中国ソフトウェア産業を発展させる5つの政策
第13回中国国際ソフトウェア博覧会
複数のメディアが報じるところによると、今月北京で開催された第13回中国国際ソフトウェア博覧会で、政府高官が中国ソフトウェア産業を発展させる5つの政策について発言しました[1]。(1)ソフトウェア産業の発展指導意見の制定、完璧な計画の作成
(2)企業ソリューション(組込やSI)の促進
(3)ソフトウェア産業の新たな成長分野の開拓
(4)モデル地区、基幹企業を認証し、モデル事例を提示
(5)健全な人材育成システムを構築
私がこのニュースから感じたことについて3点言及します。
●中国では経済活動への政治介入が増している
IT製品ソースコード強制開示やフィルタリング強制導入に続き、中国政府が民間主導の経済活動に積極的に介入する姿勢が伺えます。上記の政策から、特に私が着目するキーワードを3つ抜粋します。
「発展指導意見の制定」
「完璧な計画の作成」
「モデル事例を提示」
●中国人プログラマの過剰供給が問題視されるようになる
私が2006年に予測したように、中国人IT技術者の過剰供給が現実味を帯びてきました[2]。
本来、ITは特定地域に大量の雇用を創出する産業ではありません。中国政府がダム建設や工場誘致と同じ感覚でIT産業に大量雇用を期待すると、どうなるでしょうか。
それは、中国人の大卒ホワイトカラー希望者にブルーカラー的な仕事を強要することを意味します。これまで、日本人プログラマはブルーカラー的な扱いに耐えてきましたが、中国人プログラマは画一的なマニュアル作業に耐えられるでしょうか? 平均的な中国人にとって、対日オフショア開発の下流工程は魅力に乏しいという事実を思い出してください。
[2] 中国人IT技術者は過剰供給気味!?(@IT情報マネジメント)
●中国政府は公共事業的な発想でIT雇用を作り出そうとしている
中国政府は、銀行貸し出しを介した財政出動により企業ソリューション(SI事業)というIT産業の有効需要を創出するつもりです。中国政府によってモデル地区や基幹企業が制定され、完璧なモデル事例と完璧な計画の下で、民間セクターのIT投資が加速されます。
国産OS・国産ERP・国産サーバ・国産ネットワークインフラによるシステムインテグレーション案件が爆発的に増えると予想されます。2009年のGDP成長(保八[3])のためにも、極力輸入を抑える政策を採ると思います。
■問いかけ
2009年以降、中国ではIT内需が拡大すると言われます。不景気に苦しむ日本のSI企業にとっては、中国国内のソリューション案件は、喉から手が出るほど欲しい仕事ではないでしょうか。
ここで問いかけ。
上記3つの幸地の分析が正しいと仮定します。日本SI企業が中国の内需案件を受注するためには、どうすればいいでしょうか。
<回答例1>
中国GDP拡大を促す効果のあるオフショア開発発注をちらつかせながら、政府筋と内需案件の受注を交渉する。この際、極力日本からの資材持ち込みをなくして、必要なハード・ソフトは全て中国国内で調達することを約束する。
<回答例2>
中国ソフトウェア産業を発展させる観点では、当面はITによる経営合理化は嫌われます。むしろ、部門ごと・企業ごとに専用のコールセンターやバックオフィス機能を充実させるなど、人海戦術による非効率な提案の方が好まれる可能性があります。
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