中国カントリーリスクの再確認

「中国リスク」という用語は、使う人によって異なる意味を持ちます。

ある人は、中国リスクを「中国のカントリーリスク」という意味で用います。

狭義のカントリーリスクは、財務・資金面に関するリスクに限定されます。極論するなら、国家が債務不履行(デフォルト)に陥るリスクです。よって、狭義の中国リスクには人件費高騰や知的財産権の侵害は含まれません。


別の人は、中国リスクを「中国事業継続を阻害するリスク」の意味で用います。例えば、JETRO調査[1]では、中国におけるビジネス上のリスク・問題点として以下を列挙しています。

1. 政情
2. 人件費高騰
3. 法制度
4. 知的財産権
5. 代金回収
6. 労務
7. 税務


ある民間シンクタンクの調査[2]によると、中国に進出した製造業が事業撤退する主な理由として、人件費高騰と債権回収リスクの顕在化の2つを挙げています。中国に進出したIT企業は、主に日系企業へのサービス提供で売上を立てています。よって、日系企業の業績不振によってIT企業の経営環境も厳しくなっていると指摘します。


近年、カントリーリスクを後者の意味で幅広く用いられる傾向があります。実際、オフショア大學でも「中国カントリーリスク」と「中国事業継続を阻害するリスク」を混同して用いることがありました。

今後、オフショア大學では、カントリーリスクを本来の狭義の意味で用いるようにします。

1. JETRO, 2013年度日本企業の中国での事業展開に関する アンケート調査(2013年9月)
2. 21世紀中国総研、中国撤退主要企業一覧(2015.1~2017.8)


■ 問いかけ

<問1>なぜ、中国カントリーリスクに「人件費高騰」は含まれないのでしょうか? 人件費高騰によって、明らかに財務・資金面のリスクが高まると思うのですが。

<問2>中国カントリーリスクに「為替変動」は含まれると思いますか?(Y/N)

<問3>中国カントリーリスクに「ネットワーク障害」は含まれると思いますか?(Y/N)

*Hints: オフショア大學公式メールマガジンに詳細な補足説明が追記されています。

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「富士康の劣悪なインターシップ」の裏側を理解

最近のニュースより。

先日、富士康科技集団の製造現場で劣悪な環境下で学生にインターンシップをさせていたと報道されました。ある専門学校から約700人を3カ月の予定で同社工場に集団派遣したところ、以下のような不満が爆発しあっという間にインターンシップは中止となりました。

・賃金が安い
・宿舎や食事、管理体制が劣悪
・学校での学習内容との関連性が低い

出所:NNA 共同通信グループ、2017/07/24付記事

あなたは、このような中国経済ニュースをどう読み解きますか?


元外資系コンサルティング会社代表の海野氏には、かつて富士康で係長を務めたことのある友人がいます。その友人によると、同社の給与水準はかなり高いものの、ノルマ管理が非常に厳しく、過去に自殺者が何人も出たのは頷けるとのことです。そして、その友人も結局は体を壊して富士康を辞めざるを得ませんでした。

上記は3次情報(友人の友人からの又聞き)なので必ずしも情報の信頼性は担保されませんが、マスコミ報道を鵜呑みにせず自分なりに「事象の裏側を読み取ろう」とする態度は評価に値します(と自画自賛)。


■ 問いかけ

<問1>ところで富士康とは、一体どういう会社ですか?

<問2>上記報道「富士康の劣悪なインターシップ環境」の裏側を理解するために、あなたはどんな情報を参考にしますか? 有益な情報源や情報収集法について述べなさい。

<問3>上記報道の裏側を理解するためには、中国を代表する世界最大級の通信機器メーカ Huawei(華為)の事例が参考になります。いったい、どのような観点で分析すればよいと思いますか? ブログ管理人の考え方を予想しなさい。

*Hint. オフショア大學公式メールマガジンをご覧ください

参考情報
【間違い探し】ヤマダ電機"撤退"決意!

