« October 2010 | Main | December 2010 »

和の精神と武士道は矛盾すると思います

オフショア大學には、ときどき突拍子のない疑問を投げかけて講師を驚かせる受講生がいます。特に、異文化コミュニケーション講座を受講する中国人SEには毎回、こちら側も勉強させられます。

オフショア大學の初心者向けの講座では、いつも下記の解説を繰り返します。

<講師説明> 異文化交流はバームクーヘンのような三層構造モデルで理解するとよいでしょう。文化の最深部は「暗黙の仮定(価値観)」です。最も大事な社風、もしくは、日本文化の根底に流れる精神です。

文化の第二層は「仕事の考え方」です。これは、業務上の善悪を判断する基準です。明示的な判断基準と黙示的な判断基準の2つがあります。文化の第三層は「仕事のやり方」です。これは、作業手順や規約など、組織で共有される一連の決まりごとだと思ってください・・・・・・。

私の講座では、はじめに文化の三層構造モデルを図解して、次に各層の特徴を受講生と一緒に議論します。トップダウン的な理論導入とボトムアップ的な事例検討を交互に繰り返すことで、基礎知識の定着化と実務適用能力の向上を狙います。

■ 問いかけ

私が、企業内研修でよく使う質問をいくつか紹介します。

<問1>あなたの組織文化(社風)の最深部の特徴は何ですか? 
会社概要明資料を眺めながら、あなたの会社には「品質第一」「顧客満足」「イノベーション」と三つのスローガンがあります。さて、優先度順に並べ替えると、どうなりますかと問いかけます。

<問2>中国文化の最深部の特徴は何ですか? 例えば「面子」は中国人行動原理を理解する最重要概念だと思います。その他に、中国人が好む概念はありますか?

<問3>日本文化の最深部の特徴は何ですか? 
例えば日本人だって中国人と同様に「面子」を大事にします。「顔に泥を塗る」なんて表現もありますし。ですが、日本文化を表すなら、面子よりも「和」の方が適切でしょう。・・・と「和を以て貴しと為す」と黒板に書きます。中国人なら、この文字をみて、自信満々に「意味を知っています、中国と同じです」と言うでしょうから、中国と日本の「和」の概念は異なることを事例を用いて、何度もしつこく説明します。


文化の三層構造モデルの最深部では、主に個人や集団との関わりに関する価値観が規定されます。その文化で好まれることと嫌われることの2要素を分析するとよいでしょう。

<問4>文化の最深部で規定される「中国人が最も嫌う」ことを列挙しなさい。「面子」以外のキーワードを用いること。政治の観点から歴史を考察するとよいでしょう。

<問5>文化の最深部で規定される「日本人が最も嫌う」ことを列挙しなさい。「和」以外のキーワードを用いること。差別と宗教の観点から考察するとよいでしょう。

<問6>これまで議論してきた一般的「文化的特徴」とソフトウェア開発の概念とを結びつけなさい。


本当にあった中国人SEからの質問より。

<問7>日本人の「和を以て貴しと為す」と武士道は矛盾すると思います。異文化コミュニケーションの観点から説明してください。単なる知識学習ではなく、オフショア開発に直結するような最後の「オチ」を付けて説明しなさい。

| | Comments (0)

日本人の仕事の進め方は「非効率的」「非合理的」

多くの対日オフショア開発では、独創的発想やベンチャー精神よりも、地道にコツコツと改善を積み重ねる姿勢が好業績につながります。だからこそ、「日本の仕事はつまらない」と公言する中国人SEが後を絶ちません。

参考:オフショア開発がつまらない3つの理由
1)挑戦的な技術課題が少ない
2)ハイリスク、ローリターンである
3)仕事の裁量権が小さい

私が主宰するオフショア大學では、中国人に対して「日本企業が地道な持続的改善を得意とする理由」を合理的に説明します。日本人の行動原理が理解できれば、その後の対応が楽になるからです。

例えば、日本古来の宗教概念の一つ「穢れを水に流す(禊ぎ)」のおかげで、日本では根本原因分析を進めやすくなると解説します。すなわち、集団レビューで根本原因を分析する際、個人の面子を潰すことなく「問題」だけをきれいに洗い流すことができるのが日本文化の特徴です。

