立派な作業指導書の落とし穴

オフショア大學講師の著書より。

新規取引先として有力候補の中国工場を監査しました。そこでは○○工程が品質に与える影響が大きくなります。現場で作業指導書の内容を閲覧させてもらったところ、申し分のない内容であることを確認しました。

続いて実際の作業記録をチェックしたのですが、なんと現場では作業指導書に従っていないことがわかりました。

どうして、そのようなことになっているのでしょうか。監査員が詳しく調べていくと、意外なことがわかりました。なんと作業指導書に記載されている通りに作業することが実質的に困難であることが判明したのです。

この中国工場では数名のキーパーソンを各部門において、彼らに全責任を負わす体制で運営していました。生産を含む技術部門も一人の人間がすべての面倒を見ていました。そのキーパーソンが、実際に現場が回るかどうかを十分に確認しないまま、理想の状態を作業指導書に落とし込んだのが原因でした。

このようなこともあるので、たとえ理想的な作業指導書があったとしても、現場できちんと作業記録を閲覧して「理想と現実の乖離」を確認しないといけません。

出所:根本隆吉(2015)、こうすれば失敗しない!中国工場の品質改善<虎の巻>、日刊工業新聞社
(上記は管理人による加筆修正あり)


■ 問いかけ

<問1>ソフトウェア開発でも、理想状態が規定された作業指導書(プロセス/ガイドライン)に従わない現場は珍しくありません。日本企業では稀だけど、海外オフショア委託先ではありがちな例を1つ挙げなさい。

<問2>はじめは作業指導書に従っているのに、仕事に慣れてくるといつの間にか「勝手にやり方を変える」のは中国人の特徴です。この意見に同意しますか?(Y/N)

*Hint. オフショア大學公式メールマガジンをご覧ください

参考
勝手にやり方を変える中国人
自分勝手なブリッジSE
理解できない箇所は翻訳せずにすっ飛ばす通訳
勝手に知らない外部ソフトが組み込まれていたら


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手戻り覚悟で見切り発車

オフショア大學受講者より。

当社は中国パートナーにオフショア開発を出しています。これまで大きな問題はありません。あえて1つだけ気になる点を挙げるなら、中国側は「手戻り覚悟」で見切り発車する傾向があることです。スピード感覚の違いといえばそれまですが、他社でも同様な傾向はありますか? それともうちのリーダーの個性でしょうか?

■ 問いかけ

<問1>以下は一般的な中国人エンジニアの特徴を説明した文章です。選択肢から最も正しい説明を1つ選びなさい。

一般に中国人エンジニアは
(a) スピード感を重視するため、手戻りはあまり気にならない
(b) 手戻りのリスクを感じたら、見切り発車したがらない
(c) 見切り発車したがるが、それは手戻りのリスク管理が甘いから

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コミュニケーション不安の原因

オフショア大學では、自社のオフショア推進状況を多角的に診断するアセスメントシートを提供しています。

来週開催される講座(新横浜会場)でも「オフショア開発アセスメントシート」と名付けられた簡易版自己診断ツールを紹介します。

オフショア自己診断ツールは、主に現場向けと経営スタッフ向けの二種類に大別されます。

現場向けの診断項目は、主に品質やコミュニケーションなどプロジェクト成否に影響する要因に着目します。

一方、経営スタッフ向けの診断項目は、組織横断的なオフショア推進体制、コスト評価・パートナー評価など外注政策全体に関わる要因に着目します。


■ 問いかけ

<問1>ある日本の発注企業での話です。

プロジェクトメンバーを対象にオフショア状況を自己診断してもらったところ、主に海外との「コミュニケーション」に不安を抱えている実態が浮かび上がりました。多くの現場に共通する「コミュニケーション不安の根本原因」を予想しなさい。

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固定かローテーションか

オフショア大學を訪れるお客様の多くは、業務知識や製品固有のドメイン知識が深く要求されるオフショア開発に挑戦しています。例えば、特定業種の基幹系システムやデバイスの都合が何より優先される組込ソフトウェア製品開発の海外委託です。

