専門家の知識と実践のギャップ

最近聞いた専門家の話より。

中国には中国独特の人材育成のキモがあります。

ある中国ビジネスコンサルタントの大城さん(仮称)は、日本で多くの社内研修・中国赴任者支援を実績を上げてきました。ところが、いざ自分が上海に赴任することになり、現地で最高責任者を務めることになると、これまでの指導内容が中国人部下の指導にあまり役立たないことに気づきました。

日本では「中国専門家」で名が通る大城さんでしたが、恥ずかしながら、上海赴任当初は次のような失敗を犯してしまいました。

社内のキーパーソンを集めた幹部研修にて。

「まず、皆さんの問題を取り上げてみましょう」→反応◯◯◯◯に比嘉さんは驚く!

「では、この課題について自分で考えてみましょう」→反応◯◯◯◯に比嘉さんは再び驚く!

「一人ひとりがリーダーシップを発揮しましょう」→反応◯◯◯◯に比嘉さんは開いた口が塞がらない


出所:BBT(2016)、組織人事ライブ 622:中国現法現地化のための人材育成

■ 問いかけ

社内研修で最高責任者が投げかけた以下の問いかけに対して、現地の中国人幹部はどう反応したでしょうか。それぞれのケースを予想しなさい。

<問1>「まず、皆さんの問題を取り上げてみましょう」
<問2>「では、この課題について自分で考えてみましょう」
<問3>「一人ひとりがリーダーシップを発揮しましょう」

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コミュニケーション不安の原因

オフショア大學では、自社のオフショア推進状況を多角的に診断するアセスメントシートを提供しています。

来週開催される講座(新横浜会場)でも「オフショア開発アセスメントシート」と名付けられた簡易版自己診断ツールを紹介します。

オフショア自己診断ツールは、主に現場向けと経営スタッフ向けの二種類に大別されます。

現場向けの診断項目は、主に品質やコミュニケーションなどプロジェクト成否に影響する要因に着目します。

一方、経営スタッフ向けの診断項目は、組織横断的なオフショア推進体制、コスト評価・パートナー評価など外注政策全体に関わる要因に着目します。


■ 問いかけ

<問1>ある日本の発注企業での話です。

プロジェクトメンバーを対象にオフショア状況を自己診断してもらったところ、主に海外との「コミュニケーション」に不安を抱えている実態が浮かび上がりました。多くの現場に共通する「コミュニケーション不安の根本原因」を予想しなさい。

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「必ず」と「絶対に」

オフショア大學受講者のご意見より。


私は日本で教育を受けた北京出身の中国人です。日本語による指示は曖昧になりがちだと思います。特に「指示の強さ」が中国人に伝わりにくい例をよく見かけます。例えば、講義で紹介された次の例文に、私は強く共感しました。

「ファイルを削除しないようにしてください」


講義では、指示や伝達はできるだけ「肯定文」に統一するようおっしゃっていました。中国人に対しては、さらに漢字を多用するとより効果的です。

「ファイル削除禁止」


さらに、次の2つの例文をご覧ください。

a.必ずファイルを削除してください
b.絶対にファイルを削除してください


日本人にとって、上記2つの文章はどちらも同じくらい強い指示だと思います。ですが、日本語能力 N3-N2 の中国人にとって、この2つの強さは異なる恐れがあります。


■ 問いかけ

<問1>日本向けオフショア開発で活躍する中国人技術者にとって、下記2つの指示はどちらがより強い印象を与えるでしょうか? 日本語能力は N3-N2 だと仮定します。

a.必ずファイルを削除してください
b.絶対にファイルを削除してください

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質より量に着目したポジティブ・フィードバック

オフショア開発のコミュニケーション効率を高めるには「質より量」に着目した改善が効果的です。

最も簡単な方法は、ポジティブなフィードバックを増やすことです。フィードバックとはコーチング研修でもお馴染みの基本技法なので、経験豊富な技術者ならその意味を正しく理解していることでしょう。

ところが、ビジネス書に載っているコーチングのお手本を真似ても、オフショア開発でうまくいくとは限りません。

オフショア大學では、次の3つの原則に基づいてポジティブフィードバックするよう指導しています。問題指摘などネガティブな要素をフィードバックする場合は、他の原則を使います。


1.自分を主語にして伝える
2.主観的な意見や感想をポジティブに表現する
3.相手の言動に気づいている、理解していることを伝える

上記の三原則に基づいてフィードバックする際には、アメリカ人の著作物を直訳したような不自然な日本語を用いても構いません。むしろ、そのほうが流暢な日本語よりも好ましいでしょう。なぜなら、フィードバックする相手は、オフショア委託先の外国人なのですから。日本語が不得手な外国人が相手なら、ぜひ英語でのフィードバックにも挑戦してください。

1.自分を主語にして伝える(Iメッセージ)

私は 良かったと 思う あなたが したことは
I think it was good that you (did*).


