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アンケートは仮説検証プロセス

オフショア大學を運営する私のもとには、ときどき大学の研究室からアンケート調査への協力依頼が舞い込んできます。

今年だけでも、すでに博士論文、修士論文、4年生の卒業論文への協力依頼がありました。もちろん、それぞれの調査に対して出来る限りの資源を提供しました。昨年は、中国浙江大学からも企業調査の依頼がありました。来年はベトナムかな?

アンケート調査は、仮説検証プロセスに欠かせない一つの有効な手段です。各種アンケート調査の相談を受けるときには、相手が望めばアンケート調査項目の設計にも口を出します。かつて、統計技法(パターン認識アルゴリズムの研究開発)で飯を食った経歴を活かした社会貢献です。

今月のオフショア開発勉強会では、「統計力」を磨いて品質を改善する超初歩的な技法を初心者向けに解説します。アンケート設計にも言及しますので、興味ある方はお気軽にご参加ください。

先日、東京の上智大学大学院に通う学生さんから、日本企業における外国人活用の実態調査に関する協力依頼がありました。いただいたアンケート項目を眺めながら、私は外国人活用の理想と現実の乖離を分析しました。

■ 問いかけ ■

下記のアンケート項目を読んで、後の設問に答えなさい。

<上智大学アンケートより> 貴社では外国人社員の方に対して仕事上配慮していることはありますか。あてはまるものをすべて選んで番号に○をつけてください。

 1日本人の社員をサポート役でつけている
 2帰国する際の費用を会社が負担する
 3直属の上司に配慮を要請する
 4社内で孤立しないように配慮する
 5社内文書を日本語と外国語で作成する
 6日本語の学習のサポート(費用負担など)     
 7宗教、出身国の慣習に合わせた休暇の付与
 8日本人と同じような評価基準を持っている    
 9外国人自分自身の意見をはっきり言えるような場を設けている
 10日本人と外国人がお互いの文化と慣習を知る機会を提供する
 11その他(          )     
 12 特別なことは何もしていない

<問1>上記アンケート設計者の出題意図を分析しなさい。
回答例:上記アンケート項目は、(       )という仮説を検証するために設計されました。

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業者がお客をコントロールする

次の相談を読んで、後の設問に答えなさい。

はじめから厳しい要求仕様だと分かっていましたが、背に腹は代えられぬとばかりに、営業主導でオフショアすることになりました。中国子会社は、日本側の無謀な仕様変更にも必死で食らいつきました。

それでも、やはり作業遅延が多発したため、私はお客との間で作業優先度の確認と納期調整を幾度となく繰り返しました。この時点で、お客の心証は随分と悪くなっていました。

バグ修正が進みある程度進んだ時期になると、今度はそれまでは目をつぶっていたような画面レイアウトの乱れ、フォントの統一など様々な指摘を受けこれの対応でもまた多大な工数を使うことになった。

これまでの多くのバグがあったこともあり、本来ならば追加請求とするべき内容も受けざるを得ない状況になってしまいました。私は、お客側の過剰とも思える要求をコントロールできませんでした。

(相談者:オフショア大學受講生/切り出しSE)

■ 問いかけ

<問1>この相談には、日本の請負ソフトウェア業界が抱える深刻な問題が含まれます。複雑にからみあった問題を構造化して、重要順に並べ替えなさい。

<問2>日本型の請負ソフトウェア開発では、文言通りの「契約」よりも、その場の雰囲気や状況に流されてしまいます。その理由を、若手外国人プログラマが理解できるように合理的に説明しなさい。

<問3>この相談例では、中国オフショア子会社からの進捗報告を鵜呑みにしたところ、蓋を開けたら「不具合だらけ(画面レイアウト等)」という事態が頻発しました。巷では、「日本人はすぐ相手を信用する」「日本人はすぐだまされる」と噂されます。一体なぜでしょうか。その理由を、若手外国人プログラマが理解できるように合理的に説明しなさい。

<問4>請負ソフトウェア開発において、業者(vendor)がお客をコントロール(control)するとは、いったいどういうことでしょうか。若手プログラマが理解できるように合理的に説明しなさい。なお、片仮名や外来語は極力用いないこと。