このような会社のオフショア開発では、天才的なプログラマよりもコツコツ働く凡人が重宝されます。普通の真面目な技術者こそが持続的改善を牽引することを組織のみんなが熟知しているからです。こうした環境で常に議論になるのが「どうすれば優秀な海外人材を永く確保できるか」「どうすれば海外オフショア現場にノウハウを蓄積できるか」です。

これらの問いかけに対して、実際の開発現場では、意外にも二つの矛盾する回答が存在します。

1. オフショア側メンバーをできるだけ固定
2. 適度にローテーションさせる


■ 問いかけ

<問1>発注企業にとって「オフショア側メンバー固定」のメリットは自明です。では、「オフショア側メンバーを適度に適度にローテーションさせる」ことのメリットは何でしょうか。

<問2>発注企業にとって「オフショア側メンバー固定」のリスクを挙げなさい。


問いかけのヒントはオフショア大學セミナーにて(2016年10月セミナー日程を確認する

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「基準」の英訳

以下の会話を読んで、後の設問に答えなさい。


日本人:日本の基準にしたがってコーディングしてください。

中国人:不具合は基準を下回っています。ですから、細かいところまで基準を決めるのは意味がないと思います。

日本人:「意味がない」とはどういう意味ですか(怒)


■ 問いかけ

<問1>上記の会話を、インターネット上の無料翻訳サービスを使って英訳しなさい。


<問2>上記会話に出てくる3つの「基準」は、それぞれ正しく英訳されていますか?


<問3>上記会話に出てくる3つの「基準」を、それぞれ別の言葉で言い換えなさい。


<問4>中国人の口癖とも言える「意味がない」を、別の言葉で言い換えなさい。

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無記名ヒアリングを台無しにする行為

オフショア発注先の中国企業に日本人が短期出張し、現地で品質改善に取り組むことになりました。現地では、日本人出張者と現地の中堅リーダーが一堂に会して、先の失敗プロジェクトを反省しています。

会議終了後、出席者全員から無記名で反省事項を挙げてもらったところ、以下の何気ない指摘が物議を醸しました。

「宮里課長の指示が曖昧」
「○○社の保守はつまらないのでモチベーションが上がらない」


■ 問いかけ

<問1>オフショア企業での反省会後、無記名で挙げられた「宮里課長の指示が曖昧」が物議を醸しました。一体なぜでしょうか。


<問2>オフショア企業での反省会後、無記名で挙げられた「○○社の保守はつまらないのでモチベーションが上がらない」が物議を醸しました。一体なぜでしょうか。


<問3>オフショア企業での反省会後、無記名で挙げられた2件の指摘を読んだ日本側の統括部長が、この問題の根本原因を分析して対策を講じるよう宮里課長に指示を出しました。想定されるリスクを挙げなさい。

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監査は大嫌い

長期的視野でオフショア開発の品質改善に取り組むのなら、海外現地での草の根運動が欠かせません。


最近はラボ契約という名の「逆」丸投げ方式、すなわち、オフショア企業側が日本顧客に技術者を差し出した後、人材マネジメントを放棄するオフショア企業をみかけます。

例えば、うちは日本の要求通り技術者○名揃えたから「後は日本側が煮るなり焼くなり好き勝手にラボを維持管理して」と言わんばかりの放置プレーです。

残念ながら、こうしたラボ環境では、日本企業が得意とする持続的な改善活動は定着しないでしょう。


海外で品質改善に取り組むなら、現地メンバーが不得手とする「根本原因分析」への言及は避けられません。他にも「ピアレビュー」から着手する組織もあります。

いずれにせよ、日本以外の国や地域では、ピアレビュー、監査、重大事故の根本原因分析は様々な要因から嫌われます。


■ 問いかけ

<問1>最近よく見かけるラボ契約という名の「逆」丸投げ方式、そのメリットとデメリットをそれぞれ挙げなさい。


<問2>オフショア発注先の中国企業に日本人が短期出張し、現地で品質改善に取り組むことになりました。現地では、中堅リーダーを集めて、まずは「監査」について口頭説明しました。ところが、現地の評判は散々でした。一体なぜでしょうか。


