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悪意なき「問題なし」へのマネジメント視点対策

オフショア大學受講生との質疑応答より。
(Q. 受講生 A. オフショア大學講師)


Q.中国人は嘘つきというのではなく、悪意がないのに進捗などで「問題なし」と報告することに対して、どのようにガードをかければよいでしょうか?


A.二つの側面から対策するとよいでしょう。

1つ目は、国民文化に依存しない純粋なマネジメント視点での対策。
2つ目は、中国文化を考慮した異文化コミュニケーション視点での対策。

平時の現場レベルの進捗確認であれば、主に前者の方法で十分に対策できます。ここで、重要な前提条件を1つ確認しておきます。

<前提条件>
中国に限らず、オフショア委託先で働くメンバーは、あなたが想像するよりもずっと若くて、マネジメント成熟度が低いとうこと。
念のため、オフショア委託先の若手従業員らは、日本人に勝るとも劣らない技術力と向上心を持っています。決してガキの無能集団でありません。


まず、1つ目の対策について。

国民文化に依存しない純粋なマネジメント視点での対策なので、わざわざ本誌で語る必要はありません。巷の研修テキストやプロジェクトマネジメント標準の参考書に、無数の解答例が載っているはずです。

あえて、一つだけ助言するなら、前出の<前提条件>を決して忘れないでいただきたく。

日本企業の平均的リーダーと中国オフショア委託先のリーダーは全く異なります。マネジメント経験や品質意識は言うに及ばず、情報展開力や知見の文書化などは、日本企業で育った平均的リーダーの足元にも及びません。

この傾向は、役職があがれば上がるほど、日中の格差が鮮明になります。

念のため、中国人リーダーや役職者のチーム統率力に問題があるわけではありません。日中で同年代(例えば30歳)の技術者を比較すると、恐らく、ほとんどの場合、中国人30歳の方が管理経験が豊富です。彼らは、母語でない日本語を操って、日本の上場企業の部課長と対等に会話します。平均的な日本人ソフトウェア技術者では、到底考えられません。

ついでに、もう一つ中国人リーダーをフォローするなら、彼らの座学的な論理思考力は、平均的な日本人技術者を遥かに凌駕します。暗記一辺倒だと誤解されがちな中国教育ですが、世界有数の厳しい受験競争を勝ち抜いた者が多数を占める中国人ソフトウェア技術者なので、いわゆる地頭のよさも折り紙つきだとみなして間違いありません。


話を元に戻します。

1つ目の対策、すなわち、国民文化に依存しない純粋なマネジメント視点での施策で中国オフショア委託先から上がってくる進捗報告の精度を高めたい場合、相手を5-10年経験が浅い新米社会人と見なして接する方が安全です。

つまり、あなたが接する相手は一流大学卒の元気な技術者。だけど、社会人としては未熟なリーダー候補生。

このような前提でマネジメント施策を打つと、中国オフショア委託先から上がってくる進捗報告の精度を今よりも劇的に高められるでしょう。いわゆる、新入社員向けマナー研修の教科書に載るような基本技を活用するのも効果的です。


今日は解説が長くなったので、最後に単純ながら効果絶大の技を1つ紹介します。


・質問の視点を変更

×いつまでに終わりますか? → ◯いつから着手しますか? 

「いつまでに終わるか?」と問われたら、人間はつい憶測を喋ってしまいがち。ましてや、中国人技術者ならなおさら「◯◯までに完了します」と根拠なき自信で笑顔を振りまきます。ところが、「いつから着手するか?」と問われたら、人間はなぜか本音を明かしてしまう傾向があります。表のスケジュールと裏のスケジュールの両方を正確に把握できれば、経験豊かなあなたなら有効な対策を講じられるでしょう。

・・・続きは後日。


■ 問いかけ

<問1>進捗報告に関して、日本のやり方とオフショア委託先のやり方の違いをたくさん挙げなさい。


<問2>オフショア開発プロジェクト進捗報告書のフォーマットを設計する際、相手が外国人であることを考慮した注意点を述べなさい。


<問3>オフショア開発で日報を使う際の注意点を述べなさい。


<問4>オフショア開発で進捗報告をなくすメリットとデメリットをそれぞれ分析しなさい。


●過去関連記事

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標準化はどこまで細かくすべきか

オフショア大學受講生との質疑応答より。
(Q. 受講生 A. オフショア大學講師)


Q.プロセス、ルールなどの準備は、どこまで細かいものを揃えた方が良いでしょうか?