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立派な作業指導書の落とし穴

オフショア大學講師の著書より。

新規取引先として有力候補の中国工場を監査しました。そこでは○○工程が品質に与える影響が大きくなります。現場で作業指導書の内容を閲覧させてもらったところ、申し分のない内容であることを確認しました。

続いて実際の作業記録をチェックしたのですが、なんと現場では作業指導書に従っていないことがわかりました。

どうして、そのようなことになっているのでしょうか。監査員が詳しく調べていくと、意外なことがわかりました。なんと作業指導書に記載されている通りに作業することが実質的に困難であることが判明したのです。

この中国工場では数名のキーパーソンを各部門において、彼らに全責任を負わす体制で運営していました。生産を含む技術部門も一人の人間がすべての面倒を見ていました。そのキーパーソンが、実際に現場が回るかどうかを十分に確認しないまま、理想の状態を作業指導書に落とし込んだのが原因でした。

このようなこともあるので、たとえ理想的な作業指導書があったとしても、現場できちんと作業記録を閲覧して「理想と現実の乖離」を確認しないといけません。

出所:根本隆吉(2015)、こうすれば失敗しない!中国工場の品質改善<虎の巻>、日刊工業新聞社
(上記は管理人による加筆修正あり)


■ 問いかけ

<問1>ソフトウェア開発でも、理想状態が規定された作業指導書(プロセス/ガイドライン)に従わない現場は珍しくありません。日本企業では稀だけど、海外オフショア委託先ではありがちな例を1つ挙げなさい。

<問2>はじめは作業指導書に従っているのに、仕事に慣れてくるといつの間にか「勝手にやり方を変える」のは中国人の特徴です。この意見に同意しますか?(Y/N)

*Hint. オフショア大學公式メールマガジンをご覧ください

参考
勝手にやり方を変える中国人
自分勝手なブリッジSE
理解できない箇所は翻訳せずにすっ飛ばす通訳
勝手に知らない外部ソフトが組み込まれていたら


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敬語もいろいろ

敬語表現は国や地域によって異なります。

例えば、沖縄では丁寧表現のつもりで「~しましょうね」という言い回しが用いられます。

・歯医者が治療中の患者に対して
 →「うがいしましょうね」

英語には、あえて「堅苦しい」単語を用いることで相手への尊敬を示す表現法があります[1]。漢字を「ひらがな」に書き下すことが多い昨今の日本語とは正反対の感覚です。

中国では、わざと押し付けがましい言い方をすることで、相手の面子を立てることがあります[2]。英語でも似たような表現を好むので、何事も遠慮気味に表現しがちな日本語の方を特殊だと認識したほうが正しいでしょう。

■ 問いかけ

<問1>以下には同じような意味をもつ2つの英単語(動詞)が併記されています。相手に敬意を表する際により相応しい単語を選びなさい。

1)「助ける」:assist / help
2)「試みる」:attemplt / try
3)「行く」 :attend / go to
4)「難しい」:challenging / difficult


<問2>以下は、中国語の直訳だとします。相手にものをあげる際により相応しい表現を選びなさい。

1)これは余り物ですから、どうぞ
2)わざわざあなたのために買ってきてあげました
3)ちょっと近くを通ったので、立ち寄りました


<問3>以下は中国語の単語です。これらは、時として頼まれごとを断る際の婉曲的な表現としても用いられます。なぜ、これが婉曲的な拒否の意味になるのかを予想しなさい。
カッコ内()は直訳です。

1)研究 (研究)
2)知道了(知っている)
3)差不多(ほとんど、差はない)


参考資料
1. マヤ・バーダマン(2015)、英語のお手本 そのままマネしたい「敬語」集、朝日新聞出版
2. 相原茂(2002)、話すための中国語、PHP研究所

*Hint. オフショア大學公式メールマガジンをご覧ください

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北京初出張で「本場のエビチリが食べたい」

オフショア大學に寄せられたほっこり系の話題より。

私の会社では、数年前から中国オフショア開発をやっています。私は、オフショア歴1ヶ月のSEです(日本人男性・38歳)。先日、生まれて初めて中国出張しました。訪問先は北京の開発パートナーです。

オフショア大學セミナーで教わったように、私は訪問先から熱烈歓迎を受けました。中国訪問の初日、現地の中国人マネージャーから「何か食べたいものはあるか?」と聞かれました。

私は北京料理について全く下調べをしていなかったので、とりあえず「本場の北京ダックとエビチリ、そしてマンゴプリンが食べたい」とリクエストしました。

すると、私の回答を聞いた中国人マネージャーと周囲の現地スタッフが苦笑いしました。


■ 問いかけ

<問1>北京初訪問の日本人SEが「本場の北京ダック、エビチリ、マンゴプリンが食べたい」とリクエストしたところ、現地の中国人スタッフから苦笑いされました。なぜだと思いますか?

<問2>大連初訪問の日本人出張者・桃原さん(男性・42歳)は、食事会でいきなりビール一気飲みの洗礼を浴びました。この場は最高に盛り上がりました。気分が高揚した桃原さんは「次は本場の紹興酒が飲みたい」とリクエストしました。現地で歓待する中国オフショア委託先の担当者は、どう反応すると思いますか?