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日航国際線、関西国際空港-大連、関空-杭州を廃止

経営再建中の日本航空が、11年度末までの3年間で神戸や静岡、松本など国内7空港からの撤退を検討していることがわかった。神戸(神戸市)、静岡(静岡県牧之原市・島田市)、松本(長野県松本市)、広島西(広島市)、丘珠(札幌市)、奥尻(北海道奥尻町)、粟国(沖縄県粟国村)。ついでに、国際線は、関西国際空港-大連、関空-杭州、成田空港-ローマなどの路線を廃止する。(朝日新聞ほか)

静岡県側が出した搭乗率保証こそが、今年6月に開港した静岡空港へのJAL進出の決定打だったはず。ということは、新知事が搭乗率保証を減らしてきたのかもしれませんね。

日本の航空行政は魑魅魍魎としているので、素人にはさっぱりわかりません。とにかく、沖縄便を安くしてください。エアアジアやジェットスターの参入を望みます。

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要求仕様の意図を理解するために全体像が必要?

■ 絶対に完成しないジグソーパズルの法則
あなたの目の前に、十分に大きなジグソーパズルが置かれています。このジグソーパズルに私がある細工を施すと、あなたはそのジグソーパズルを絶対に完成できなくなります。「ある細工」とは、いったいどんなことでしょうか。念のために前置きすると、パズルの一部を「隠すこと」でも「変形させる」ことでもありません。 正解は・・・

次の一連の発言に間違いがあれば、具体的に指摘しなさい。

(a) オフショア開発の現場で交わされた会話より

日本「システム全体の開発ロードマップは必要ですか?」

海外「要求仕様の意図を理解するために絶対に必要です」

日本「開発ロードマップには、君たちには理解できない箇所が数多く含まれているのだが」

海外「全体の関連性が明確になれば、I/F設計も改善されます」

日本「了解。これまで、要求仕様が明確なら全体の開発ロードマップは不要だと考えていたが、開示してみよう」

海外「ありがとうございます」

※この会話の後、オフショア委託先に全体の開発フォードマップが開示されるまでに3ヶ月要した。

(b) 当社では、開発ロードマップ開示の是非を問う議論から「自分勝手に想像せず、相手とよく話し合う」という教訓を得ました。

(c) よって、今後は、要求仕様の裏に隠された「暗黙の仮定」を全て文字に書き出すよう現場に指示を出しました。

■ 問いかけ

会話(a) は全て正しい(Y/N)
教訓(b) は全て正しい(Y/N)
指示(c) は全て正しい(Y/N)

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同化政策と言いながらFace to Faceを避ける日本人の二枚舌

■ 同化政策とは
オフショア開発事業における同化政策とは、「日本人の思考/行動を変えなくても、従来と同等かそれ以上に品質のよい成果物がオフショア先から納品される」を目指す経営方針の一つです。 (オフショア大學講義録より)

次の意見に間違いがあれば、具体的に指摘しなさい。

(a) あなたの会社が、オフショア開発事業で同化政策をとるなら、日本側がFace to Faceで説明する努力が欠かせません。

(b) あるいは、オフショア委託国から外国人キーパーソンを日本に呼び寄せるための予算を確保しておき、日本の国内協力会社がそうするように、外国人がべったり日本の現場に張り付かなければなりません。

(c) そもそも同化政策とは、日本側がこれまで通りのやり方を継続してもオフショアを成功させられる体制作りが狙いです。これまで、日本側では頻繁にFace to Faceで説明&仕事していたなら、オフショア開発でもそうしないと同化政策にならないでしょう。

(d) 実際には、距離の壁は大きいので、例えば次のガイドラインを導入します。

「TV会議はFace to Faceの2分の1の伝達率」
「電話会議はFace to Faceの3分の1の伝達率」
「英語会議は日本語会話の2分の1の伝達率」

(e) ゆえに

「TV会議はFace to Faceと比べて2倍以上の伝達時間を要する」
「電話会議はFace to Faceと比べて3倍以上の伝達時間を要する」
「英語会議は日本語会話と比べて2倍以上の伝達時間を要する」
「英語による電話電話は、日本語によるFace to Face会議と比べて6倍以上の伝達時間を要する」

