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標準プロセスが遵守されない理由

昨日の続きで、最近読んだ本を紹介します。

参考:グローバル社会への適応方法は1000年前に中国で発明済み

欧州の産業革命から始まり現在は米国が主導するグローバル社会の仕組みは、1000年も前に中国宋朝で発明された基本設計の焼き増しに過ぎません。

では、なぜ、今の中国では、法律が守られず、個人の財産権も保証されず、欧米流の民主的な議会政治が機能しないのでしょうか?

この問いかけには「民主主義は素晴らしい」「中国は悪の枢軸」みたいな前提条件が隠されています。前日も紹介した書籍「中国化する日本」によると、上記の問いかけの答えは以下の通りです。


●なぜ、中国では法律が守らないのか?

「なぜ、欧州では法律が守られるような土壌が育まれたのか?」を先に考える。

→答:欧州には中世後も永らく身分制度が残されていた。そのため、既得権益を握った貴族連中が王様(皇帝)から我が身を守るために公正な裁判制度を維持する必要があったから。同様な理由から、財産権も保護されるようになった、と考えるのが自然。

一方、中国では1000年前も宋朝時代に身分制・世襲制が撤廃され自由競争社会に突入したため、貴族が皇帝から財産を守るための裁判制度を発達させる牽引力が生まれなかった。

参考:中国化する日本 日中「文明の衝突」一千年史

●中国には身分制・世襲制がありませんが、国民の間に大きな経済格差が存在します。一方、日本には最近まで身分制・世襲制が残っていますが、国民の経済格差は世界的には極めて小さいとされます(参考:ジニ係数)。

日本と中国は同じような儒教文化を共有しながら、社会構造はまるで違います。

当然ながら、中国オフショア開発でもその影響をモロに受けます。

・平等意識
-買い手と売り手は対等関係(中国)
-男女平等(中国)
-職場と家庭は平等/むしろ家庭が重要(中国)


・格差
-数年前に結婚した幹部社員と未婚の若手社員との経済格差は凄まじい。同じような学歴を持ち、同じ会社で、同じプロジェクトで、同じ技術分野を扱うのに、生涯追いつくことの出来ない格差あり。
-日本で管理職になるには平均で勤続20年、中国で管理者になるには勤続5年、という管理職としての経験の格差


ちなみに、日本と中国、それぞれに「差別意識」は根強く残っています。公然の事実ですね。

・差別意識
-上流工程は偉い、下流工程は嫌い(日中共通)
-管理者は偉い、現場で汗水垂らして働くのは嫌い(中国)


最後に「ルール遵守に対する意識」について。日本と中国は、どちらも超法規的な暫定処置が少なくありませんが、その背後の意思決定メカニズムは全く異なります。

・ルール遵守に対する意識
-公式ルールよりもボスの意向が優先(中国)
-ボス不在なら、公式ルールよりも自分を優先(中国)
-公式ルールよりも、空気を優先(日本)
-目的が正しければ、公式ルールを破ってもよい(日本)
-前提条件が変われば、公式ルールに従う必要はない(中国)

■ 問いかけ

<問1>なぜ、中国では欧米流の民主的な議会政治が機能しないのか? 書籍「中国化する日本」の考え方を用いて説明しなさい。

ヒント:なぜ、欧州では民主主義な議会政治が必要とされたのか?


<問2>なぜ、多くのソフトウェア開発現場では標準プロセスが遵守されないのでしょうか? 日本と中国、それぞれの事情を考慮して理由を分析しなさい。

例:忙しいとき、勝手にレビュー省略する中国
例:顧客都合により手続きを無視して仕様変更をゴリ押しする日本

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グローバル化への適応方法は1000年前に中国で発明済み

息抜きに最近読んだ本の紹介。

中国の歴史は、唐(中世)と宋(近世)の間で切れます。現在のグローバル社会の仕組みは、実は1000年前の中国(宋朝)で基本設計されました。

唐(中世):地域ごとに分断された貴族による世襲政治
宋(近世):皇帝による統一的独裁、科挙(身分制・世襲制撤廃)

日本社会は当時の世界最強国「唐」から多くを学びましたが、宋の基本設計は日本の風土にあわなかったのか大事なところを真似しそこねました。

キーワードは「科挙」、最大のポイントは「なぜ古代日本は、当時世界最先端だった宋朝の人材抜擢システム=科挙を導入しなかったのか?」との問いかけです。

唐(中世):身分固定、機会平等はなし。地方軍閥による分裂状態。

宋(近世):科挙により機会の平等が保証。政治は超トップダウン。政治以外の領域は自由競争。政府によるセーフティーネットはなし。


繰り返しになりますが、欧州の産業革命から始まり現在は米国が主導するグローバル社会の仕組みは、1000年も前に中国宋朝で発明された基本設計の焼き増しに過ぎません。


中国宋朝流の社会をあえて一文で要約すれば以下の通りです。

 可能な限り固定化された集団を作らず、
 資本や人員の流動性を最大限に高める一方で、
 普遍主義的な理念の則った政治の道徳化と、
 行政権力の一元化によって、
 システムの暴走をコントロールしようとする社会。


