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身内的親密関係なくしてオフショア成功なし

<原則>顔が見えない相手との身内的親密関係なくしてオフショア開発の成功なし

日本人と中国人が共同開発する際、異文化接触上の問題を多く抱えます。異文化接触の時間的・段階的変化を調べた研究によると、異文化接触の局面に応じて心理状態はU型もしくはW型の曲線を描くことが分かっています。

Wcurvemodel

1)異文化接触前の段階
心理状態=high(中国赴任が決まった。頑張ろう)

2)異文化接触の直前
心理状態=low(中国渡航を目前に不安な気持ちが大きくなる)

3)異文化接触開始
心理状態=high(中国は面白い!)

4)異文化接触からしばらく経ち、環境に慣れた段階
心理状態=low(中国への不満と脅威、カルチャーギャップ)

5)カルチャーギャップを克服した段階
心理状態=high(住めば都、人間関係もすこぶる良好)

6)日本への帰国間際
心理状態=high(中国大好き、みんなと別れたくない)

7)日本への帰国直後
心理状態=high(何だかんだ言って、日本は居心地よい)

8)日本に帰国後しばらく経ち、常識に疑問が生じだした段階
心理状態=low(日本は変だ、本社は分かっていない)

9)日本も中国もそれぞれ客観的に認知できる段階
心理状態=high(両国文化をありのまま受入れ、かつ統合する)

参考:Lysgaard, S., Gullahorn, J.T, & Gullahorn, J.E.
※上記(3)~(9)を時系列でグラフ化するとW字曲線を描く

上智大学の渡辺文夫教授は、異文化接触プロセスにうまく対応する能力(compepency)を「統合的関係調整能力」と説いて、当該能力を開発するトレーニング手法まで提唱しました。

2月23日に開催される第36回オフショア開発勉強会では、オフショア開発における異文化接触の事例を題材に、日本語話者向けの関係調整能力を高める実践トレーニング技法を解説します。

大学の研究から出発しているため、所々「かたい」専門用語が飛び出します。実際には、多様化したステークホルダーのマネジメントに役立つ関係調整力を高める実践的研究です。どうぞご安心ください。

■ 問いかけ

あなたは、オフショア開発者を対象とした異文化トレーニングを企画運営するよう指示されました。まずは、オフショア初心者が教育対象です。教育効果性の観点から、異文化トレーニングの実施時期と実施頻度を検討しなさい。

ヒント:上記W字曲線を眺めながら、どの時期に、どのような研修を、何回実施すればよいかを考える。

正解は第36回オフショア開発勉強会にて。

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その日本語が毒になる!

先日たまたま古本屋で手に取った一冊を引用しつつ、日本語コミュニケーションの面白さを論じます。

吉村達也(2008)、その日本語が毒になる!、PHP研究所

間接的に表現したら、もっと心証が悪くなった

 納品後にバグが発覚するなんて、貴社は無責任だ。
 納品後にバグが発覚するなんて、いかがなものか。

 作業遅延は明らかなのに春節に休むのは、まずいと思う。
 作業遅延は明らかなのに春節に休むのは、いかがなものか。

直接的な非難を避けさえすれば、それだけで相手の心証を悪くしないと思い込んでいる人は、「いかがなものか」という発言によって、かえって自分が感じの悪い人間になっていることになかなか気づかない。(p52)

→自分自身を振り返ると、私も職場で「~でしたっけ?」などと曖昧かつ間接的な表現を使います。さすがに外国人を相手に「いかがなものか」を使った記憶はありませんが(幸地)。

日本語は文法的な精密さに欠ける

 ドライブが好きだという話を英語でしているとき、
 “my car”という単語を使ったら、ネイティブの教師から
 「あなたは結婚しているんでしょう。だったら、たとえ
 自分しかハンドルを握らない車でも“my car”ではなく
 “our car”と言わなければなりません」と注意された。

「私の車」ではなく「私たち夫婦の車」だというわけだ。(p94)

→私の異文化コミュニケーション講座でよく使うネタの1つに、「ウチ」と「ソト」そして「ヨソ様」の使い分けがあります。「ウチ」の適用範囲は、相手との関係性によって変化します。ウチの会社/ウチのヒト/ウチの車/ウチでは違います/・・・

「反省」と「謝罪」の区別がつかない

「申し訳ございません」には基本的な欠陥がある。「申し訳ございません」は、言葉で謝るよりも、まず土下座をしろ、という謝罪の中身より形式重視の思想から生まれた言葉だ。「申し訳」=「言葉による釈明」は何も「ございません」というわけだ。(p118)

