2010年オフショア回復基調の兆し
2008年のリーマン・ショック以降、激減していた中国オフショア開発の発注量ですが、ここにきて明確な回復基調をみせています。ただし、その恩恵は2年間の不況を乗り切った一部の優良なオフショア企業に集中しています。
・2004年~2006年
猫も杓子も「オフショア」の拡大期。ところが、2007年頃から、円安と人件費高騰で35%の減益に苦しむ中国の姿が目立ち始める。
・2008年~2010年冬
世界同時不況の影響でオフショア発注量は激減。中国人SEの稼働率は半減。かろうじて生き残った一部のオフショア企業も、その間はメンバー流出を最小限に抑えつつ、小規模・短納期・不安定な請負ソフトウェア開発で食いつなぐ。その一方で、間接業務の中国委託(BPO)が花開き、多くのオフショア開発ベンダがBPOに活路を見出そうと躍起になる。
・2010年春以降
日本の国内外注を抑えつつ、中国オフショア発注量は増加傾向。ところが、新規案件に投入できるリーダー人材不足が再び表面化。かつての中国オフショアを前提としたお膳立てられた案件は少なく、国内外注やインドIT勢と真っ向勝負させられる。日本語対応可能なリーダー人材がいないために、新規受注を断念せざるを得ない中国企業も相次ぐ。
2008年から2009年末にかけて、多くの中国オフショア企業ではSEの新規採用を手控えました。そのおかげで、オフショア開発プロジェクトの人員構成は安定するようになりました。
<安定要因>
・低い人材流動
・有能なリーダーの配下に経験者がほどよく配置された人員構成
・派遣中心のイケイケドンドン企業が倒産、廃業したことにより、オフショア業界の過当競争が緩和
ところが、今年のオフショア回復基調のせいで、再び中国ソフトウェア現場が乱れ始めています。
<混乱要因>
・20代経験者を中心とした引き抜きで再び人材流動が高まる
・新規受注が増えたせいで未熟者をリーダーに抜擢する人事が横行
・客から奴隷扱いされる日本向けオフショアよりも、発展著しい中国内需案件を好む心理変化
■ 問1
あなたは、中国オフショア拠点のプロジェクトマネージャから上記のような環境変化の報告を受けました。あなたがオフショア発注側の推進責任者なら、今後2~3年間のオフショア推進戦略をどう練りなおしますか。
■ 問2
あなたは、本稿の内容に同意しますか。それとも、不同意ですか。業務系/組込系/グローバル製造業/国内限定サービス業・・・、など業種業態によって、オフショア回復基調に対する意見は異なるはずです。
ここで、読者アンケート。
2010年5月現在、ソフトウェア開発の外注政策に関する実態調査です。オフショア発注/国内外注の最新動向について、以下の選択肢から、あなたの意見にもっと近いものを1つ選びなさい。
◆オフショア回復基調は本物×国内外注も回復
◆オフショア回復基調は本物×国内外注は停滞
◆オフショア開発は停滞気味×国内外注は回復
◆オフショア開発は停滞気味×国内外注も停滞
◆その他
締切:2010年05月18日18時00分
協力:クリックアンケート http://clickenquete.com/
The comments to this entry are closed.
Comments
こんにちは。オフショア大學の幸地司です。
今回の問いかけは、非常に難しいというご意見が届きました。
私も同意します。
私が本アンケートの出題者ですが、
ソフトウェア開発の外注政策について私も明確な答えを持っていません。
あくまでも一般論となりますが、以下の考え方が参考になると思います。
1)オフショア推進目的の再確認
2)オフショア委託先(子会社)の位置づけを再定義
3)日本人従業員(自分と部下)のキャリア方向性を再確認
Posted by: 幸地司 | May 11, 2010 06:42 PM
NRI、NECでも国内下請けは集中、再委託の禁止が推進されているようです。中国オフショアも取捨選択の時代に入ったようで、どこでも回復というわけでは無いのでしょうか。日本語ができる。日本側の指示通り開発します。優秀な大学の卒業生が沢山居ます。というだけではもう生き残れないよ!と大連のソフトハウスの経営者にも言っています。
Posted by: 三宅 雅文 | May 11, 2010 06:42 PM