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従業員満足度アンケートでありがちな不適切な設問

ある中国オフショア開発現地法人では、従業員の離職を防止するために大規模な従業員満足度調査を実施しました。以下の選択肢の中から、最も不適切なアンケート項目を1つ選びなさい。もし可能なら、あなたが答えを選んだ理由をコメントボードに記入しなさい。

(1)仕様変更の発生状況を問う
(2)個人キャリアの発展方向性を問う
(3)給料への不満があるかどうかを問う
(4)周囲から温かい支援があるかどうかを問う
(5)会社で発注するお弁当に対する評価を問う

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コメントボード

締切:2011年02月09日18時00分
協力:クリックアンケート http://clickenquete.com/


※2011年2月9日、以下の<答え>を追記

<答え> (2)

2つの観点から解答を導きます。1つ目は従業員満足度調査の目的、2つ目は「大規模」な社内調査の効果性です。

●従業員満足度調査の目的

設問の従業員満足度調査の目的は「離職防止による競争力の向上」です。社内調査でこの目的を達成するためには、2つの観点からアンケート項目を設計します。

調査観点1:企業戦略が意図するあるべき姿と実態との乖離度合い
調査観点2:人材マネジメントの実施状況に対する個人的な評価

調査観点1に対応するアンケート項目は、「組織の~の状況はどうなっているか?」「組織の~は適切な状態であるか(Y/N)」などの質問形式となります。例えば、選択肢(1)(4)は、オフショア現地法人の実態把握に役立ちます。

調査観点1では、あるべき姿と実態との乖離度合いを従業員がどう認知しているかを測定しますが、実態に関する個人的な評価(善悪、好き嫌い、自分にあうあわない)は問いません。

選択肢(2)「個人キャリアの発展方向性を問う」は、調査観点1ではないことは明らかです。

調査観点2に対応するアンケート項目は、「組織の~の状況について、あなたはどう感じるか?」「組織の~の状態をあなたはどう評価するか?」などの質問形式となります。例えば、選択肢(3)(5)は、オフショア現地法人の実態に対する個人的な評価(善悪、好き/嫌い、あう/あわない)の把握に役立ちます。

選択肢(2) 「個人キャリアの発展方向性を問う」は、従業員の気持ちや態度・評価を可視化するための予備情報といった位置づけです。

●「大規模」な社内調査の効果性

選択肢(1)(3)(4)(5)の調査項目は、一律の質問によって測定可能です。ところが、選択肢(2) 「個人キャリアの発展方向性を問う」だけは、ヒアリングとデータ解析に時間を要します。そもそも、個人キャリアの発展方向性は、従業員満足度調査ではなく、人事査定や日頃の管理活動で扱うべき観点です。

よって、(2)を正解とします。

最後に理解度チェックのための確認問題です。

<問1>以下の選択肢は、中国オフショア開発現地法人で実施される大規模な従業員満足度調査の質問として相応しいですか? 2つの調査観点を考慮して答えなさい。(Y/N)

(6)この会社は従業員のキャリア発展を積極的に応援しているか
(7)この会社で長く働けば、あなたのキャリア発展に役立つと思うか
(8)3年間の日本勤務が必要となったら、あなたは受け入れますか

<答>
(6) Yes ... 調査観点1に相当
(7) Yes ... 調査観点2に相当
(8) 自分で考えよう!

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Comments

給料のことに不満が無いものは居ないし、聞いてしまたら火に油をそそぐがごとく不満タラタラになるから。

Posted by: オフショヤ | February 01, 2011 at 05:40 PM

オフショヤさん、こんにちは。
「給料のことに不満が無いものは居ない」とは、いかにも中国っぽい特徴を表現していますね。給与に関する満足度調査では、次のような2つの質問を用意するといいでしょう。
(1)この組織では成果に見合った給与が支払われているか?
(2)あなたの給与額に満足しているか?