現在の日本の社会の仕組みを知りたければ、1600年代以降に完成した江戸時代の基本設計を分析するとよいでしょう。それは、中国宋朝流の社会とはまるで正反対の特徴を有します。

もしあなたが、現代の中国社会を知りたければ、日本の明治時代を研究すると良いでしょう。逆にいえば、日本の明治時代の社会構造を理解すれば、現代中国の社会状況が手に取るように分かります。

ただし、これは「中国は日本より100年遅れている」という意味ではありません。前述したように、むしろ「中国は1000年も前にグローバル化に適合した社会構造を作り上げた。日本よりずっと進んでいる」と考えるほうが自然です。

参考:中国化する日本 日中「文明の衝突」一千年史

この本を参考に、伝統的な日本企業の組織運営の仕組みを考えます。

特徴1 職位(権威)と権力の分離

・役職者は現場で権力を行使しない日本企業の上位マネジメント
・日本の現場力を生み出す源泉にもなれば、
・日本のリーダーシップの弱さを象徴する特徴でもあります。
・例:あそこの部長は名前だけで、実際にはすべて現場の課長が仕切ってる


特徴2 トップマネジメントと道徳の弁別

・日本企業の道徳と言えば「現場一筋の古参社員」みたいなイメージがあるが、彼らは決して会社のトップエリートではない。会社トップが崇高に理念を掲げたところで、現場はむしろ白けちゃう。
・トップマネジメントの最大の仕事は派閥間調整であり、会社の外に訴えかけるような「道徳/理念」の出番はない。
・例:故スティーブ・ジョブズは日本企業のトップにはなれない。


特徴3 知識や能力があっても、権力や富が得られるとは限らない

・終身雇用や年功序列に代表される日本的人事の代表的特徴
・特徴3がなければ、中途採用者が活躍する余地が大きい


特徴4 OJTによる人材育成と現場主義

・「先輩の背中を見て育つ」に代表されるHigh Contextな秩序
・機会の平等より結果の平等を優先して組織末端までケアする「やさしさ」


特徴5 ムラ社会的な序列、空気を読め的な集団主義

・「遠くの親戚より近くの他人」を信条とする人間関係
・会社への高い忠誠心


■ 問いかけ

<問1>以下は、宋朝以降の中国社会の五大特徴です。中国オフショア組織運営の観点から補足説明しなさい。

特徴A 権威と権力の一致
特徴B 政治と道徳の一体化
特徴C 政治的に偉い人は頭もよく人間的にも立派、という建前論
特徴D 市場ベースの秩序と流動化
特徴E 宗族に代表される広く浅い個人的な人脈構築

参考:中国化する日本 日中「文明の衝突」一千年史

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退社時間19:30なのに「忙しい」

下記のオフショア開発事例を読んで、後の設問に答えなさい。

毎日残業が続き「忙しい、忙しい」を連発する中国オフショア委託先のリーダー朴さん。詳しく話を聞けば、平日の退社時間は19:30、休日出勤はゼロとのこと。日本側のオフショア窓口担当者は、この話を聞いて複雑な気持ちになりました。

(a) オフショア委託先が忙しいのは、日本側が要件をコントロールできていないから、という自戒の念

(b) 中国はいつも「忙しい」と愚痴をこぼすが、退社時間19:30なんて日本感覚だと「定時帰宅」。忙しい時期なので、中国側でも少し踏ん張ってもらいたい、という「中国の仕事観の甘さ」への不満。

(c) 中国側は常にリーダー朴さんだけが忙しくて、他の若い担当者はほぼ定時帰宅。なぜリーダーだけが忙しいのか? もっとチーム一丸となって頑張れないのか? という組織運営への不信感。

■ 問いかけ

<問1>上記(a)(b)(c)について、それぞれ中国側の立場から状況を
分析しなさい。必要なら、日本側窓口に反論しなさい。

分析の例:中国側リーダー朴さんは、幼い子供を抱える既婚女性、チーム規模は10名、サブリーダーは日本語能力N3レベル、それ以外のメンバーはほぼ新人で日本語能力ゼロだと仮定。

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