→余談ですが、中国企業では「反省会」という言葉そのものが嫌われます。改善活動が大好きな日本人はご注意を。

日本語の謝罪の言葉は不便

「おわび申し上げます」は、日本人感覚からすればちょっとクールすぎる。「ごめん」「すいません」もくだけすぎ。日本語には、意外にも、公式の場で通用するお詫びの言葉がない。(p120)

→今でも日本企業の一部では「男は黙って・・・」の浪花節が好ま れます。ところで先日、中国人SEから「浪花節」って何ですか? と質問されて、一瞬まごついたわたし(幸地)。

日本語で役立つ、公式の挨拶言葉は「おはようございます」のみ

朝、平社員がトイレで用足し中、隣に専務が立つ。そこで二人並んで前を向きながら、平社員はやや緊張しながらも「おはようございます」と挨拶する。専務は「おう」と前を向いたまま応じる。ところが、同じ状況が昼だったら、平社員は専務に何と挨拶するか?(p122)

→後述する<問1>を参照。

日本語の感謝の表現はとても言いにくい

関西弁なら「おおきに」、英語なら「サンキュー」で軽く済ませる局面でも、日本語の「ありがとう」「ありがとうございます」だと違和感を覚えてしまう。日本の標準語は、構造上の欠陥から自然なコミュニケーションをやりづらくしている。

→私が中国で服務員のサービスに「謝謝」と言うと、必ず「どういたしまして」という意味の中国語が返ってきます。日本人の私にとって、この対応はかなり嬉しい。この感覚、分かりますか?

参考:吉村達也(2008)、その日本語が毒になる!、PHP研究所 (★★★☆☆:幸地評価)
長年の作家活動から洞察した日本語の弱点を鋭く指摘、コミュニケーション論として新境地を拓く。本書から引用した一部を読みやすくするために修正しました。

■ 問いかけ

<問1>
朝、平社員がトイレで用足し中、隣に専務が立つ。そこで二人並んで前を向きながら、平社員はやや緊張しながらも「おはようございます」と挨拶する。専務は「おう」と前を向いたまま応じる。ところが、同じ状況が昼だったら、平社員は専務に何と挨拶するか?

次の選択肢から1つ選びなさい。答えを選んだ理由も述べなさい。

a)「こんにちは」
b)「お疲れ様です」
c)「どうも」
d) 黙って挨拶しない

<問2>
以下の空欄[ ]を適当な文章で埋めなさい。(参考:p107)

商品にクレームがあって店を訪れた客が「責任者を出せ」と要求
するとき、[        ]に主眼がおかれている。

<問3>
平均的な日本人が下記の二重否定を使う理由を述べなさい。(参考:p52)

・あなたの意見に反対でないといえばウソになる。(二重否定)
 cf.あなたの意見には反対だ。

・私の責任ではないといえばウソになる。(二重否定)
 cf.私の責任だ。

<問4>
その日本語が毒になる!」の著者吉村氏は、日本語の標準語には、いくつかの欠陥があると主張します。例えば、英語の冠詞と比較して、日本語の文法は精密さに欠けると論じます。あなたは、この意見に賛成ですか。それとも反対ですか。答えの根拠を述べなさい。


ps.
低コンテクストかつ論理的なコミュニケーションの大切さを主張する本書ですが、なんだか非論理的な主張が目立ち、不思議な世界観が展開されています。
というわけで、面白さ重視なら四つ星。学習重視なら二つ星。
本書タイトルは、恐らく出版社が名付けたと思います。というわけで、著者の意図は日本語コミュニケーションのTips整備にあると勝手に判断しました。Tips集だと割り切れば、私はこの本を十分に楽めます。(幸地評価)

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大学院での研究が増えてきた

近年、オフショア開発を題材とした学術的な研究活動が増えています。日本中がオフショア開発バブルに浮かれた頃は、中国人留学生の卒論題材としてブリッジSEがよく取り上げられました。

その後、留学生の修士論文が目立ちはじめ、数は少ないものの博士課程でオフショア開発を研究する留学生も現れました。

次に、日本人の社会人大学院生や国際経済系の準教授もオフショア開発に興味を持ち始めました。

来月開催される「第4回 オフショア大學交流会」では、留学生による論文作成に関する講演を予定しています。講演者は、東京都内の私立大学で「日本企業における外国人従業員の活用」を研究する中国出身の社会人留学生です。いわゆる「ダイバーシティ(多様性)マネジメント」の観点から、オフショア大學の活動に興味を持っくれたそうです。ありがとうございます。