以上の背景から、日本文化に疎い中国人SEにとって、日本式の地道に根本原因を潰していく仕事の進め方は、非効率的に感じられます。その上、集団レビューでは、自分が犯したミスを後からネチネチと他人の前で指摘されるため、面子が潰されると感じる人も少なくありません。

■ 問いかけ

<問1>日本人の仕事の進め方は「非効率的」「非合理的」と感じる中国人がいます。上記説明に加えて、異文化コミュニケーションの観点から、彼らに補足説明したい場合、あなたならどうしますか。

<答1>一部の日本人は、穢れを水に流さずに「隠蔽」してしまうこともあるので要注意、と苦笑いしながら説明。さらに、言霊(ことだま)の影響から、穢れを口に出せずリスク管理が疎かになってしまう傾向があること。同様に、言霊の影響から、論理的な反論であっても人格攻撃と受け取ってしまう傾向があると、笑顔で日本人行動原理の深層を語るとよいでしょう。

<問2>中国人SEから次の質問を受けました。あなたなら、どう答えますか。

日本人は過去の罪を「水に流して」すっきり忘れると言います。でも、私はたった一度だけ犯したミスについて、日本人から何度も何度もネチネチと注意されます。矛盾ではありませんか?

<答2>騒音迷惑で素直に謝罪。翌週、会社から再注意。なぜ?

| | Comments (0)

リーダーの年齢差は少なくとも5歳以上

「リーダー」という言葉は誤解を招きやすいので要注意です。

最近の中国オフショア開発組織では、早い者だと実務経験3年もあればリーダー候補生と認識されます。時には、入社三年目の25歳であっても、技術的に優れていれば「リーダー」という肩書きが与えられます。

25歳の中国人リーダーが、日本文化が支配的な対日オフショア開発プロジェクトで活躍する姿を思い浮かべてみてください。顔は幼いのに、数名の部下を率います。当然のように年上の部下がいるでしょう。

私見ですが、日本で同じ役割を持つリーダーと言えば、10年選手を思い浮かべます。日中リーダーの年齢差は5~10歳。

ですから、一口に「リーダー」といっても、日本と中国では自ずと役割や責任範囲が異なります。

技術力より管理力やコミュニケーションが優先される日本向けオフショア開発では、このような年齢差は無視できないほど仕事に影響します。

日本人が気軽に「この件はリーダーにお任せします」と言っても、相手先では必ずしも日本的文脈でのリーダーシップが発揮されるとは限りません。

例えば、情報横展開や根回しを含む上位者へのエスカレーションなどは、技術力をかわれてリーダーに昇格した25歳の若手中国人SEにとっては荷が重すぎるかもしれません。

このような現象は「課長」や「部長」という役職の日中比較でも同様に観察されます。

■ 問いかけ

<問1>
あなたのオフショア開発プロジェクトでは、「リーダー」という言葉は日中それぞれで厳密に定義されていますか?(Y/N)

<問2>
あなたのオフショア開発プロジェクトでは、「リーダー」という言葉は日中で同じ意味として使われていますか?(Y/N)

<問3>
日本人リーダー(業務歴12年、35歳)のもとに、中国オフショア委託先の新任リーダーが挨拶にきました。彼は、2ヶ月前に転職してきた中途採用者で、業務歴3年の25歳の男性です。技術力をかわれて、オフショア開発プロジェクトでリーダーを務めることになりました。ただし、日本語は苦手です。チーム形成の観点から、リーダー同士の初回面談を成功させる方策を検討しなさい。

第42回オフショア開発勉強会/東京・代々木(11/30)では、経験の浅い若手中国人リーダーが日本的商慣習に馴染むためにどうすればよいかを、モチベーションの観点から考えます。

| | Comments (0)

日本人の残業と飲み会は非効率だと思います

オフショア大學の異文化コミュニケーション講座で発せられた素朴な質問より。

私の会社では、日本人は毎晩遅くまで残業します。その上、ときどき深夜まで飲みに行きます。翌朝は平常通りに出勤します。このような仕事のやり方は、とても非効率的だと思います。なぜ、日本人は、こうするのでしょうか。(中国人SE)

オフショア大學では、中国人SEから予期せぬ質問が飛び出します。前出のような素朴な疑問に対して、私は「過度の一般化」に注意しつつも、彼らが納得する合理的な説明を与えます。その義務があるからです。