満足度調査結果は、下記の4種類に大別されます。よって、対策も大きく4種類に大別されます。
(1)(2)ともに「悪い」→困った状況
(1)「良い」、(2)「悪い」→人材管理の見直し
(1)「悪い」、(2)「良い」→組織風土の見直し
(1)(2)ともに「良い」→OKな状態

Posted by: 幸地司 | February 01, 2011 at 06:03 PM

各設問に対する、従業員の回答を予想し、結果として従業員満足度に付き、有効な回答が得られる可能性というプロセスで、各設問を評価し、◎有効⇔X無効で判断したい。

仕様変更の発生状況を問う⇒単に仕様変更という外的変化への対応を聞くが、結果として会社の運用の仕組み等の評価が得られる。⇒○

個人キャリアの発展方向性を問う⇒当社での発展の機会の有無が明確になる。但し、転職を考えている人間に対しては、有効な手段とならない。⇒▲

給料への不満があるかどうかを問う⇒一見危険な質問ではあるが、給与という生々しい話題より、周辺の同業者の給与→その他を含む待遇に話題を導けば、裏返しとしての社員満足度が浮き彫りになり易い⇒○

周囲から温かい支援があるかどうかを問う⇒周囲との協調や働き易さの指標として、満足度への直接的な回答が得られる。⇒◎

会社で発注するお弁当に対する評価を問う⇒各出身地により、味覚が大きく違う。腹だけ満たせばよいという考えの人もまだ多い。回答に対する客観的な分析ができない⇒X

Posted by: 芋 たこ 北京 | February 03, 2011 at 03:08 PM

(3)給与への不満:
理由:不満を書いて、会社が給与をあげてくれるならまだしも、記載をしても給与が変わらない場合、更に不満を助長させるだけなので。

Posted by: どらねこ | February 09, 2011 at 05:49 PM

お弁当ではないでしょうか?
お弁当に不満があるから離職する、お弁当の味や量が改善されたから離職を思いとどまるというケースはあまり想定できないと思うのですが。。
その他の項目はすべて、不満があり、対策されず、他所にもっと良いところがあれば離職の動機になる気がします。

Posted by: 渡辺裕 | February 15, 2011 at 08:00 PM

芋 たこ 北京さん、(4)お弁当に対する評価は客観的に分析にくい、とのご意見ですね。

以前、ご飯がマズイ!という理由(大義名分?)で、民工にストライキを起こされた製造工場があったと聞きました。当たり前報酬に相当する衛生要因の状況を確認するためには「お弁当の評価」もそれなりに役立つと考えられます。本設問は、中国の大卒エリートが揃う「オフショア委託先」が対象ですが、基本の考え方は同じ。

要するに「まずくない」ことが確認できれば、弁当調査の目的は達成されたことになります。古典的な動機づけ理論によると、衛生要因が確保できていないと、より高度な動機づけ要因は機能しづらくなります。

転職防止を考える際には、次の2つの観点からアンケート項目を設計するとよいでしょう。(1)衛生要因が満たされているかどうかのチェック項目 (2)動機づけ要因が満たされているかどうかのチェック項目。「(4)お弁当」は前者に相当するチェック項目です。

このような古典理論を考慮した上で、芋たこ北京さんが指摘された「各出身地により、味覚が大きく違う。腹だけ満たせばよいという考えの人もまだ多い。回答に対する客観的な分析ができない⇒X」というコメントを読むと、より理解が深まります。ありがとうございます。

Posted by: 幸地司 | February 15, 2011 at 11:25 PM

どらねこさん、給料への関心度・不満度については、結婚の有無(マンション購入意欲)との相関を調査すると興味深い結果が得られそうな気がします。
ちなみに、平均的なSEにとって給料は「衛生要因」です。つまり、世間相場並の金額をもらえないと不満爆発ですが、給与相場の2倍もらっているからといって、やる気が2倍になって、かつ、長期的に維持されるとは限りません。どんなに高い給料を貰っても、普通の従業員は、すぐに【当たり前】の感覚に慣れます。人間の環境適応力は恐ろしいくらい高いものですから。

Posted by: 幸地司 | February 15, 2011 at 11:51 PM

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