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海外視察の罠/顧客実績の誇張表現

中国生産委託先を視察する日本人出張者がよく侵す失敗。

・顧客実績の誇張表現に惑わされる

「大手○○社を担当しました」などの実績自慢を鵜呑みにし、本来の実力を見誤ることです。そもそも、大手○○社と直接取引したのか、それとも、中間業者を介した下請け作業なのかによって、顧客実績の意味は全く異なります。

たとえ中間業者を介した下請けであっても、上流工程からブリッジSEチームを派遣し日本側のプロジェクト運用に主体的に関わってきたのであれば、この実績自慢は傾聴に値します。

ところが、周囲から切りだされた閉ざされたソフトウェア部品を、仕様書に従い、上から与えられた品質基準を機械的に満たすよう人海戦術で製造しただけの実績なら、大手○○社担当にさほど意味はありません。

それでも、もし当時のキーパーソンが今でも健在なら状況はだいぶマシです。残念ながら、多くの中国企業では、人材流動が激しく、優れた技術者ほどすぐに出世の階段を駆け上がって我先にと現場を卒業する風潮のため、最も肝心な暗黙的知見は跡形もなく消え去っているでしょう。


●Q&A例1
海外「我が社は大手○○社の担当実績があります」
日本「そうですかぁ。で、一次請けですか、下請けですか?」
海外「SIerからの下請けです」
日本「多重階層の何次請け受注ですか?」
海外「たぶん、3次請けくらいだったと思います」
日本「・・・」


●Q&A例2
海外「我が社は大手○○社の担当実績があります」
日本「参画した工程は?」
海外「上流設計から参画しました(自慢!)」
日本「・・・」


●Q&A例3
海外「我が社は大手○○社の担当実績があります」
日本「○○社の実績あるなんてすごいですね~。もっと教えて」
海外「(喜んでしゃべる・・・・)」
日本「今の話を直接○○社に確認したいので、担当を教えてさい」
海外「それは、マズイです」
日本「・・・」


●Q&A例4
海外「我が社は大手○○社の担当実績があります」
日本「○○社の実績あるなんてすごいですね~。もっと教えて」
海外「(喜んでしゃべる・・・・)」
日本「品質基準はどうやって決めたのですか?」
海外「お客様から提供していただきました」
日本「この品質基準が正しいと判断した根拠は?」
海外「???(質問の意図がわからない)」
日本「開発プロセスはどうやって決めたのですか?」
海外「お客様から提供していただきました」
日本「このプロセスが正しいと判断した根拠は?」
海外「???(質問の意図がわからない)」


後日、以下の点を解説します。

・社員数の規模感を勘違いする
・物理セキュリティ設備に満足し運用実態を見落とす
・無免許/無許可操業の確認漏れ
・予想以上に高い人材流動率(特に中堅以上)
・優れた製造実績=優れた保守運用サービス、の勘違い
・キーパーソンの業務掛け持ちにより、自社対応の優先度低下
・社内教育カリキュラムに満足し運用実態を見落とす


以下は、既に解説済みです。

認証資格の誇張表現に惑わされる


■ 問いかけ

<問1>上記Q&A例1の海外発言「たぶん、3次請けくらい」から予想される実態を述べなさい。

<問2>上記Q&A例2の会話の続きを創作しなさい。

<問3>上記Q&A例3から推測される海外委託先の問題を述べなさい。

<問4>上記Q&A例4の日本人質問の意図を予想しなさい。

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