<考えこむと意外に難しい素朴な疑問例>
騒音迷惑で素直に謝罪。翌週、会社から再注意。なぜ?
日本人飲み会で割り勘を免除された中国人の面子
参考のためのサンプルプログラムを過剰流用(不当利用)
隣席で鳴り続ける内線電話にでない

講師にとっては大変なプレッシャーですが、今のところ受講生の期待には全て応えられていると自負します。前出の質問に対して、講師の私は、異文化コミュニケーションの観点から以下のように短く回答しました。

講義資料XXページで説明したように、平均的な日本人にとって、職場環境は居心地のいい「身内」空間です。すなわち、日本人にとって、職場で過ごす時間は、家族や友人と過ごす時間と同じように居心地がいいのです。よって、一部の日本人従業員は「効率よく仕事を切り上げてさっさとPrivate空間に戻りたい」という欧米的な感覚が欠如しやすい状態にあります。

■ 問いかけ

<問1>上記の素朴な質問に対して、「モチベーション」の観点から合理的に回答しなさい。目から鱗を演出する必要はありませんが、日本事情に疎い外国人SEを十分に納得させられるだけの論理展開を意識すること。考え方のヒントは第42回オフショア開発勉強会にて。11月30日夜、テーマは「モチベーション3.0」です。

| | Comments (0)

「お金」が最大の理由で転職

2010年11月現在、中国沿岸部の主要都市では、中堅SEの人材流動が高まっています。理由の1つは「オフショア開発量が増加」したために競合各社で人材争奪が激化するようになったから。ですが、これは、数ある要因の中の1つに過ぎません。

いずれにせよ、本来ならオフショア開発プロジェクトのQCD目標に責任を持つべき中国人リーダーの多くは、人材獲得と人材流出防止のために多くの工数を割かれています。

■ 問いかけ

以下の設問について、モチベーションの観点から、あなたの考えを述べなさい。

<問1>
2010年11月現在、中国主要都市でのSE人材流動が高まった最大の理由は何でしょうか。

<問2>
2010年11月現在、中国沿岸部の主要都市で働く中国人若手/中堅SEは、「お金」が最大の理由で転職すると思いますか?(Y/N)

<問3>
もし、問2の答えが「Y」なら、転職を決意する最少金額はいくらでしょうか。中国人SEが転職を決意する金額を求める汎用的な法則(方程式)を考案しなさい。

<問4>
2010年11月現在、中国沿岸部の主要都市で働く中国人若手/中堅SEを会社に引き止めるために、現場リーダーが実行可能な有効な対策を検討しなさい。なお、現場リーダーには、金銭報酬を操作する権限はないと仮定します。

考え方のヒントは第42回オフショア開発勉強会にて。

| | Comments (0)

自主勉強がはかどらない理由

11月30日夜、今年最後のオフショア開発勉強会が開催されます。テーマは「モチベーション3.0」。米国元大統領のスピーチライターを務めた有名作家ダニエル・ピンクの最新刊を参考にしながら、オフショア開発に関わる利害関係者を動かす方法を議論します。

・第42回オフショア開発勉強会/東京・代々木
 日時:2010年11月30日(火) 18時45分~20時45分
 講師:幸地司(オフショア大學)

今月のオフショア開発勉強会でモチベーションを取り上げるきっかけとなったのは、中国人SEに自主学習を要求する古き良き日本人の姿でした。

日:今回の業務では不要ですが、将来の発注量拡大のために今から○○と□□の新技術を勉強しておいてください。
中:はい、分かりました。頑張ります。

■ 問いかけ ■

上記は、大部屋と称する日本的職場環境の中で、先輩の背中を見て育った社歴20年余の古き良き日本人管理者と、将来が有望視される中国人現場リーダーとの間で交わされた会話です。

この二人には、目に見えない信頼関係がしっかり築かれています。一見すると、この会話には非の打ち所がありません。ところが、実際には、中国オフショア拠点における新技術の勉強は、思ったほどはかどっていません。

いったい、なぜでしょうか。
モチベーションの観点から、あなたの考えを述べなさい。

| | Comments (0)

言い訳、根拠のない情報を口走るって本当?

