【報告】中国江蘇省無錫シンポジウム「オフショア開発フォーラム2009 in 無錫」
2009年11月10日、江蘇省無錫市人民政府と日本オフショア開発フォーラム実行委員会(オフショア大學)は、無錫市「ラマダプラザ無錫」(RAMADA PLAZA WUXI)にて「オフショア開発フォーラム2009 in 無錫~グローバルソーシング時代を担う国際IT人材戦略~」を開催いたしました。
本大会は、オフショア開発の成功の為の具体的な人材育成の貴重な経験則や実務的な専門知識を公開するシンポジウムです。
江蘇省無錫市は、中国でも特筆すべき成長性のある市場と良好な投資環境を持ち、ここ数年来、日本と商工、文化、観光等の各界で友好交流と協力関係を深めております。
今度の大会を通じて、江蘇省無錫市に進出しておられる日系企業をはじめ、日中両国の経済発展に多大な貢献を頂いている皆様に感謝の意を表し、さらに江蘇省無錫市のアウトソーシング産業の発展企画を御紹介し、中日間IT情報サービス企業交流の機会を提供しました。
江蘇省無錫市人民政府 方偉副市長をはじめ、中国側関係者の皆様、本当にありがとうございました。
以下、11月10日に開催されたシンポジウム概要を一通り報告します。
まず、主催者代表として中国江蘇省無錫市人民政府 方偉副市長から開会のご挨拶がありました。
午前の部の前半は、グローバルソーシングに関する講演が2件ありました。午後の部の後半は、無錫市政府対外貿易経済合作局さまから「無錫市外資政策、投資環境」に関するご説明、ならびに無錫恵山ソフトウェアアウトソーシングパーク(O-PARK)のご紹介が続きました。
昼食をはさんだ後、午後の部も講演が続きます。日本訪問団から3名、中国代表団から3名の講演者が壇上にのぼりました。
講演が終了した後は、無錫市恵山区政府主宰のご宴会。次々に出される無錫名物料理に舌鼓を打ちながら、中日交流の会話が弾みました。中国側の心づくしのおもてなしに、大会参加者はみなあたたかい気持ちで一杯でした。心から感謝いたします。
では、無錫シンポジウム大会の詳細を報告します。
日本オフショア開発フォーラム 北島義弘実行委員長の司会により、江蘇省無錫市人民政府 方偉副市長のご挨拶で無錫シンポジウムは幕開けしました。
プログラム第一番目は、慶應義塾大学 中村維男教授による基調講演です。
中村維男先生は、1972年に東北大学大学院博士課程修了され、工学博士(PH.D)、1988年に東北大学教授、1994年に米国スタンフォード大学(Stanford Univ)客員正教授、2007年に東北大学名誉教授、英国ロンドン大学インペリアル校(Imperial Colledge)教授・フェロー、2007年から慶應義塾大学教授(現職)、IEEE(米国電気電子学会)計算機科学大学教授・世界トップ賞(2004年)受賞、IEEE シンポジウムCOOL Chips組織委員会委員長、IEEE FELLOWです。
日本だけではなく欧米の一流大学で教鞭をとられた経験のある、計算機科学の世界的な権威です。
基調講演のテーマは「全球外包時代的国際IT人材戦略」。これからの時代について計算機科学の最先端から見られた見識をご披露頂きました。特に、計算機科学の歴史を踏まえ、今後の発展方向が環境に配意したグローバルソーシングに向うであろうこと、並びに国際IT人材戦略の良し悪しにより、企業や国家の命運が左右されるであろうという主張は、本フォーラムに参加しないと聞けない貴重な内容でした。
二番目の講演は、日本国経済産業省の許可により代表的な情報サービス企業で構成される社団法人情報サービス産業協会(JISA)の副会長を務める杉山尋美様から「日本のIT産業の現状と今後の動向」についてお話をいただきました。豊富なデータと大局的な視点による分析は、日本の情報サービス業界で要職を重ねてこられた氏ならではの切り口です。
三番目の講演は、無錫市政府対外貿易経済合作局様による無錫市外資政策と投資環境、ならびに、無錫市恵山区が誇るソフトウェアアウトソーシング産業集積基地 O-PARK のご紹介です。
翌日、日本代表団は、無錫市政府対外貿易経済合作局様ならびに無錫市恵山区政府様のご案内によりO-ParkならびにK-Parkを視察しました。見学の様子を写真におさめましたので、後述します。