2.主観的な意見や感想をポジティブに表現する

私は 感謝します あなたが してくれたことに
Thank you for ...


3.相手の言動に気づいている(**)、理解していることを伝える

私は 気づいている あなたが したことを
I noticed that you (did*).

毎日遅くまで 働いてくれましたね
I noticed that you have worked late every day.


注1:英語が得意な人は、上記例文の did(あなたがしたこと)の代わりに具体的な動詞を使うとよいでしょう。その方が、オフショア委託先の外国人の承認欲求が満たされます。

注2:「あなたに気づいている」を表現する I noticed は効果的な表現です。もしあなたが動詞 notice に馴染みばなければ、類義語辞典(シソーラス)を使って notice を代替できそうな英単語をいくつか覚えておくとよいでしょう。例えば、次の動詞は notice の類義語として扱われます。

acknowledge catch detect discern "look at" note recognize regard see spot

■ 問いかけ

<問1>上記の三原則を実践する際に注意すべき点、やってはいけないこととは何でしょうか。

<問2>次の2つのコメント(a)(b)は、オフショア大學が提唱するポジティブなフィードバックに該当しますか?(Y/N)

(a) あなたの提案のおかげで会議がうまく進みました
Because of your proposal, our meeting became very successful.

(b) 今後もぜひ、このような提案を続けていただければ幸いです
Please continue making good proposals like this for the future.

<問3>ポジティブなフィードバックはとても有効な技法です。ビジネス書に載っているコーチングのお手本を真似ても、オフショア開発でうまくいくとは限りません。なぜでしょうか?

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真面目で職人肌の技術者にありがちな日本人英語

オフショア委託先の成果物をレビューして外国人技術者にフィードバックする際には、細心の注意が必要です。

これまでは「日本語」でオフショア委託先と交流する機会が多かった日本人ですが、今後は英語を併用する機会が増えます。

レビュー等で厳しい姿勢で問題指摘する際、日本語と英語では次のような違いが生じます。

・日本語
→敬語を使って相手の面子を潰さぬよう配慮

・英語
→意図的に褒め言葉やポジティブ表現を使って相手の面子に配慮


実は、日本語として適切に敬語が用いられた正しい指摘であっても、オフショア委託先に正しく伝わるとは限りません。むしろ、下手な英語の方がオフショア委託先に正しく伝わることがあります。


<例>「オフショア側による報告書に問題あり」を指摘したい

・日本語
→先日ご提出いただいた報告書につきましては、◯◯の箇所が若干理解し難いとお客様から指摘されました。・・・

・英語(日本語訳)
→(急いで報告書を仕上げてくれてありがとう。全体の構成はよいですが、細部に改善の余地があります・・・)


以下、いささか極端な事例ではありますが、日本人英語にありがちな不適切表現とより好ましい表現を紹介します。


・真面目で職人肌の技術者にありがちな日本人英語:
Your report looks terrible.
(あなたの報告書はひどい)

・より好ましい表現:
Your report has some room for improvement.
(あなたの報告書には改善の余地がある)

参考:外国人部下と仕事をするためのビジネス英語

■ 問いかけ

<問1>上記の日本語による問題指摘のリスクを分析しなさい。

<問2>上記の日本語と英語(日本語訳)の違いを分析しなさい。

<問3>1つの問題を日本語と英語でそれぞれ指摘しようとする際、なぜ言語によって表現方法が異なるのでしょうか?