■ 問いかけ

主張(a) は全て正しい(Y/N)
主張(b) は全て正しい(Y/N)
主張(c) は全て正しい(Y/N)
主張(d) は全て正しい(Y/N)
主張(e) は全て正しい(Y/N)

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精神論で朝寝坊は改善されぬ

■ 問いかけ

オフショア大學の教えによると、以下の問題解決は間違っています。誤りの原因を指摘して、正しい問題解決の手順を提案しなさい。

・問題:若い外国人プログラマは、すぐに勝手に見切り発車する
・原因:事前に「ほうれんそう」しないから
・解決法:チームワークや品質作り込みの意識を高める

早起きできず遅刻を繰り返す人の問題解決を例にとって考えてみましょう。

・問題:早起きできず、遅刻が絶えない
・原因:仕事への意欲が足りない
・解決策:仕事への意識を変える

経験上わかるように、仕事への意識を持ったからといって朝寝坊の癖は解消されません。子どもへの深い愛情を持ってるのに、幼児虐待を繰り返す親は大勢います。実際のところ、「意識変革」だけでは、世の中の問題の大多数は解決しないのです。

オフショア業界でも同様です。人は簡単に仕事への高い意識を持つことは出来ません。さらに、他人の「意識」を変えることなど更に困難です。通常は、昭和のように時間をかけてOJTで育成するか、心理学的な技法を使って「洗脳」するしかありません。

さて、前出の「早起き」で結果を出す方法を考えましょう。ヒントは、意識変化よりも「目に見える」プロセスや行動手順を改善する仕組みづくりです。その方がよっぽど手っ取り早く、効果も高いと思われます。

・問題:早起きできず、遅刻が絶えない
・原因:目覚ましで起きるが、つい二度寝してしまう

・解決策:
 - 目覚ましを複数用意する。
 - 目覚まし時計の一つをベランダの外に設置する。
  止めないとご近所迷惑になるから大変。
 - 他人と早起き競争する。早起きブログを立ち上げる。
  朝ご飯ブログを立ち上げる。
 - 自宅から撮影した今朝の富士山写真をブログアップする・・・

このような具体的な行動レベルに直接メスを入れれば、本人の意思の強さに関わらず強制的に「早起きできた!」という結果が得られます。

理由はともかく、結果を出し続ければ、いつの間にか人の意識は変わり始めます。つまり、行動が変われば次第に意識も変わります。他人から強制的に言われても、本人の意識はなかなか変わりません。でも、small win を繰り返すうちに自分で気付けば、人の意識は変わります。

このような意識と行動について、中国オフショア開発実践セミナーでは「報酬マネジメント」の理論を導入して、科学的に解き明かします。お楽しみに。

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for文の繰り返し制限数を明記すべきか

中国オフショア開発の現場最前線で活躍する人からの相談。

日本から中国子会社に提出したコーディング規約の中に「for文を繰り返さない」という禁止令がありました。ところが、中国側から、「何回か指定して頂けないと対応できません」と言われました。

中国オフショアでは一事が万事この調子なのでしょか。こちらとしては非常に困ります。当社には他にも「一つ関数(method)の行数は長すぎない」などのコーディング規約があります。いちいち数値指定しないと対応できないんなんて、中国子会社はプログラマではなく単なるコーダーではないでしょうか。

あなたの考えに最も近い選択肢を1つ選んでクリックしなさい。

for文の繰り返し制限数の明記は当然
for文の繰り返し制限は粒度の粗い指針で対応すべき
その他

結果を見る
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締切:2009年09月18日18時00分
協力:クリックアンケート http://clickenquete.com/

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真っ先に意識変革しようとする危うさ

今週のオフショア大學では、「意識変革」について議論を交わしています。オフショア委託国の現地企業で働く実務経験の浅い23~26歳のプログラマに対して、日本式の「ほうれんそう」を教えようと思ったら、あなたならどうしますか。

ある人は、チームワークの大切さを説き、別の人は「上流から品質を作り込む」大切さを説きます。この議論が始まったきっかけは、次のような問題解決アプローチを何の疑いも持たず受入れてしまう現状に危機感を覚えたからでした。