*Hint. オフショア大學公式メールマガジンをご覧ください

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昼食を奢ってもらったので今度は私の番

オフショア大學への相談より。

私は中国オフショア開発を発注する側の中堅メンバーです(日本人男性・36歳)。

先日、中国オフショア先からたまたま日本出張する現地リーダー(男性・39歳)と一緒に会社近くで昼食をとりました。普段から彼とは仲よくさせてもらっています。

その際、現地リーダーに昼食をおごってもらいました。次に彼と昼食をご一緒する機会があれば、今度は私がお返しに奢ってあげようと思います。

例えば、来月、私は中国出張する予定なので、ちょうど良いタイミングではないかと思います。

ですが、きっと彼は「ここは中国ですから」といって、私に支払いをさせないような気がします。考えてみれば、これまでずっと彼には奢ってもらう一方でした。次の機会こそ、私が彼に奢る番だと思うのですが、いかがでしょうか。彼が気を悪くしないかどうかが心配です。


■ 問いかけ

<問1>日本人の相談者は、多少強引であったとしても次の機会は奢り返すべきでしょうか?(Y/N)

<問2>問1の答えの根拠を述べなさい。

*Hints はオフショア大學公式メールマガジンをご覧ください。

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海外パートナーに預けた金が戻ってこない

オフショア大學への相談より。

私は東京都内の小さなソフトハウスで営業をしています。最近は客先常駐から請負開発へのシフトに力を注いでいます。

数年前に当社でも東南アジアのパートナーを使って、オフショア開発に挑戦しました。当社にとって初めてのオフショア開発プロジェクトでしたが、意外にも無難に終えることができました。

その後も細々とオフショアチームを維持してきました。ところが最近、お客様の都合でラボを解散することになりました。突然のラボ解散でしたが、2年以上の活用実績が残せたので、当社としてはこれまでの結果に満足しています。

ところが半年後、突然、お金の問題が発覚しました。

当社は海外ラボの運営支援という名目で、海外パートナーに数百万円を貸し付けていました。現地での技術者の採用・教育・日本出張費用などに何かと金がかかるので、資金力に乏しい海外パートナーを財政支援していたのです。

ところが、貸付金の返却期日を過ぎても海外パートナーからの着金が確認できません。

小規模会社にとって数百万円は大金ですが、毎月100万円以上のラボ人件費の支払いが発生するため、貸し倒れリスクは小さいと見積もっていました。万一、海外パートナー側で何か怪しい動きがあれば、即座に毎月のラボ人件費支払をストップすればよい、と考えていたからです。

ところが、顧客都合で突然ラボが解散されたことにより、貸し倒れリスクが顕在化してしまいました。

当社の管理部門責任者が慌てて海外パートナー代表者の携帯電話に連絡したところ、驚きのコメントが戻ってきました。

「先日、会社を売却した。個人保有株もすべて処分した。よって貸付金については売却先の新会社と話して欲しい」


私たちは唖然としました。

当社がこれまで2年以上、この海外ラボを維持してきたのは、他ならぬ(元)代表者個人との信頼関係に基づいていたからです。

顧客都合で突然ラボ解散となったのは不幸な出来事ですが、2年以上の継続発注を通じて信頼関係を築き上げたのに「会社を手放したからさようなら」では到底納得できません。

当社社長は「裁判だ!」と息巻いていますが、現実には相手国の土俵で争うのは極めて困難です。

海外パートナーの元代表者は「もはや私はこの件については無関係だが、元代表としては遺憾である。何とか金が戻ってくるよう引き続き努力したい」と電話口で語ったそうです。

さて、この先いったいどうすればいいのでしょうか。

■ 問いかけ

<問1>この後、相談者がとるべき対応を検討します。可能性のある選択肢をすべて洗い出しなさい。

<問2>相談者の会社が、相手国で裁判を起こして争う決心をしました。想定されるリスクを挙げなさい。

<問3>相談者の会社にとって「数百万円」は、すぐに倒産するような金額ではないものの、かなり痛手です。なぜこのような事態を招いたのか、時系列順に原因を探りなさい。

*Hints はオフショア大學公式メールマガジンをご覧ください。

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海外顧客へのプレゼンに万全を期すも失敗

オフショア大學への相談より。

私は、日本のSI企業でグローバル対応可能なシステム導入を提案営業しています。ある日、アジア某国の研究機関から「システムを提案してくれないか」と依頼がありました。当社製品を導入してくださった実績のある有力者からの紹介案件です。