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世代間ギャップが品質意識に与える影響

オフショア開発には「言葉の壁」や「文化の違い」に代表されるいくつかの阻害要因が存在します。オフショア大學では、これらを4つに大別して詳細解説します。

1. 言葉の壁
2. 文化の違い
3. 分散環境
4. 世代間ギャップ

これらの中でもっとも軽視されがちなのが「世代間ギャップ」ではないでしょうか。

今日はオフショア大學サブテキストから、日本と海外のソフトウェア開発現場に横たわる世代間ギャップに関する考察を抜き出して紹介します。


【状況】

・業務系アプリケーションのオフショア開発に関する話題
・海外と日本国内の技術者の平均年齢の違いに着目

【考察】

情報通信技術はその浅い歴史の中で、非常に大きな発展を遂げました。情報通信技術のあまりにも速い変化の裏を返せば、コンピュータやプログラムや情報処理についての知識を身につけた時期の技術水準に応じて、ソフトウェア品質に対しての勘所が大きく違ってくるということです。

およその傾向としては、上の世代ほどソフトウェアの背後にハードウェアの存在やデータ処理の基礎理論を強く意識しています。このためデータ容量・消費メモリ・CPU負荷・入出力負荷をできるだけ小さく抑えることを重視します。
またソートアルゴリズムを場合に応じて使い分けること(さらに自分で実装すること)や、データをバイトやビットの塊としてイメージすることに抵抗がありません。

一方で下の世代ほどそういった意識は薄く、代わりに業務ロジックを逐語訳的にプ ログラムに落とし込むストレートさを重視します。またソートでいえばアルゴリズム自体ではなく、すでに用意されたソート関数の使い方を知っていることに価値を見出しますし、あるいはデータを抽象的なオブジェクトとしてイメージすることに長けて います。

これだけ知識背景や方向性の異なるメンバーが集まれば、品質意識のすり合わせに相応の苦労を伴うであろうことは想像に難くありません。

出所:内山・幸地(2010)、SEの「品質」力、技術評論社


■ 問いかけ

<問1>日本企業の課長に相当するプロジェクトマネージャーが、オフショア委託先の外国人技術者を評してこうコメントしました。

 「オフショア側の技術者は品質意識が低い」

オフショア委託先の技術者に対して、このような否定的な見解がなされる理由を分析しなさい。


<問2>オフショア開発の阻害要因が上記の4つしかないと仮定します。ソフトウェア開発現場における世代間ギャップは、オフショア開発の成否にどれくらい影響すると思いますか? 影響度合いを 0 - 100 に数値化して答えなさい。

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念のため再確認したらベトナム人のプライドを逆なで

前号に引き続き、5月大型連休中に公開されたベトナム関連コラムから興味深い箇所を抜粋します(本誌発行人による加筆修正あり)。

よく目につくベトナム人IT技術者のマイナス特徴:

・全体的に、ディレクション能力が低い
・指示待ちになる傾向
・イノベーティブな発想や行動は起こりづらい


その一方で、プラス特徴:

・1つのことを教え込んだら的確に実行する人は多い


ベトナム人に指示・伝達する際には、性善説より性悪説で厳しく臨んだ方が長期的にお互いのためにもなる。

日本側の伝えたことをベトナム人が理解しているか気に掛かり、「いま私が言ったことを繰り返してみてください」と伝えたところ、「どうしてそんなことを聞くのか」と機嫌を損ねさせてしまったことがある。業務上確認したいだけなのにベトナム人のプライドを逆なでしてしまい、どうしたものかと頭を抱えた。

出所:ベトナムIT業界に起こる「オフショア疲れ」--対応を迫られる日本企業、CNET Japan (2016/05/04)

■ 問いかけ

<問1>ベトナムオフショア開発の現場で活躍するある日本人が、次のような発言をしました。

「ベトナム人がいつまでも下請開発に甘んじるわけがない」
「ベトナム人はディレクション能力が低く、指示待ち傾向」

この二つの発言は矛盾するように感じられます。前者はベトナム人の主体性に期待する一方で、後者は2016年になっても相変わらず単純労働しかできないベトナム人の問題点を指摘しています。

実は、オフショア開発の現場で、このような矛盾する発言は珍しくありません。なぜ、このような矛盾があちこちで生じるのでしょうか?

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政治と宗教の話はタブー?

オフショア大學受講生との質疑応答より。
(Q. 受講生 A. オフショア大學講師)


Q.海外の方と会話する場合は、政治と宗教の話はタブーと聞きます。事実でしょうか?