・問題:若い外国人プログラマは、すぐに勝手に見切り発車する
・原因:事前に「ほうれんそう」しないから
・解決法:チームワークや品質作り込みの意識を高める

今月末に開催される中国オフショア開発実践セミナーでは、拙著プロジェクトマネジメント【SE編】で導入した文化の三層構造モデルを用いて、異文化衝突を解消する課題解決アプローチを詳しく解説します。

 文化構造の第三層を操作 → 第二層を操作 → 第一層を操作

ここで、「文化構造の第X層」とは、オフショア大學の標準テキストプロジェクトマネジメント【SE編】で導入した文化の三層構造モデルを参照しています。

つまり、正しい課題解決アプローチはこういうこと。

Step1 目に見えるプロセス、手順、帳票を整備して、仕組みで対応する・・・文化構造の第三層(外側)を操作

Step2 目に見えない合意形成のプロセス、意思決定に関与する利害関係者の明確化とルール化。さらにルールの背景(context)を共有する・・・文化構造の第二層を操作

Step3 意識を変える、企業文化を刷り込む、第三の新しい組織文化を作り上げる・・・文化構造の最深部を操作

■ 問いかけ

オフショア大學の教えによると、以下の問題解決は間違っています。誤りの原因を指摘して、正しい問題解決の手順を提案しなさい。

・問題:若い外国人プログラマは、すぐに勝手に見切り発車する
・原因:事前に「ほうれんそう」しないから
・解決法:チームワークや品質作り込みの意識を高める

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悪い報告の三大悪(隠蔽/嘘/言い訳)

先日から、日本語能力検定試験3級程度の外国人ブリッジSEを対象した研修カリキュラムを検討しています。プログラマとして独り立ちしたものの、プロジェクト管理の経験に乏しい「PG以上/PM未満/SE修行中」のソフトウェア技術者が対象です。

ブリッジSE育成研修の内容は、3分野に大別されます。

1)日本語研修
2)ソフトウェア技術研修
3)ブリッジSE研修

これまで、オフショア大學では主に領域3に特化した研修トレーニングを提供してきました。ところが、「早い安い使える」を合い言葉にしたブリッジSEの垂直立ち上げ教育への要求が日々高まっている現状を踏まえて、オフショア大學でもブリッジSE育成を全方位で網羅することになりました。

そこで、普段オフショア大學がお世話になる日本語学校の校長先生とも相談しながら、外国人ブリッジSE垂直立ち上げに必要な日本語研修の課程を企画しています。

オフショア大學が考える初中級用ビジネス日本語研修は、以下の流れに沿って進められます。一般的な日本語学校の教育とほぼ同じです。

・自己紹介
・あいさつ
・許可/依頼/誘い
・電話/メール
・提案/申し出/アポイント
・ほうれんそう
・会議/意思決定
(最大2週間の短期集中トレーニング)

出典:米田隆介ら (2006)、ビジネスのための日本語 初中級、スリーエーネットワーク を参考にオフショア大學が整理

オフショア大學の日本語研修は、3つの分野で構成されます。

a) ビジネス日本語(基礎編)
b) 日本ビジネスマナー(一般/ソフトウェア業界)
c) 専門用語(ソフトウェア業界/ブリッジSE業務)

数年間、日本で働く覚悟を持つ外国人ブリッジSE候補者に対しては、それなりに厳しいスパルタ教育を施します。ところが、仕様検討や業務切り出しで通常2週間、長くても3ヶ月間の日本出張予定者に対しては、費用対効果に優れた短期集中型の日本語教育が求められます。

オフショア大學では、後者を意識した研修プログラム(OJT+OffJT)を構築しています。ちなみに、今月開催のオフショア開発コーディネータ養成講座では、人材育成を企画する担当者が知っておくべき理論と実践法を学習します。

■ 問いかけ

<問1>以下の慣用句を英語に翻訳して、適切な使い方を指南しなさい。

「ちょっとよろしいでしょうか」
「よろしくお願いします」
「いつもお世話になっております」
「~っけ?」(例:どうなっていましたっけ?)
「さっとやってもらえるかな」
「これは、ざっくりでいいから」
「それは先にやること」
「すみません」
「どうも」
「ほうれんそう」
「社会人の自覚を持つように」
「責任を持って自発的に行動しましょう」

