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居酒屋タクシー、キックバック、お中元とお歳暮

先週出題した企業倫理に関する問いかけを再掲します。

<問い>
ビジネス環境に個人関係が深く入り込む中国やベトナムでは、仕事の仲介者が売り手から謝礼をもらうキックバックが正当な商習慣として認識されています。そのため、会社の調達担当者が調達先から不正に賄賂を受ける事件も横行します。海外オフショア事業を成功させるためには、「郷に入らば郷に従え」の格言通りに日本企業もキックバックや領収書のない個人的な謝礼を支払うべきでしょうか。

<選択肢>

(1) 正当な商習慣として支払うべき
(2) 日本で認められないキックバックは支払うべきではない
(3) どちらとも言えない
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<読者コメント(3件)>

・会社の規模や進行中案件の規模によりますが柔軟に対応するスタンスだけは必要であると判断いたします。

・その現地での法に触れない範囲なら。

・お土産や、日本的なお歳暮・お中元程度の、日本の社内的/法律的には、接待・交際費として合法的に処理可能なものについては、渡せば良い。家電・化粧品等もその類。特に、まだ海外渡航がそれほど頻繁でない中国企業相手には、海外の珍しいものは、有る程度人間関係を作る上で、有効。私の経験では、子供の居る相手に、成田空港で買った、Kittyの人形焼は、箱も綺麗だし、ほんのり蜂蜜風味は、非常に好評だった。法律や社内規程の範囲内であれば、頭と知恵を使って経費削減を考えた上で、そうしたお土産程度の謝礼は問題なし。・・・・・・


<解答例> (1) もしくは (3)

企業倫理に関わる極めて難しい問題です。例えば、中国やベトナムでは、旧暦の行事にあわせて従業員やお世話になる取引先に高額なお土産(月餅)やお年玉(現金)を与える習慣があります。

個人のポケットマネーから支払われる領収書のない物品贈与も日常茶飯事です。日本社会にも、お世話になった取引先に物品贈与するお中元やお歳暮という「キックバック」に似た商習慣は存在します。

ついこの前まで、日本でも「居酒屋タクシー」のような顧客サービスが存在しました。居酒屋タクシーが問題視された理由は、国家公務員倫理規程に違反したからです。では、国家公務員倫理規程が適用されない民間人が相手なら、居酒屋タクシーのサービスは全く問題なしと考えてよいのでしょうか。

国家公務員倫理規程によると、居酒屋タクシーの問題点は「金品の授受」が発生することです。だとしたら、航空会社と同じようなマイレージ制を導入すれば倫理規程違反を回避できるのでしょうか。

居酒屋タクシーを利用する国家公務員は、溜まったマイレージを使って車内でビールやつまみと交換するシステムです。どうしても金品の授受が問題なら、溜まったマイレージを使ってタクシー料金を値引きする、キープボトル(自分専用のビール)を居酒屋タクシーに設置させてもらう、などが回避策として思いつきます。これらも、すべて国家公務員倫理規程に引っかかるのでしょうか。

ことほどさように、倫理規定の問題は複雑です。

日本で認められないからといって、海外の商習慣を一律否定する姿勢は非現実的です。したがって、消去法で(2)は不正解とします。(1) と (3)は、どちらを選択しても構いません。答えそのものよりも、答えを導き出すプロセスと根拠に着目してください。


■問いかけ

あなたの会社が多国籍企業に買収されたとします。その後、すぐに欧州出身の上司が赴任してきました。そして、支出削減プログラムが実施されました。現状を分析した上司は、現場のマネージャを集めてこう指示しました。

「今年から、会社の経費を使った残暑見舞いハガキはやめます。年賀状も同様です。取引先への物品贈与となるお歳暮も禁止します。もし必要なら、すべて個人負担してください」

「ついでに、銀座のママから届いたお中元も返却してください。高額な金品の授受は倫理規定に違反するので」

「部課長クラスの接待ゴルフは、明らかに営業活動なので休日出勤の申請を出してください」

あなたは、どう反応しますか?

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