オフショア反対は経済合理的
オフショア推進派、オフショア反対派の前提条件
あなたのオフショア反対の判断は正しいです。今後も未来永劫、会社が存続し、仕事内容も安定し、仕事量の波も小さく、従業員の質や価値観が今と同じ状態が続くと仮定すれば・・・。
あなたの会社のある事業部長(45歳・男)が、オフショア推進に猛烈反対しています。彼のオフショア反対理由を分析します。
・全体的に仕事が減っているのにオフショア活用なんて論外
長年お付き合いしてきた国内協力会社への発注量が激減する中、単に安いだけのオフショア開発を進めるわけにはいきません。一時的なオフショア発注単価の安さに目を奪われてはいけません。景気が回復すれば、オフショア勢はすぐに拡大路線に戻って弊社対応の優先度を下げるはずです。ならば、信頼できる国内協力会社は社内プロパーを長期視点から育成する方が断然ましです。
・個人にとっても組織にとってもオフショア反対は経済合理的
現状では、オフショア反対派の判断は経済合理性があります。なぜなら、オフショア推進の立場にまわると、45歳過ぎてから新たに学習すべき項目が増えるから。語学力、職務規程力、文脈ではなくコンテンツによるコミュニケーション、明確なリーダーシップなど。その学習コストは、いったい誰が支払うのでしょうか? 右肩上がりの高度成長期なら潤沢な教育予算がありますが、戦後最悪期といわれるこの時期には、研修費は真っ先にカットされます。
・オフショア適応に時間がかかり一時的な品質低下は避けられない
オフショア反対派の事業部長(45歳・男)が環境適応できないうちは、従来よりも仕事の生産性は下がります。品質は劣化し、顧客サービスも低下する恐れがあります。オフショア開発の将来性は認めますが、だからといって目の前のお客様に迷惑をかけるわけにはいきません。
・役割責任の明確化や成果主義の徹底は、時代に逆行するのでは?
マニュアルを整備したって、刻々と変わる顧客の要件仕様には対応できません。明瞭かつ明確なリーダーシップを発揮しようモノなら、部下から“パワハラ”だと訴えられ、挙げ句の果てには鬱病で仕事に穴を空けられてしまいます。
・厳しい時代だからこそ、目前の課題をコツコツとこなすべき
優秀な外国人がいたら積極的に受け入れます。でも、指示がないと動けず、かといって“ほうれんそう”も出来ないような自律性の欠ける外国人は日本の職場に適応できません。厳密な職務規程を整備する暇があれば、現場を訪問してたくさんの人と会い、時にはノミニケーションを介して職場の「空気」を見極める方が効果的です。中間管理職だって四半期毎に厳しく評価される時代ですから、オフショア拠点の育成なんて「絵に描いた餅」で遊んでいる暇はありません。日本の物づくりの強みを生かすためにも、全員の価値観をあわせて一致団結し、自律的に動けるプロフェッショナル集団を目指します。ソフトウェア開発は人が命です。
■問いかけ
<問1>
オフショア抵抗者にとっての暗黙の前提を挙げなさい。
(例:顧客との擦り合わせが多い部署ではオフショア活用は困難)
<問2>
オフショア推進者にとっても暗黙の前提を挙げなさい。
(例:近い将来、日本人プログラマは不足するはずだ)
<問3>
あなたの身近にいるオフショア推進に抵抗する人々の理由を分析しなさい。年齢別、役職別、職務別にそれぞれ検討して、共通する理由を抽出しなさい。また、共通しない理由もそれぞれ挙げなさい。
The comments to this entry are closed.
Comments
素晴らしい意見だ。
経営者たちの多くは目の前の数字にしか興味を示さずに手を出す。
オフショア開発とは「安かろう、悪かろう」であることを世の中の経営者達は本当に認識して頂きたい。
しかも結局は低品質リカバリに工数が掛かるため、「安かろう」でも無いのだ。
Posted by: すばらしい | April 01, 2011 05:57 PM