<問2>あなたは、PG以上/PM未満/SE修行中のブリッジSE候補者に、「悪いことも必ず報告する」という社会人としてのビジネス常識を教育します。どうすれば、いいでしょうか。

ホウレンソウを怠ったら人事査定で厳しくマイナス評価する
隠蔽/嘘/言い訳の三大悪を見分けるチェックリストを運用する
隠蔽/嘘/言い訳の三大悪の弊害を叩き込む
悪いことを報告したら褒める

結果を見る
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補足:選択肢1は、仕事の失敗ではなく、報告遅延そのものをマイナス評価します。選択肢1は評価制度にメスを入れます。選択肢2は日本側の自衛策。選択肢3と4は完全な精神論です。

参考
・村上吉文(2008)、しごとの日本語 IT業務編、アルク
・釜渕優子(2008)、しごとの日本語 ビジネスマナー、アルク

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組織が大きく変わる「最高の報酬」 トータル・リワードを活用した行動科学マネジメント

トータル・リワード(Total Reward)とは、金銭報酬と非金銭報酬を組合せた総合的な報酬マネジメント体系です。元々は、成果主義の不備や間違った運用による競争力低下の反省から開発されました。従業員を組織に惹きつけて、定着率を向上させることが狙いです。トータル・リワードそのものは新しい概念ではなく、従来から検討される人事制度の改善点を統合的に再構築した報酬制度のイノベーションと考えられます。

行動科学マネジメントでお馴染みの石田淳著では、Rewardを単数形のトータル・リワード(Total Reward)として紹介されました。一方、人事コンサルタントの第一人者である川上真史は、トータル・リウォーズ(Total Rewards)と複数形を片仮名表記します。拙著オフショアプロジェクトマネジメント【PM編】では、出典元の川上真史先生を尊重して、複数形のトータルリウォーズを採用しました。今後、トータル・リウォーズとトータル・リワード、どちらの言葉が定着して一般化するのでしょうか。

非金銭的報酬の6要素=ABCDEF

A(Acknowledgement)感謝・認知
B(Balance of Work and Life)仕事と生活の調和
C(Culture)企業文化や組織の体質
D(Development [Career/Professional])成長機会の提供
E(Environment)労働環境の整備
F(Frame)具体的行動の明確な指示

前半の5つは、米国機関が提唱するフレームワークです。この本では、6つ目の非金銭的報酬F(frame)を追加することで、独自性を醸し出します。こうしたひと手間が、ちょっとした差別化を生む玄人コンサルの匠の技です。

本書では、多様化した時代こそ、マネジメントはシンプルであるべきだと説きます。そのためには、人に仕事をつけるのではなく、仕事に人をつけるべきだと主張します。前者が名著ビジョナリーカンパニー2的な発想なら、後者はマクドナルド的な標準オペレーション重視の発想です。

105ページから「悪い報告をあげさせるたった1つの方法」という興味深い一節がはじまります。

正解は、「悪い報告をあげた従業員を褒める」です。報告内容ではなく、報告した行為そのものを褒めます。すなわち、従業員が悪い報告をあげてきたら、迷わず「A感謝・認知」に相当する非金銭的報酬を与えるべきだと説きます。

行動科学マネジメントなんて普段聞きなれない用語かもしれませんが、極限すると「行動に着目」した組織行動(organizational behavior)のマネジメント体系です。組織科学マネジメントでは、具体性の法則と呼ばれるMORSの法則(四条件)を満たすものだけを行動と呼びます。

・Measured : 計測できること
・Observable : 観察できること
・Reliable : 信頼できること
・Specific : 明確化されていること

<例>行動ではないもの
「モチベーション高く仕事に取り組む」
「チームメンバーの健康に留意する」
「コスト削減を徹底する」
「業績を上げる」
「販売計画を作る」

<例>MORS条件を満たす行動
「三名のチームメンバーで、木曜日の午後6時までに、新商品の販売店候補を300店リストアップする」

日本のシステムインテグレータは、年功序列による報酬体系を採用します。最近は、「年下の上司」「同期でも給与格差が拡大」が流行っていますが、米国社会や中国IT企業の実態と比べると、やはり日本は相変わらず年功序列です。

