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規約違反してもチャルタ・ハイ(Chalta Hai)

オフショア大學受講生との質疑応答より。
(Q. 受講生 A. オフショア大學講師)


Q.インドオフショア開発のいい加減な対応には、ほとほと手を焼いています。基本的に彼らはどんな状況でも「No」とは言いません。積極的といえば聞こえはいいですが、要するに、リスクが全く考慮されていない幼稚な印象です。


A.プロジェクト進捗会や各種検討会において、多くのインド人は直接的に「No」と拒絶回答することはありません。中国やベトナムだけではなく、他の東南アジア地域でも同様です [1][2][3][4]。

オフショア委託先からは、いつでも「大丈夫です」「問題ありません」と楽観的な回答ばかりが寄せられます。その結果、全国各地のオフショア開発で今日も甚大な被害をもたらされます。


※関連過去記事

[1]「没問題」によるトラブルは「文化の壁」が真の原因か?
[2] 悪意なき「問題なし」へのマネジメント視点対策
[3] 悪意なき「問題なし」への異文化視点対策
[4] オフショア大學メルマガ 2012/07/05(1,333号)上位者からの指示に対する対照的な反応


さて、ここで、オフショア開発でインド人が「問題ない」と言った場合の状況を考察しましょう。オフショア開発でインド側が「問題ない」と報告したら、それは英語 "No problem" の直訳です。ところが頭の中では、インド式 "No problem" が思考されています。

もし、あなたの目の前でインド人が「問題ない」といったら、慌てず騒がず次のように脳内変換しましょう。


 インド式 "No problem"
=問題があるのはわかったが、ジュガードで何とかするので大丈夫 [5]


ここで「ジュガード (Jugaad)」とは、前号 2015/05/19(1,496号)で紹介した、インドにおける「斬新な工夫による応急処置」や「その場しのぎ」を意味するヒンディー語由来の言葉です。

インド人が「問題ない」と言っても、問題の存在を否定しているわけではありません。ジュガードへの信頼から、最終的によい結果が得られることを確信しているのです。よい結果が得られる自信があるので、途中の紆余曲折、例えば作業遅延や人材流出による生産性低下、などは全く意に介しません。これがインド式「問題ない」の本質です。


最後に豆知識。

インドでは「問題ない」の態度を「チャルタ・ハイ(Chalta Hai)」と表現します。チャルタ・ハイを日本語に直訳すると「歩き回る」ですが、日常語で「大丈夫」や「問題ない」を意味します [5]。

小さなミスなら「いいよ、いいよ」「そんなのミスのうちには入らない」という感じです [6]。

インド人著者による参考文献 [6]によると、いささか厳しい表現ですが、インド人の欠点は内省できないことだと指摘されています。メーカーは品質が悪くても売れると知っているし、贈賄する人は価格を少し高めに設定することで賄賂額の2-3倍儲けられると知っています。チャルタ・ハイの態度が、インド人から内省を奪っています。

足りないものを即席で間に合わせるが「ジュガード」、最後には何とかなるさが「チャルタ・ハイ」。官僚の腐敗が蔓延し製造業がなかなか育たないインドで、なぜか火星探査機を飛ばせた不思議をよく噛み締めましょう [7]。


※参考文献

[5] インド人コンサルタントが教えるインドビジネスのルール
[6] 日本人が理解できない混沌(カオス)の国 インド1
[7] インドが激安で火星探査機を飛ばせた理由


■ 問いかけ

<問1>プロジェクト開始時に合意した日本式の開発規約に従わず、頑なに自分流を貫くインド人技術者がいます。あなたが、そのことを指摘したとき、ありがちな回答を「チャルタ・ハイ」を使って作文しなさい。


<問2>「チャルタ・ハイ」を使って、日-印オフショア開発でありがちな会話を作成しなさい。


<問3>「チャルタ・ハイ」に似た態度は世界各地に存在します。1つ以上、挙げなさい。


<問4>「ジュガード (Jugaad)」に似た概念は世界各地に存在します。1つ以上、挙げなさい。


<問5>日本人顧客が海外オフショア現地を視察中、突然停電が起きました。インド・中国・ベトナムでよくある現地スタッフの態度を描きなさい。多少のステレオタイプ描写は構いません。

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