<問3>オフショア発注先(中/越/印)に日本人が短期出張し、現地で品質改善に取り組むことになりました。現地でのレビューや監査の判定基準は、日本にいるときと同じ高い基準を保つべきです。この意見に同意しますか?(Y/N)

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コミュニケーション重視の善人こそが阻害要因

オフショア大學に寄せられた相談から。

大手SI企業から公共系/金融系システムを受託開発する中堅ソフトウェア開発会社で、課長と部長がそれぞれ次のようにコメントしました。

課長:自社では優秀なブリッジSEを確保できない。ならば、日本と海外のプロジェクト現場最前線の担当者同士が密なコミュニケーションを重ねることで仕様伝達の精度を高めるべきである。


部長:我が社にとって海外オフショア先は、ひよっこのコーダー集団である。表現は乱暴かもしれないが、今のオフショア開発は、大学生が高校生に仕事を発注するようなものである。

■ 問いかけ

今回の相談は「公共系/金融系システム」のオフショア開発が主な領域であることを考慮して、以下の問いかけに答えなさい。


<問1>オフショア大學ヒアリングに対する課長と部長の発言を聞いて、私は違和感を覚えました。いったいなぜでしょうか?


<問2>課長の発言は正しいと仮定します。

「担当者同士が密なコミュニケーションを重ねることで仕様伝達の精度を高めるべき」

この発言が成立するための前提条件を挙げなさい。


<問3>部長の発言は正しいと仮定します。

「海外オフショア先は、ひよっこのコーダー集団である」

この会社で、もし「担当者同士が密なコミュニケーションを重ねることで仕様伝達の精度を高める」対策を講じたら、オフショア開発の成功率は高まりますか?(Y/N)


<問4>上記課長のような発言に対して、「日本人による差別行為だ」と憤慨する外国人がいます。あるいは、憤慨せずとも「日本のやり方をオフショア勢に押し付けるべきではない」と冷ややかに反論する人もいます。いったいなぜでしょうか?


問いかけの答はこちらのセミナーにて詳細解説します。

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日本人上司の善意は外国人にとってパワーハラスメント

今月から来月にかけて、オフショア大學ではいくつかの公開/非公開セミナーを主催します。


【公開セミナー】
オフショア開発実践セミナー(印比緬編)2015年6月11日
オフショア開発実践セミナー(中国編)2015年7月14日
・無料版、ベトナム・アジャイル開発セミナー 6月23日


【非公開セミナー】
・オフショア開発講座(ASEAN編)@東京都内 2015年6月9日
・オフショア開発講座(中国編)@東京都内 2015年6月10日
・学生+大学院生向けグローバル講座 @芝浦工科大 6月19日
・学生+大学院生向けグローバル講座 @神奈川工科大 7月某日
・独立系ソフトウェアハウス社内研修 7月某日


私は、中国オフショア開発に専門特化していますが、オフショア大學が提唱する各種理論や分析フレームワークを使えば、グローバル対応に苦心する異業種の企業や個人に対しても、それなりに確度の高い助言を与えられます。

例えば、海外BPO委託、外国人アルバイトを活用する小売や外食店、ベトナム工場運営など。

私が着目するのは、日本企業の風土の背景に潜む「すり合わせの文化」「仕事は盗むもの」などの特徴です。

私が異業種の改善指導することになれば、「擦り合わせプロセス」や「仕事を盗む方法」を明文化する課題を真っ先に与えます。

もし、あなたが、インドやベトナムでのオフショア開発に悩んでいるなら、試しに「擦り合わせ」のプロセスを英語でマニュアル化してください。難しいでしょうが、オフショア開発を成熟させる有効な手段の一つとなるはずです。

私なら、オフショア開発チームから3~6名の代表選手を選んで、時間の使い方を棚卸しさせます。30分刻みで2週間、詳細な時間の使い方を紙に書き出し全体共有します。すると、チーム全体の「擦り合わせ」プロセスが浮き彫りになります。