かつての高度成長期、大半の日本企業では「金銭報酬を一律支給」する制度を好みました。みんな、モノに飢えていたので手厚い外的報酬を望んでいたからです。高度成長期はみんなが一律に仲良く豊かになる時代なので、あえて個人差をつける必要はありませんでした。

高度成長に終わりを告げると、次は「成果主義」の旗印の下、個人差をつけた報酬が好まれるようになりました。ただし、相変わらず「外発的要因が強い金銭報酬」に主眼が置かれています。これは、人事制度改革を主導する人事部の都合によるものです。人事部自身も、「目標管理」で厳しく縛られるようになったので、目標達成度合いが一目瞭然の外的報酬に偏ったのが原因です。オフショアPMOが、一見無意味な数値目標を掲げて現場を苦しめる構造と同じです。

日本では、昔から「一律」が大好きでしたので、社員旅行やQCサークルなど「内的報酬の一律支給」は存在しました。ところが、今は下火になっています。

トータル・リワードでは、非金銭報酬を個人差をつけて支払うための制度と運用の仕組みに主眼を置きます。当然ながら、これらは体系づけられた報酬ではありません。かつて、中国に進出した日系企業では、日本研修制度を餌に優秀な中国人従業員を惹きつけようとしました。ところが、研修後もすぐには活躍機会が与えられないため、個別内的報酬を与えられた優秀な従業員の多くは離職しました。

ところが、退職者に話を聞いても、会社を辞める本当の理由は教えてくれません。実際、オフショア拠点で公式に意識調査を実施すると、ほとんどの場合は日本人の感覚よりも常に高い評価が返ってきます。実は、日本で職場環境の満足度調査を実施すると、世界中で最も低評価を示す傾向があります。反対に。中国では世界的に最も高評価を示す傾向があることが知られています。その原因は不明ですが、公式アセスメントでは外国人従業員の本音は拾えません。そして、これが、オフショア開発でPDCAが正常に回らない大きな原因の1つとなっています。

トータル・リワードを活用することで、「やる気」「意識」「風土」といった目に見えない組織深部の根本課題に斬り込みます。そして、従業員が一人ひとり異なる働く意義や達成感・報われ感を取り戻し、組織が活性化して成果につながる積極行動が増えるようになります。

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品質意識を高めたい、集合研修とeラーニングの比較

先月末から、オフショア大學第6期が始まりました。最近は、東京在住の受講生よりも、他国や他地域からの受講生が圧倒的多数を占めるようになりました。eラーニングの特性を最大限に活用しています。

オフショア大學第6期生から投げかけられた興味深い問題提起をいくつか取り上げます。

「海外では、責任範囲以外の人に情報伝達しても全く無意味」

「インド人に依頼したつもりなのに相手は全く受け入れない」

「一般に、中国人は手戻りを極端に嫌います」

「海外の技術者は、日本品質のことを過剰品質(コストを度外視した品質)だと考えているフシがありますが、私は同意しません」

「海外オフショア拠点では横のつながりが弱い。横展開するときには、リーダーにきちんと伝えます。ただし、横展開の弱さは日本国内でも観察されるので、必ずしも国民文化の違いではないような気がします」

「オフショア子会社に無理難題を押しつける、逆に納期遅延を嫌いオフショア子会社ら未完成品が納品されるなど、グループ企業ならではの甘えが感じられる」

オフショア大學eラーニングでは、このような問題提起に対して講師が一つひとつ丁寧に回答します。また、他受講生も、じっくり時間をかけて、体験談に基づく追加情報や助言を与えます。時間制約がゆるいeラーニングの特徴を生かした学習スタイルです。

講師からの助言例: オフショア開発の問題解決では、「文化の差」「意識のずれ」は根本原因になりません。なぜなら、「文化」や「意識」を根本原因にしてしまうと、その後に科学的な解決法を導くことが難しいからです。ゆえに・・・・・・を心がけてください。
このように「緊急度」は低いものの、「重要度」は極めて高い課題解決に直結するリーダー人材育成は、eラーニングが最も得意とする領域の一つです。

eラーニングは決して万能な学習手段ではありません。例えば、「緊急度」の高い課題解決には向いていません。特に、ブレーンストーミング的な活発な議論にはeラーニングは不向きだと考えられます。eラーニングは、極めて低コンテクストな学習環境なので、相手の感情を読み取ったり、相手のかゆい所に手が届く配慮に欠けます。