昼食をはさんで、午後の部は、日本を代表する中国語学者(元御茶ノ水女子大学教授、文教育学部長)で中国語コミュニケーション協会代表の相原茂先生による特別講演から始まりました。
相原茂先生は、長年NHK(日本放送協会)の中国語会話講師(テレビ、ラジオ)を担当された日本で最も権威ある中国語教育者の一人でもあります。実際、中国に駐在する日本人ビジネスパーソンの多くは、相原先生の中国語会話の薫陶を受けていると言われています。著述、マスメディでも活躍されており、特に中国語学習に必須の辞書(本、電子)においても大きな貢献をされています。今回の講演では「日中文化の差異を乗り越えるコミュニケーション術」というテーマで、オフショア開発に必須の日中間のコミュニケーションを円滑に行う方法を解説して頂き、本フォーラムに参加にした中国側、日本側の両方の参加者に十分役に立つ、実践的な内容で聴衆から時折、大きな笑いがある非常に楽しく実践的な内容でした。
第五番目の講演は、無錫の民間企業を代表して、無錫軟通動力科技有限公司の盧九評 総経理から「中国のオフショア開発の現状」と題した自社の経験談を中心としたお話でした。対日オフショア業務に適した人材の選抜と育成、キャリア開発・労務管理の秘訣について、実体験に基づく貴重なノウハウを惜しみなく披露してくれました。
第六番目の講演では、日本から訪中したUMLモデリング推進協議会(UMTP)の小林正博事務局長から、UMLモデリング技術者試験の動向について報告がありました。分散開発におけるUMLモデリング技術の活用実績の紹介と認定試験の最新動向は、現地で活躍する対日オフショア関係者にとって貴重な情報となりました。
第七番目の講演では、日本代表団を率いた日本オフショア開発フォーラム実行委員の副委員長を務める幸地司から、世界同時不況に苦しむ日本企業のOutsourcing戦略が紹介されました。特に、日本人管理者の心理に深く斬り込んだ分析は、中国に漠然とした不安を持つ平均的な日本人技術者の気持ちを理解する上で欠かせないノウハウだと評判でした。
第八番目の講演は、上海の代表的なIT企業の一つである上海坦思計算機系統有限公司の副総経理 東誠様より、政府系合弁IT企業のオフショア事業の動向と中国内需への技術展開に関する考察でした。富士通の中国進出の歴史に始まり、最近特に関心が高まってきた中国内需への技術展開に関する取り組み事例は、日本代表団だけではなく現地で活躍する業界関係者をも驚かせました。
第九番目、最後の講演では、オフショア開発フォーラム会員を代表して、無錫天狗ソフトウェアディベロップメントの増満工将董事長兼総経理から、「オフショアではなくオンショア ~大家来来無錫(是個好地方)」と題したご自身の中国営業展開の体験紹介がありました。開発言語Rubyの可能性を信じて、中国でのRuby普及活動に取り組む姿勢は、中国人技術者コミュニティからも好評でした。
講演が終了した後は、無錫市恵山区政府主宰のご宴会。次々に出される無錫名物料理に舌鼓を打ちながら、中日交流の会話が弾みました。中国側の心づくしのおもてなしに、大会参加者はみなあたたかい気持ちで一杯でした。心から感謝いたします。
翌11月11日(水)午前、日本代表団一行は無錫市恵山区が誇るO-Parkを見学しました。
この写真は、O-Park内に設置された大規模な講堂です。次の国際会議は、無錫市恵山区政府様のご厚意により、この講堂を使わせていただくかもしれません。
O-Parkは、訪問者をもてなすだけではなく、そこで働く人々を満足させるための施設が充実しています。開放的な共有空間は、色鮮やかな椅子・机・備品がセンス良く配置されています。運動器具を完備する施設やヨガ室など、抜群の居心地を誇ります。
日本代表団一行は、この後も場所を K-Park に移して視察を続けました。K-Parkでは、先進的な取り組みで有名なIBM クラウドセンターを皮切りに、無錫を代表するオフショア企業の無錫iSoftStones、そして、米国一流大学が進出して話題になった iCarnegi の施設をそれぞれ訪問しました。
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