2月には今年初のオフショア開発勉強会を開催します。ゲスト講師には、社会人大学院生として、オフショア開発における異文化接触を研究した日本人をお招きする予定です。

この研究によると、オフショア開発プロジェクトにおいて、日本人管理者が遭遇する異文化接触の問題は9領域に分類されます。

さらに本研究では、現場で発生する異文化接触時の諸問題を回避するために、統合的□□□□□能力と呼ばれるコンピテンシーの開発プログラムを検討しました。

(未発表論文なので、この辺にて失礼。詳細は直接セミナー会場にてゲスト講師ご本人からお聞きください)

2月オフショア開発勉強会の準備が整い次第、本誌にて案内します。お楽しみに。

■ 問いかけ
あなたに産学連携の研究委託費として1000万円の予算がつきました。あなたが、大学に研究委託したいオフショア開発に関するテーマを1つ選びなさい。また、テーマ選定の理由を簡潔に述べなさい。

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旧正月に仕事させる


今年の旧正月休暇は、2月13日から始まります。ほとんどの中国企業は、一週間ぶっ通しで休暇に入ります。その代わり、中国では大型連休前の週末を臨時出勤日として振り替えられます。中国では、日本と異なる暦の規則が運用されるので、ご注意を。

【確認クイズ】
・ベトナムにも旧正月休暇はある(Y/N)
・沖縄にも旧正月休暇はある(Y/N)
・中国の旧正月休暇は毎年直前に決定される(Y/N)

最近利用し始めた、某ミニブログ上の会話より。

「ベトナム人を旧正月に出社させたら普通に退職してしまう」

「中国人を春節労働させると、辞めてしまいませんか?」


私の回答はこうです。

「世界屈指の自己本位的目標重視型(モーレツ型)である日本人
 と比べたら、中国人は休日出勤や残業を嫌がります。ただし、
 中国文化も、世界的には、ややモーレツ型の傾向があります」

一方、ベトナムは世界有数の社会関係目標重視型の文化圏です。したがって、ベトナム人に日本的な丁稚奉公の「石の上にも三年」「男は黙って働け」を期待しても無駄でしょう。

■ 問いかけ

<問1>平均的な日本人SEに正月出勤させる難しさを10としたとき、平均的な中国人SEとベトナム人SEをそれぞれ旧正月出勤させる難しさを数字で表わしなさい(主観評価OK)。

・日本人=( 10 )
・中国人=(   )
・ベトナム人=(   )

<問2>やんごとなき事情により、あなたの組織では主要メンバの旧正月出勤が避けられない状況に追い込まれました。あなたは、当該組織のリーダーです。旧正月までの猶予は、ちょうど1週間だと仮定します。さて、あなたは、どのように人的資源をコントロールしますか。

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中国人SEのすごい地頭力

質問A「あなたは、数学的帰納法(mathematical induction)を知っていますか?」

これは、SEの基礎能力を測定するために、私がよく使う質問です。

ちなみに、数学的帰納法とは、高校数学で習う証明問題を解く論法の一つです。数列の証明などで役立つ大学受験ではお馴染みのテクニックなので、理系出身のSEなら名前くらいは覚えているかもしれませんね。

残念ながら、平均的な日本人SEの多くは、質問Aに答えられません。あくまでも個人的な経験則ですが、日本人SEの正解率は20%以下です。

一方、平均的な中国人SEの多くは、質問Aに易々と解答します。少なく見積もって、正解率は50%以上です。多くの場合、私の講座を受講する中国人SEの3分の2は「数学的帰納法を知っている」と自信満々に答えます。謙虚な日本人、勇猛果敢な中国人という国民文化の相違を考慮しても、あまりにこの結果は違いすぎます。

■ 問いかけ

念のため、「私は数学的帰納法を知っている」と答えたSEに対して、すかさず問題Bを投げかけます。これはひっかけ問題でも何でもなく、論理思考の本質を突く良問です。

問題B「数学的帰納法は帰納的ですか? それとも演繹的ですか?」

ここで問いかけ。

<問1>問題Bの正答率を予想しなさい。

 ・平均的な日本人SEの正答率=(    %)
 ・平均的な中国人SEの正答率=(    %)

<問2>あなたは、日本人SEと中国人SEの地頭力に、顕著な差があると思いますか? (Y/N)

<問3>問2の答えの根拠を合理的に説明しなさい。

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