だからこそ、伝統的な集合研修(OffJT:Off the Job Training)やOJT(On the Job Training)は今でも有効です。特に、これまで前例のないオフショアPMO業務などの職務適応では、ケース学習や課題解決型学習を取り入れた集合研修が向いています。

緊急かつ重要な課題を抱えるオフショア開発コーディネータは、今月末に開催される集合研修(二日間集中コース)への参加をお薦めします。

集合学習やOJTは、初めての海外赴任や初めての外国人部下受け入れなど、いわゆる異文化職場適応の促進にも向いています。実際、経験者から直に声をかけてもらう効果は計りしれません。

周りに経験者がいない領域での職務適応や職場適応が求められる局面では、まず集合研修を施して本人の臨戦態勢を整えます。その後のフォロー研修では、費用対効果に優れたeラーニングを併用するとよいでしょう。

新しい仕事(オフショアPMO業務等)で徐々に実績を出し始めたら、思い切って社内外で発表する機会を設けます。これが、変化の激しい時代にあったオフショア開発コーディネータ育成の代表的なプロセスです。

ただし、集合研修やOJTは極めて高コンテクストな学習環境になりがちなので、講師や教材との相性が悪いと学習の費用対効果は得られません。

よくある失敗例: 経営幹部育成を目的に、70歳を超える名物経営者をお招きしてありがたい「経営講和」を頂いた。ところが、精神論(状況依存の強い高コンテクストな教え)ばかりで、その場の講演は盛り上がったけど、後には何も残らなかった。

■ 問いかけ

<問1>次の課題解決アプローチの問題点を具体的に指摘しなさい。

問題:中国で内部設計レビュー漏れが多く指摘された
原因:「動けばいい」的な発想で、レビューを軽視する風潮
再発防止策:前工程でのレビューを重視する意識付けを強化する


<問2>中国オフショア拠点のキーパーソンに設計レビューのやり方を学習してもらいたい。集合研修とeラーニングとでは、どちらがより効果的ですか?

<問3>
品質意識が低いと評される中国オフショア拠点を立て直したい。この役割を担うオフショア開発コーディネータを育成するためには、集合研修とeラーニングとでは、どちらがより効果的ですか?

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インド人に依頼したつもりなのに相手は全く受け入れない

■ 受け入れたように見えるが、実際には受け入れていない
インド人との会議で何かを依頼した場合、インド人は受け入れたように見えても、実は受け入れていないことがあります。これは、インド文化では? (オフショア大學受講生)
「言った」「私は彼にそう伝えた」「いや、私は聞いていない」のトラブルは、国内ビジネスですらなくなりません。ましてや、オフショア開発では、もっとなくなるはずがありません。

「分かりました」と「同意しました」には、天と地ほどの差があります。オフショア大學受講生第6期生の間では、「互いにコンテクストが共有できていないと微妙なニュアンスを理解できない」という会話が普通に成り立ちます。

冷静に考えると、真面目に自己研鑽するSEの知的水準は、そうでないSEと比べて格段に高いと思われます。と、さりげなくオフショア大學受講生のレベルの高さを自慢したりして。

「理解/受容」の水準の違い三段階。

分かりました」・・・あなたの言っていることは分かりました。でも、受け入れていません。

「理解しました」・・・あなたの言っていることは分かりました。あなたの気持ちにも共感します。でも、うちにも都合があるので受け入れるかどうかは不明です。

「同意しました」・・・あなたの依頼を受けます。あなたの依頼に沿って行動します(目的達成!)

「インド人は受け入れたように見えても実は受け入れていない」は確かに大問題です。考えられる根本原因をざっと洗い出します。

・国民文化の壁によりコンテクストが共有できない
世代間格差によりコンテクストが共有できない
言葉の壁によりコンテクストを誤解している
・企業文化の違いによりコンテクストが共有できない

ここで、標準プロセスや作業指示は、便宜上「企業文化」に含まれるものとします。

もしも、インド人と意思疎通できない原因が「言葉の壁」なら、「分かった」「合意した」「やる/やらない」の英語表記を紙に大きく書いて、会議の場で常に紙を持って確認するとよいでしょう。