A.外国人との会話に不慣れな人は政治や宗教の話題を避けたほうが無難です。とはいえ、必ずしもタブーではありません。

範囲をオフショア開発に限定すると、日本企業は顧客の立場であり、しかも相手は中国とベトナムが大半を占めるので、巷に溢れる「海外=欧米」を前提とするマナー本に書かれた内容を鵜呑みにする必要はありません。

実際、私は、中国IT企業での社内研修でも、わりと気軽に日中の政治対立について議論をふっかけます。日本ではタブー視される皇室や核兵器に関する話題を通じて、日本と中国の文化の違いについて議論を交わしたこともあります。

2012年、例の尖閣問題がピークを迎えた頃、周囲の中国人から「我々のような民間人に尖閣問題は関係ない」と何度も声をかけられました。

ただし、上記はあくまでも、中国のオフショア関係者との交流に限定されます。政府関係者や一般市民との対話ではないことをご承知おきください。


■ 問いかけ

<問1>かつて、私が中国人向け講演で物議をかもした政治的話題を予想しなさい。


<問2>ベトナムIT最大手企業のプロマネを相手に、南沙諸島に関する議論をふっかけることは避けたほうがいい(Y/N)


<問3>ミャンマーIT企業のビルマ人幹部に向かって、アウン・サン・スー・チー氏の批評を述べるのは避けたほうがいい(Y/N)


<問4>インドIT企業の日本語が苦手な現地技術者に対して、クリスマスのお祝いメッセージを送るのは避けたほうがいい(Y/N)


<問5>バングラデシュIT企業との取引を検討する日本企業があります。相手企業の経営幹部に宗教上の留意点を根掘り葉掘り詮索するのは避けたほうがいい(Y/N)

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日本語のN◯って何?

オフショア大學受講生との質疑応答より。
(Q. 受講生 A. オフショア大學講師)


Q.講義中に出てきた「N2,N3」とはどのようなことを言うのですか。恐らく、日本語レベルのことだと理解しましたが、各レベルの定義はどのように分けられているのでしょうか。


A.ご指摘の通り、講義中に出てきた「N2,N3」は、日本語のレベルを示します。一番やさしいレベルが N5、一番むずかしいレベルが N1 です。正確な情報は、日本語能力試験の公式サイトをご覧ください。

日本語能力試験
http://www.jlpt.jp/


今から10年前、将来を期待される若い中国人技術者が N3 相当の日本語力を有していれば、社内選抜を経て日本研修の機会を得ることは珍しくありませんでした。受け入れ側の日本企業も、N3相当の中国人を歓迎したものです。

ところが、現在では、最高レベルの N1 を持っていても、日本行きの機会を得られるとは限りません。オフショア開発でリーダー業務を担う中国人にとって、N1は持っていて当たり前の要件に過ぎないからです。

これが、最新の中国オフショア開発の日本語事情です。


一方で、日本語力がやや劣るベトナムに目を向けると事情がやや異なります。また、一口にベトナムと言っても、二大都市のハノイ・ホーチミンとそれ以外の地方(例えばダナン)では、技術者の日本語事情は全く異なります。


■ 問いかけ

<問1>2015年現在、中国オフショア先で働く技術者、日本語 N1 相当であっても、なかなか日本行きは実現しません。一体なぜでしょうか。


<問2>N1相当の中国人技術者とベトナム人技術者とでは、日本語で業務遂行する能力に違いがあると思いますか?(Y/ N)

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中国・ベトナム以外の選択肢

オフショア大學受講生との質疑応答より。
(Q. 受講生 A. オフショア大學講師)


Q.アジア圏で中国・ベトナム以外の選択肢は現状どの程度ありますか。今後のオフショア開発の動向についてお聞かせください。


A.中国・ベトナムを含む5カ国が、直近のオフショア発注先として活用されています。案件数の実績順で5カ国を列挙します。

1.中国
2.ベトナム
3.インド
4.フィリピン
5.ミャンマー


一方、オフショア大學受講生から寄せられる関心の度合いで5カ国を並べ替えると、以下の通りです。

1.ベトナム
2.中国
3.ミャンマー
4.インド
5.フィリピン


ミャンマーについて。

これまで「国内はアマチュア水準、腕に覚えがある者は海外出稼ぎ中」がミャンマーの実情を説明する決まり文句でした。近年は、技術者のポテンシャルの高さが、他国と比べてミャンマー最大の利点だといえます。

ミャンマーの詳細は以下の過去記事をご覧ください。
http://aicoach.tea-nifty.com/offshore/cat23591648/


インドについて。

インドはコスト削減のための選択肢ではありません。多くの会社では、インドへは特別な技術力が求められます。コストが度外視される会社も珍しくありません。

インドの詳細は以下の過去記事をご覧ください。
http://aicoach.tea-nifty.com/offshore/cat4292100/


フィリピンについて。

最近本誌ではフィリピンの話題をほとんど扱っていません。


■ 問いかけ

<問1>ミャンマー人技術者のポテンシャルの高さを説明しなさい。

<問2>フィリピンオフショア開発の将来性を論じなさい。

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