しかも、この研究機関から複数のキーパーソンが来日するとの情報を事前にリークしてもらいました。研究者らが集うシンポジウムへの参加が目的とのこと。

これ幸いにと、当社は営業・技術・R&D部門の上級管理職が首を揃えてシンポジウム会場を訪問し、来日したキーパーソンらにご挨拶しました。そして、入念に段取りされた流れにしたがって、当社システムの導入案をプレゼンしました。

プレゼンと質疑応答の公用語は英語でした。プレゼンは、技術出身で英語も得意な当社の中堅エース営業に担当させました。


・・・後日談

当該案件を紹介してくださった方によると、当社のプレゼンはお客様の心にあまり響かなかったそうです。

むしろ、若干の不信感すら残ってしまったようです。

■ 問いかけ

<問1>上記相談によると、プレゼンは失敗でした。一体なぜでしょうか。考えられる原因をできるだけたくさん挙げなさい。

<問2>上記相談のプレゼンが失敗した原因は、国民文化の違いで説明できます。この主張に賛成しますか?(Y/N)

<問3>上記の失敗事例から得られる教訓をまとめなさい。

* Hints はオフショア大學公式メールマガジンをご覧ください。

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日本製部品を海外パートナーに担いでもらう提案

オフショア大學への相談より(※)。


私はアジア新興国で国内市場の開拓に従事しています。

当社はシステムの一部分として組み込まれるソフトウェア部品を扱っています。

そのため、海外で売上を伸ばすためには、現地の有力パートナーのメニュー表に予め当社製品を加えてもらわないといけません。いわゆる、現地パートナーに担いでもらう営業方針です。

現地パートナーの営業責任者は、高品質な当社製品を高く評価しています。ただし値段が高すぎるため、ソリューション全体のバランスが崩れることを懸念しています。

実際、地元政府や現地見込客との商談でも、値段の話題になった途端に表情が一変します。「これじゃ全く話にならん」という態度です。

私も現地感覚だと「日本製は高すぎる」という自覚はあります。成功した他社事例など、何か有益な情報や助言をいただけますか。

※機密情報保持のため話をかなり脚色しています


■ 問いかけ

<問1>相談者が求める有名な成功事例を1つ挙げなさい。

<問2>日本製部品を海外パートナーに担いでもらうには、どう提案すればよいでしょうか。適当に条件を設定して、相談者に助言しなさい。


* Hints はオフショア大學公式メールマガジンをご覧ください。

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海外代理店による初のパッケージ導入

オフショア大學受講生からの相談より(※)。

私の会社では、10年間の取引実績がある中国オフショア開発委託先と販売代理店契約を結んで、自社パッケージ製品の中国国内ソリューション展開を図っています。

今年度の導入目標は5件ですが、実績は1件にとどまっています。

実績1件は、中国オフショア開発委託先の人脈を使って、ある国営企業の系列会社に試験導入しました。

試験導入といっても、実際には相応のカスタマイズが発生します。

そこで中国代理店では、不慣れなソリューション案件を成功させるために、日本向けオフショア開発で実績あるリーダー陳さんを客先に出向させて常駐作業させることにしました。

陳さんは、客先で頻発するカスタマイズ要求に現地でリアルタイムに応えることにしました。

ところが、客先で実際に起こっている多くの出来事は、日本側に伝わってきません。

対日業務で大活躍したリーダーが現場を指揮しているはずなのに、状況はなかなか好転しません。

このままでは、日本側からの支援も滞ってしまいます。

そこで急遽、日本人担当者が中国に飛んで、現地状況を確認することになりました。

現地に入ってプロジェクト点検を始めた日本人担当者は、現場のあり得ない状況に思わず言葉を失いました。

※機密情報保持のため話をかなり脚色しています。どうかご了承ください。


■ 問いかけ

<問1>現地でプロジェクト点検を始めた日本人担当者が真っ先に目撃した「現場のあり得ない状況」とは何だと思いますか? 


<問2>対日業務で大活躍したリーダーが現場を指揮しているはずなのに、この試験導入案件では苦労しています。なぜだと思いますか?


<問3>販売代理店契約を結んで「年間導入目標5件」を掲げた現地パートナーですが、このままだと目標達成できません。この後、事態はどう進展するかを予想しなさい。


問いかけの Hints はオフショア大學公式メールマガジンに記載されています。

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