A.ここでは、プロセスやルールをまとめて便宜上「標準化」と表現します。オフショア開発の標準化について、実務者から寄せられる相談の重要ポイントは以下の2つです。

1)事前にどこまで細かいモノを揃えるか
2)どのように運用するか


今回は(1)に関する質問です。オフショア大學では、標準化のツールを2つに分類します。

1-1) 概要レベル → 指針/ガイドラインなど
1-2) 詳細レベル → コーディング規約、運用マニュアルなど

前者(1-1)は普遍的な原理原則で構成されます。コーディングに関する原則であれば「全ての公開関数には、利用者向けのコメントを詳しく記載すること」など。異文化コミュニケーションに関する原則であれば「中国人は何より面子を重んじるが、日本のソレとはかなり異なるので注意せよ」など。

概要レベルの指針は、社内教育の標準テキストとして利用すると効果的です。オフショア大學では、事例研究と併用する指導が主流となっています。


一方、後者(1-2)は状況依存することを前提に詳しく書くべきです。どれくらい詳しく書くかよりも、何を詳しく書くかに着目するとよいでしょう。原則として、日本国内で閉じる範囲であれば、さほど詳しく標準化する必要はありません。

一方で、海外オフショア委託先が関連する範囲、例えば「毎週の進捗会議用のためのTV会議開催法」なら、作業手順だけではなく各タスクの中間生成物とその評価基準まで、数値データを用いて詳しく定義します。

オフショア PMOなどのスタッフ部門ではなく、現場が自らの手で直接、作成・更新する仕組みを作ってあげると効果的です。オフショア大學では、実務者以外のスタッフ部門が詳細レベルのプロセス・ルールを整備したって、現場ではほとんど役立たないと説きます。
たとえ内容がまともであっても、現場ではほとんど運用されないからです。

もし、海外のオフショア委託先にプロセスやルールを導入したければ、「先週入社した業務歴2年の中途採用プログラマが周囲に質問しなくても完璧に作業できる」レベルで、詳しく文書化します。


標準化のコストはバカにならないので、現状の問題点をよく分析して、必要最低限のプロセス・ルール整備から着手するとよいでしょう。

ほとんどのオフショアPMO は、プロセス・ルール整備そのものが人事考課の対象となってしまうため、標準化がもたらす結果にまでは関心が行き届きません。しかも、オフショア開発スタッフ部門の多くは実務を抱えた兼務者であることから、「作りっぱなし」で放置される標準化が目立ちます。

悲しいかな、これがオフショア開発における標準化活動の現実です。

だからこそ、オフショア大學では、標準化活動を概要レベルと詳細レベルに大別して、スタッフ部門は主に「概要レベル」に注力するよう助言しています。

一方で、もしあなたがオフショア現場の実務者なら、いつかは詳細レベルの標準化に着手しなくてはいけません。あなたの組織が、人海戦術によるコスト削減を目的とするオフショア開発を目指すなら、詳細レベルの標準化は避けて通れない道だと自覚しましょう。もし、あなたが詳細化を嫌うなら、あなた自身がバイリンガルSE/PMとなって、海外オフショア委託先に長期間駐在する覚悟を持ちましょう。


■ 問いかけ

<問1>オフショア開発プロジェクトで標準化すべき重要なプロセスやルールをたくさん挙げなさい。

例:国際会議の実施マニュアル(電話、テレビ、対面式・・・)


<問2>あえて詳細に標準化しなくてもよいプロセスやルールを挙げなさい。

例:障害分析レポートの記述法(記載事項と体裁・テンプレートを定義すれば十分)


<問3>エリート意識の強い海外オフショア委託先のSEに対して、詳細レベルの標準化を要求すれば、彼らのモチベーションを下げてしまう恐れがある。もし、あなたの同僚がこのような悩みを打ち明けたら、あなたはどう助言しますか。


<問4>ただでさえ忙しい日本現場に詳細レベルの標準化を要求すれば、彼らの不満が爆発してしまう。そもそもオフショア活用だって現場は反対だったのに・・・。もし、あなたの同僚がこのような悩みを打ち明けたら、あなたはどう助言しますか。


追伸

今日の質問の範囲外でありますが、詳細レベルの標準化を現場にうまく定着させるコツがあります。ま、そりゃ、そうですねよ。


過去関連記事
用語集や辞書を機能させる工夫
親会社とは異なり時間厳守しない海外子会社
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幹部人材の経験不足は自覚されているか?