中国なら段ボールに大きく手書きすれば十分ですが、インドだともう少し洗練されたカードを準備したほうがいいかもしれません。単純ですが、問題発生の原因が「言葉の壁」なら有効な手段です。

余談ですが、英語の「確信度」を表わす副詞は、全て程度が異なります。

  absolutely, probably, likely, perhaps, maybe, possibly

しかも、確信度の強さは、国民文化や話者によって変化するようで
す。先日お会いしたある人は、こういっていました。

日本の学校では、probably=50%(半々)だと教わったけど、 実際、米国人上司が probably といったら、 確信度は30%以下だった。 ましてや、maybe などと言ったら、 確信度5%以下と思った方が安全でした。 (日本語の「検討します」、中国語の「研究」みたいな)

■ 問いかけ

前出の意思疎通の問題「インド人は受け入れたように見えても、実は受け入れていない」の根本原因は、ボスの権限の違いが=6割、作業指示の与え方の違いが4割だと仮定します。

有効な再発防止策を考案しなさい。

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若手にとってリーダーとは管理者/責任者/指導者?

先週末、東京某所で中国人若手プログラマ30名弱を相手に異文化コミュニケーション基礎研修を行いました。その試験問題より。

(a)「リーダー」を漢字、もしくは、短い文章で書き直しなさい

代表的な答え:
・管理者
・責任者
・指導者
・指示する人
・上司/上役/課長
・統率者
・全体をまとめる人

(b)「チーム」を漢字、もしくは、短い文章で書き直しなさい

代表的な答え:
・団体
・集団
・集体
・組織
・組
・同じ目的のために集まった人達
・同じ目標を目指して努力する人達
・協力して仕事をする一団的人

(e)「コミュニケーション」を漢字、もしくは、短い文章で書き直しなさい

代表的な答え:
・交流 
・意思疎通
・やりとり

BBQでリーダーシップを発揮する人

言葉の壁があり、かつ、平均年齢26歳の中国人プログラマ集団への問いかけなので、上記のように答えがばらつく状況はやむを得ません。仮に不適当な解答が混ざっていても、落胆する必要は全くありません。

はっきり言って、今回の受講者のレベルは高い方です。なぜなら、彼らは、厳しい採用面接を勝ち抜いて日本企業に採用されて、日本人正社員と一緒に働き、日本人と同じ仕事の成果を求められる職場環境で働くオンサイト技術者だからです。

今回の試験問題は、オフショア開発で言葉や文化の壁を埋める責任は、指示を与える日本人(発注企業)の側にあることを示唆します。オフショア開発を指揮する日本人管理者が、中国人プログラマ集団に対してこう檄を飛ばしました。

「日本ではチームワークが大切です。
 周囲とのコミュニケーショを欠かさず、
 各自がリーダーシップを発揮して
 自発的にチームを支えましょう。
 そうすれば、君たちもすぐにリーダーになれます」

とても清く正しく美しい教訓です。ところが、一部の中国人プログラマの頭の中では次のように解釈されます。

・リーダー   =管理者
・リーダーシップ=指導者精神
・チーム    =団体/会社組織
・コミュニケーション=交流(中国語)
・自発行動   =(           )

「日本では団体行動が大切です。
 周囲との交流(中国語の意味)を欠かさず、
 各自が指導者精神を発揮して、
 (          )して組織を支えましょう。
 そうすれば、君たちもすぐに管理者になれます」

※そもそも、檄を飛ばす日本人管理者も、英単語"team", "leader" の理解が甘いようです。

■ 問いかけ

<問1>
中国人若手プログラマに「リーダー」を別表現で言い換えさせたところ、以下の単語が上位3つでした。

・管理者
・責任者
・指導者

これらを多い順に並べ替えなさい。

 第一位(      )
 第二位(      )
 第三位(      )

<問2>
日本人管理者が発した下記セリフによって引き起こされる問題を予測しなさい
「各自がリーダーシップを発揮して、自発的にチームを支えましょう」

<問3>
・日本人管理者が大好きな「自発行動」は、中国人若手プログラマに正しく伝わりますか?(Y/N)
・日本人管理者が大好きな「自発的に○○せよ」が中国人若手プログラマに正しく伝わる確率は?(0~100)

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