オフショア開発はソフトウェア工場が相応しいか?
最近「ソフトウェア工場」というキーワードが気になっていたので、昨夜その定義を調べました。すると、少なくとも2つの異なる定義が存在することが分かりました。
1)日立、NEC、富士通、東芝などのソフトウェア工場(1970年代)
2)MicrosoftのSoftware Factories(2004年)
日本語では上記1)2)ともに「ソフトウェア工場」ですが、両者は全く別物だと考えた方が安全です。本稿では1)の「ソフトウェア工場」とオフショア開発との相性について考察します。便宜上、日本型ソフトウェア工場と呼びます。
日本型ソフトウェア工場の特徴は、以下の通りです。あまりにも当たり前すぎて、ブログ読者にとっては拍子抜けかもしれません。
・ソフトウェア工学に基づく開発プロセスと中間成果物の標準化
・開発支援ツールの利用促進と標準化
・定量的な品質管理
あえて「日本型」ソフトウェア工場と名付けたからには、いかにも日本的な特徴が気になります。そこで、私が思いつくままに、普通のソフトウェア工学書には載らない特徴を列挙します。
・同一企業集団による事業の垂直統合化
・従業員の価値観の標準化
・均質化された大量の大卒ホワイトカラー人材を安く使える
・主要顧客の囲い込みによる受注変動幅の安定化
・( a )を前提とする現場OJT主義
・( b )を前提とする外注業者の活用
前半の3つの特徴は、いわゆる建前、もしくは「表の特徴」です。一方、後半の6つの特徴は、隠れた本音、もしくは「暗黙の前提条件」といって差し支えないでしょう。
■ 問いかけ
<問1>
日本型ソフトウェア工場の「表の特徴」を全て洗い出しなさい。
<問2>
日本型ソフトウェア工場が機能するための「暗黙の前提条件」を全て洗い出しなさい。
Hints: 上記(a)(b)に入る言葉を探す。
<問3>
「中国オフショア開発組織は日本型ソフトウェア工場であるべき」との意見に賛成ですか? 反対ですか?
締切:2010年06月04日18時00分
協力:クリックアンケート http://clickenquete.com/
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Comments
回答数は少ないですが、「オフショア=ソフトウェア工場」への反対が多いようですね。日本型ソフトウェア工場について軽く調べたところ、属人性の排除は強く意識されていますが、技術者の個性を潰すような雰囲気はないようです。一部からは「日本型ソフトウェア工場では独創的なソフトウェアは作れない」という批判的な意見もあるようです。日本型ソフトウェア工場の対義語は「家内工業」と考える人が多いようです。
Posted by: 幸地司 | May 30, 2010 01:51 PM
現段階では、日本からの仕事という名目なので、日本型で良い。
Posted by: 森@青島 | May 30, 2010 01:53 PM
賛成せざるえないでしょう。
Posted by: KOM | May 30, 2010 02:24 PM
中国側のオフショア関係者は「ソフトウェア工場」という言葉そのものに拒否反応を示す人が多いようです。現在「ブリッジSE」という言葉が多くの人に嫌われているのと同じ構造かもしれません。
Posted by: 幸地司 | May 30, 2010 02:38 PM
森@青島さん、KOMさん
対日オフショアだから「日本型」でよい、というご意見ですね。独立系オフショア会社にとっては、マーケティングの原則から極めて普通の発想だと思います。
一方、日系オフショア子会社の立場だと、少し微妙になります。なぜなら、親会社幹部の頭には、中国と仕事をすることで「日本側のあうんの呼吸による仕事の進め方を改善したい」という意向が少なからず存在するからです。
例えば、「従来のV字モデル開発一辺倒ではなく、スパイラル型開発スタイルを取り入れたい」などの要望。
ところで、Agileなどの反復型開発スタイルは、日本型ソフトウェア工場で実現可能でしょうか? 答えがYesなら、オフショア=日本型ソフトウェア工場であっても、全く問題ないような気がします。もし答えがNoなら、オフショア=日本型ソフトウェア工場・・・は悩ましいですね。
Posted by: 幸地司 | May 30, 2010 02:48 PM