オフショア大學で学ぶ日本人受講生が教えてくれた以下の小話を読んで、後の設問に答えなさい。

日本出張中の中国人SEの張さん(仮名)が、日本人を交えた社内会議で使う配布資料を印刷している。すると、先輩格にあたる日本人同僚があることに気づいた。

配布資料の印刷設定ミスにより、裏面が上下180%逆さまに印字されているのだ。社内資料なので大した影響はないが、やはり細かいところまで気になってしまう。

そこで会議終了後、この日本人同僚は「裏面が上下逆さま」の事実を指摘した。

すると、会議に同席していた別の中国人SE 楊さん(仮名)が、平然とこう切り返した。

「両面印刷するとこのようになるので仕方ない」

指摘した日本人同僚は、3つの観点から驚いた。

1つ目は「言い訳」が先行したこと。2つ目は「その場を取り繕うために根拠のない間違った情報」を楊さんが口走ったこと。3つ目は、楊さんが悪いわけでもないのに、楊さんが自己弁明しているように感じられたこと。

■ 問いかけ

<問1>
中国人は、日本人よりも「言い訳」が多いという噂をよく耳にします。本当ですか?(Y/N)

<問2>
中国人は、日本人よりも「その場を取り繕うために根拠のない情報」を口走る傾向があると噂されます。本当ですか?(Y/N)

<問3>
楊さんが「自己弁明している」と仮定します。その理由を分析しなさい。

<問4>
楊さんが「自己弁明していない」と仮定します。つまり、そう感じられたのは、日本人同僚の勘違いでした。では、なぜ、日本人同僚は、勘違いしてしまったのでしょうか。その原因を分析しなさい。

| | Comments (2)

騒音迷惑で素直に謝罪。翌週、会社から再注意。なぜ?

●オフショア大學で学ぶ中国人出張者が感じた疑問より。

先月の日本出張時、私は会社が用意してくれた寮に住んでいました。ある休日の夜、中国人同僚が集まり、私の部屋で鍋パーティーを開いて盛り上がりました。ところが、間もなくして、私の部屋のインターホンが鳴りました。ドアを開けると、そこには近所に住むおばさんが立っていました。

「アンタたち、うるさい。夜なのでもう少し静かにしてください」

おばさんから注意を受けた私たちは、すぐに、その場で礼儀よく謝りました。幸いにして、おばさんは納得してすぐに去って行きました。その後、私たちは、近所迷惑にならないよう配慮しながら鍋パーティーを続けました。

ところが翌週、私は、会社の上司から「先日の騒音迷惑の件」で再び注意されました。

ここで疑問です。

なぜ、日本人のおばさんは、私たちがちゃんと謝ってその場を収めた問題を蒸し返したのでしょうか。中国なら、当事者間で話しあって互いに納得すれば、その場でトラブルは解決したとみなされます。

私は、現場できちんと謝って、しかも即座に現場を改善しましたので、その時点で問題解決したと思っていました。だから、わざわざ、会社に報告する必要はないと思います。

このようなしつこさ(ねちっこさ)は、日本文化の特徴ですか?


●以上は、オフショア大學受講生が体験した実話です。私がいくつかコメントしようとすると、この質問者は、さらに手強く、こう付け加えました。

私が受講したオフショア大學の異文化コミュニケーション講座では、日本には「水に流す」という文化的特徴があることを知りました。また日本人は「罪を憎んで人を憎まず」という寛容の精神を持っているとも学びました。

異文化コミュニケーション講座で幸地先生は、こう言いました:

中国のソフトウェア開発では、バグを作りこんだ人は責任追及されるのが一般的です。レビュー会議で他人の不具合を指摘することは、相手の面子を潰すという雰囲気が若干残っています。一方、日本では、レビュー会議でメンバーの不具合を指摘することは「素晴らしい」ことであり、大勢の前で不具合を指摘されたからといって、担当者の面子が潰れることはありません。

私も、この意見に同意します。では、なぜ、前出の日本人のおばさんは、きちんと謝罪して改善した私たちを許さず(水に流さず)、後から会社に報告したのでしょうか。これは、このおばさんだけの個性ですか。それとも、日本人全体の特徴ですか?

■ 問いかけ ■

<問1>中国人出張者が感じた素朴な疑問:「騒音迷惑で素直に謝罪したのに翌週、会社から再注意」は日本文化ですか?

はい。日本文化の特徴です
いいえ。個人的特徴です
分からない
その他
結果を見る
コメントボード

締切:2010年11月09日18時00分
協力:クリックアンケート http://clickenquete.com/

<問2>素朴な疑問を感じた中国人出張者に対して、「成長を願う」観点から簡潔に助言を与えなさい。

| | Comments (3)

« October 2010 | Main | December 2010 »