに、40歳以上のリーダー/マネージャはキャリアの大半を同じ“空気”の中で過ごしています(プログラマ35歳限界説=転職臨界)。

そのため、最新の知識・技術力は若手に軍配が上がりますが、仕事で成果を出すために最も大事な文脈的スキルは圧倒的に中堅リーダー/マネージャの方が上手です。この差は、一生縮まらないでしょう。

したがって、巷のグローバルソーシング云々の議論では、日本人のベテラン社員なら誰もが有する文脈的スキルに頼らないでも成果が出せるような仕組みや組織改革が必要だと訴えかけます。

つまり、移植性の高い技術力さえあれば、空気を読む文脈的スキルがなくても日本企業で活躍できるのが理想ではないか。外国人ソフトウェア技術者でも日本で高い成果を出せるために、職場の“空気”そのものを換えてしまえ、というのが最近の「ダイバーシティ・マネジメント」の風潮です。

教科書的には、ソフトウェア市場環境が安定的に推移する限り、ダイバーシティ・マネジメントの理念はソフトウェア現場に根付かないと推測されます。市場や競争環境が安定的である限り、劇的に変革(職場の“空気”を入れ替える)するコストの方が高く付くからです。

21世紀初頭、米国型オフショアリングの大成功を目の当たりにして、日本でもオフショア開発が市場環境を激変するのではないかと期待されました(あるいは、恐れられました)。

まだ決着が付いたわけではありませんが、今のところ、日本市場に閉ざされた情報システム業界では、オフショア開発の影響は極めて限定的です。中国勢が日本の情報サービス業界に破壊的な影響を与えるのではないかと恐れられましたが、実際には恐るる足らず。

2009年の日本ソフトウェア業界では、米国的に冒険してオフショア発注比率を高めるよりも、持続的にコツコツと改善する方が優れた業績が上げられます。


以上の環境分析から、海外勢との他流試合を繰り返してきた芋たこ北京さんの所属組織と、日本のソフトウェア組織とは、人材のストライクゾーンが違いすぎることが推測されます。残念ながら、多くの日本的ソフトウェア企業では、ど真ん中の直球しか対応できません。日本語ができて、技術力もあって、管理もできて、性格が良く日本社会に適応できる人だけが、優秀なブリッジSEとして活躍できます。

もし、市場環境が変われば、人材戦略も変わると思います。例えば、このような市場変化が予想されます

・SI事業も海外売上を高めよと株主から要求される
・親会社の海外売上比率が高まったので、情報システムも海外で作り海外で運用する方が合理的と判断される
・政府系大型案件を、新興オフショアベンダの日本法人が元請けとして受注する

時代と共にストライクゾーンも変わってきますが、日本の情報サービス業界に劇的な変化がやって来る兆しはありません。コツコツと、じっくり長期間かけて、狭いストライクゾーンにあう外国人ブリッジSEを増やしていこうというのが、現在の人材戦略の主流です。

Dsc02177

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