オフショア大學受講生との質疑応答より。
(Q. 受講生 A. オフショア大學講師)

Q.中国側の企業にて、幹部レベルの人間は経験が少ないことを認識し、問題視しているか?
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A.日系企業と中国企業とでは、答えが変わります。以下の回答はあくまでも一般論なので、過度に実践適用しないように。

・日系企業→部分的Yes

多くの経営陣は、中国人幹部レベルの経験不足を認識しています。特に、経営陣が日本人なら、かなり問題視しています。一方で、経営陣が中国人なら、経験不足そのものを問題視する発想はないと思います。百歩譲って、中国人幹部の経験不足は「問題」ではなく「挑戦課題」だと認識します。

・中国企業→No

経験があるからこそ幹部に昇格したのであり、はじめから質問が間違っています。もし幹部連中の経験不足が事実なら、そもそも日本企業からオフショア開発を受注できるはずがありません。ちなみに、他社の事情は知りません。よって、質問を我が社に限定するなら、答えは「No」です。

・・・多くの中国企業では、この様な発想が主流でしょう。


一般の中国企業の考え方については、第48回オフショア開発勉強会にて解説します。お楽しみに。


■ 問いかけ

<問1>日本と中国で、幹部レベルに要求される経験の違いを分析しなさい。(業務年数/職務歴/年齢/部下/金額、など)


<問2>オフショア企業における幹部レベルの経験を国別で比較しなさい。(中国/ベトナム/インド/フィリピン、など)


<問3>たとえ日本企業で幹部レベルの経験を積んだとしても、中国に駐在してオフショア現地法人をマネジメントする際に役立たない事がある。同意しますか?(Y/N) 答えの根拠を述べなさい。


過去関連記事
ミャンマー訪問記「もしミャンマー人SEが離職するなら」
ルールを守らないのがボス、すなわち特権階級の証

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オフショア開発する上で重要キーワード

オフショア大學受講生との質疑応答より。
(Q. 受講生 A. オフショア大學講師)


Q.オフショアする上で、重要なキーワードは何でしょうか、3つ教えてください

A.事業継続性とプロジェクト完遂、それぞれの観点で重要なキーワードは異なります。

事業継続性の観点(3つ)
・継続発注  (◯ヶ月以上)
・大規模   (◯名/月 以上)
・現場が嫌がっても発注させる経営レベルの強制力


プロジェクト完遂の観点(3つ)
・ブリッジPMの日本駐在(日本と全く同じを目指すなら)
・当たり前目標と魅力的目標をそれぞれ心底合意(将来性を鑑みて成長期待するなら)
・両国の現場キーパーソンによる頻繁な非公式コミュニケーション(一発モノの請負開発なら)


中国現地で実際に開発プロジェクトを陣頭指揮するオフショア大學のある日本人講師は、以下の3点を挙げてくれました。

・信頼
・継続(やり遂げるという意思)
・成長(個人もプロジェクトも企業も)

■ 問いかけ

<問1>上記の解説に関して、オフショア事業継続性の観点から重要なキーワードを補足しなさい。
・継続発注  (◯ヶ月以上)  → ◯に入る数字は?


<問2>上記の解説に関して、オフショア事業継続性の観点から重要なキーワードを補足しなさい。
・大規模   (◯名/月 以上)→ ◯に入る数字は?


<問3>上記の解説に関して、プロジェクト完遂の観点から重要なキーワードを補足しなさい。
・両国の現場キーパーソンによる頻繁な非公式コミュニケーション
→オフショア開発で重要な非公式コミュニケーションの種類を、できるだけたくさん挙げなさい。


<問4>上記の解説に関して、なぜ「精緻なドキュメント」や「プロセス整備」が重要キーワードとして挙げられていないのでしょうか。理由を分析しなさい。

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パートナー選定基準-社風、分野、事業拡張性

オフショア大學受講生との質疑応答より。
(Q. 受講生 A. オフショア大學講師)


Q.新たなオフショアパートナーを見つける際のCheckPoint(例えば、数社比較を行い評価するノウハウ)があればご教示頂きたい。


A.(前号の続き

・会社の規模感
・委託ソフトウェアの規模感
・交流言語


・社風/企業文化

100名未満のオフショア委託先に社風はありません。あるとすれば、社風=社長の人柄。技術出身で、いまだに現場稼働する社長が率いる組織と、営業・政府人脈が得意な社長が率いる組織の風土はまるで違います。

同様に、英語が得意で独自技術に誇りを持つ社長が率いる組織と、日本語が得意で在日経験を売りとする元技術者の社長が率いる組織も、全く違います。

オフショア大學のM講師は、自社とオフショア委託先の相性を確認するために小規模プロジェクトのお試し発注を推奨しています。ちなみに、CMMiやISO 等の各種規格の実績は、思ったほど社風には影響しません。


・技術/分野/ツール

対象となる技術、分野、利用ツールによってオフショア委託先の選択は異なります。ただし、これまでに紹介した規模感/言語/社風と比べるとCheckPointsとしての重要度は下がります。