■ 問いかけ

日本企業の古き良き「昭和的価値観」は、いかにも日本的な商習慣「擦り合わせ」や「仕事を盗む」を支える基本要素です。

日本の「擦り合わせ」や「仕事を盗む」が悪い、という意味ではありません。単に外国人には受け入れがたい特殊な価値観ということに過ぎません。

これからは、昭和的価値観の特殊性を自覚する者だけが、オフショア開発を持続的に発展させていくことができます。


<問1>「擦り合わせプロセス」を具体的にマニュアル化したら、どのような新発見がありますか。もし可能なら、事例を挙げなさい。


<問2>「擦り合わせ」や「仕事を盗む方法」が好まれる社風の組織で、理想の上司像を分析しなさい。もし可能なら、具体的な上司の言動を挙げなさい。


<問3>問2で求めた理想の上司は、外国人部下との相性はよくありません。もし可能なら、上司と部下が衝突する具体的な様子を描きなさい。

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インド現場が業務の重要性を理解していない

オフショア大學受講生との質疑応答より。
(Q. 受講生 A. オフショア大學講師)


Q.当社は、半年前からインドオフショア開発に取り組んでいます。

オフショア先では、いまだに委託業務の目的や機能の意義を理解せずに単にツール作成の延長として、作業にあたっている印象です。当社の業務は、社会インフラの一端を担うものです。ひとたびシステム障害が発生すると、多方面に甚大な影響がおよびます。一体、どうすれば、オフショア先に業務の重要さや社会的意義を理解してもらえるでしょうか。


A.難問です。

全ての技術者が日本語を学び、日本文化に触れる機会が圧倒的に多い中国オフショア先でも、同様な悩みが起こります。ましてや、中国よりも役割分担に敏感で、かつ、日本語を学ぶ意欲ゼロのインド人集団が揃う現地では尚更困難でしょう。

オフショア開発実践セミナーでは、全米で注目を浴びる自動車関連のリコール事案を用いて、これまで希薄だった中国人若手技術者らの品質意識を劇的に改善した事例を取り扱います。特に「中国」に特化した手法ではないため、恐らくインド現地の意識改善にも適用できるでしょう。


「リコール」事案を用いたオフショア現場の意識改善について、参考になる過去記事をいくつか列挙します。

外国人にも通じやすい背景説明
オフショア開発やりがい成熟度の三段階


近年、インドオフショア現場でも、メンバーの低年齢化が進んでいます。システム運用経験のない若手プログラマに「社会インフラ」の重要性を口でどう説明したって、決して心底理解してもらえるはずがありません。

よって、理想的な解決策は以下の通り。実際の現場では、一般論など役立たたいので、実態をよく分析した上で「原因」に応じた適切な対策を打たねばなりません。

・短期

目標の見える化。特に「当たり前目標」と「魅力的目標」を明確化すること。目標達成と個人評価の関係を明確化し、対象業務の重要性を「意味」ではなく「数値」で理解させる。

・中期

目標の構造化。上位の目標から下位の目標に流れるように要素分割。最上位が企業理念や方針に基づく目標、次いで企業戦略レベル、人材マネジメントレベル・PMOレベル、プロジェクトマネジメントレベル、最後に技術・ツールのレベルの目標。上と同様に、目標達成と個人評価の関係を明確化します。上とは違い、対象業務の重要性を「意味」で理解させる。

・長期

インド人キーパーソンを日本の現場に招聘して半年以上修行させて、対象業務=社会インフラの重要性を肌感覚で叩き込む。


目標の共有化に関する過去記事:

オフショア保守における温度差

■ 問いかけ

<問1>2014年12月現在、米国ではTAKATA社のリコール問題が大騒ぎになっています。この事案を使って、インド現場の「品質意識」を向上させる施策を考えなさい。


<問2>インドIT各社は、世界的に有名な金融機関や航空会社のバックオフィス業務をオフショアリングで請けています。その結果、それなりに安定した運用実績を誇ります。

上記が正しいと仮定します。

いわゆるミッションクリティカルな業務のオフショアリング受託で実績のあるインドIT各社は、どのようにして、若手中心のインド人技術者に業務の重要性や品質意識を叩き込んでいるのでしょうか。

中国やアジア諸国との共通点やインド固有の事情を考慮して、いくつかの仮説を立てなさい。

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