実際、オフショア委託先が自称する「経験あり」は、ほとんど信用できません。例えば、3年前に、既に退社した元社員が担当した、詳細設計に従うだけのモジュール作成を「金融分野経験あり」と自称しているかもしれません。

現在保有する定量的能力や実績よりも、将来の成果につながる定性的能力を重視すべきです。


・発注量と継続性

小規模かつ単発委託が前提なら、コスト削減を目的とするオフショア開発は辞めたほうがよいでしょう。コスト削減以外の目的、例えば、国内では到底無理と思われる下流工程の急速人海戦術を期待するなら、コストを度外視したオフショア活用で活路を見いだせるかもしれません。

どうしても、小規模かつ単発プロジェクトのオフショア委託でコスト削減を狙いたいなら、将来の「ラボ契約」をちらつかせたニンジン作成が効果的です。日本国内でも、非人道的な活動が横行するソフトウェア多重下請け業務なので、多少のハッタリなら気にすることはありません。そのうち、オフショア委託先の方が、そのうちより強力なハッタリをかましてくるはずなので。

発注量と継続性を天秤にかけるなら、継続性の方がよりオフショア開発の成功に寄与します。たとえ小規模でも、1年以上、継続してオフショア委託する仕事量があるなら、戦略パートナーとしてオフショア委託先の持続的成長を支援する選択もあり得ます。


・オフショア以外の事業拡張性

「コスト削減が主目的」を信条とする会社と「将来の海外市場開展開を見据えたい」を戦略とする会社は、オフショア委託先の選択がまるで異なります。


■ 問いかけ

<問1>一般に、海外オフショア企業が実績として誇るCMMiやISO は思ったほど社風に影響しません。一体なぜでしょうか。


<問2>発注量と継続性を天秤にかけるなら、継続性の方がよりオフショア開発の成功に寄与する。この主張に同意しますか?


<問3>将来、海外市場の内需案件を狙いたいなら、どのようなオフショア委託先を選択すべきでしょうか。国や地域別に検討しなさい。


<問4>将来、オフショア委託先で自主製品開発を狙いたいなら、どのようなオフショア委託先を選択すべきでしょうか。国や地域別に検討しなさい。

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パートナー選定基準-規模と言語

オフショア大學受講生との質疑応答より。
(Q. 受講生 A. オフショア大學講師)


Q.新たなオフショアパートナーを見つける際のCheckpoints(例えば、数社比較を行い評価するノウハウ)があればご教示頂きたい。


A.オフショアパートナー選びの第一歩は「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」の徹底分析です。自社/パートナー/競合に関して知るべき細かい要素が、ご質問にあるCheckpointsに相当します。


・会社の規模感

強い成長欲求を持つ多くの海外オフショア委託先は、自社よりも格上の顧客と取引したいと望みます。その反面、自社よりも格下の顧客相手には、露骨に対応優先度を下げることがあります。分かりやすいのは、キーパーソンの引き抜き、営業トークと実態の著しい乖離、など。


・委託ソフトウェアの規模感

委託する規模に見合ったオフショア先を選定しましょう。いくつかの日系企業は、安心感から規模に見合わない大手オフショア委託先を選択しますが、長い目で見てうまくいくはずがありません。


・交流言語

委託元が、どれだけ日本語にこだわるか否か。オフショア開発であっても「日本と全く同じ」を理想とするなら、日本支社を有し、日本人ブリッジSEを活用するオフショア委託先を選定するほうが無難でしょう。一部のベトナム企業は、完璧な日本語対応を謳い文句にしますが、実際に「中国と同等」な日本語能力水準を期待すると、お値段も中国並に高くなります。

公式文書は日本語、日常のコミュニケーションは英語、との併用が可能なら、オフショア委託先の選択肢はグッと広がります。特に、優秀なリーダー/ブリッジSEを確保しづらい小規模プロジェクトでは、ちょっと背伸びして「英語交流」に挑戦していただきたく。


以下の分析項目については後日、議論します。

・社風/企業文化
・技術/分野/ツール
・発注量と継続性
・オフショア以外の事業拡張性

■ 問いかけ

<問1>海外のオフショア委託先が、顧客である日本企業を格付けする基準を述べなさい。


<問2>安心感から自社の規模に見合わない大手オフショア委託先を選択する日系企業は少なくないが、長い目でうまくいかない理由を分析しなさい。


<問3>オフショア委託先との交流言語を日本語に一本化しないメリットとデメリットをそれぞれ分析しなさい。


<問4>ちょっと背伸びして、オフショア委託先と英語交流するメリットとデメリットをそれぞれ分析しなさい。

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