計画的だが発注量の「山谷」が懸念

オフショア大學受講生との質疑応答より。
(Q. 受講生 A. オフショア大學講師)

Q.人材流動が高い中国で定期的な(四半期ごとなど)案件を任せたい場合、以前の技術者がいないなどの問題を軽減するにはどうすれば良いか?

坂道

A.これは難問です。四半期ごとに仕事はあるものの、年間を通じて継続的な発注量が確保できない前提。つまり、計画的ではあるものの、発注の「山谷」がどうしても避けられない場合の効果的な中国オフショア開発のやり方について。

あくまでも一般論ですが、以下の対策が有効だと思われます。

・他部門に頼み込んで年間を通じて継続発注できる仕事量を確保

自部門だけでは仕事量不足でも、他部門からオフショア継続するための仕事量を確保する方針。社外と連携する手もあります。

・山谷のある発注でも満足する少数精鋭のパートナーを選定

小規模の中国パートナーにとっては、予め人員確保の目処がつけられるため、誠実に対応してもらえる可能性が高まります。

・そもそも、人材流動しないキーパーソンを選定

例えば、実際に現場で手を動かせる技術出身の経営幹部がいる小規模パートナーに目をつけるとよいでしょう。なぜなら、経営幹部は人材流動しないので、ノウハウ蓄積の課題は解決されるから。

■ 問いかけ

<問1>「四半期ごとに仕事はあるものの、年間を通じて継続的な発注量が確保できない」との前提。人材流動やノウハウ流出が懸念。この種のオフショア開発が成功する確率は何%でしょうか。

0%
25%
50%
75%
オフショア開発の成否とは無関係
その他

結果を見る
コメントボード

締切:2014年07月03日18時00分
協力:クリックアンケート http://clickenquete.com/

<問2>「四半期ごとに仕事はあるものの、年間を通じて継続的な発注量が確保できない」と前提で、いかにも失敗しそうな要件をいくつか挙げなさい。

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素朴な疑問「最近のオフショアってどう?」

あなたは、今年4月入社予定の新米プログラマから次の質問を受けました。あなたは、先輩または上司として、新米プログラマの素朴な疑問に答えなさい。

<問1>以前のオフショア開発は失敗だらけでしたが、最近はどうなんでしょうか?

<問2>以前のオフショア開発はよかったですが、最近は中国の人件費が高くなってきたのでメリットが小さくなったのでは?

・・・
・・・
・・・

2010年3月5日追記

<答1>どの会社も、一度くらいは失敗するもの。実は、オフショア開発の成功事例は多い。一般にプロジェクトの成功事例を聞いても、退屈なだけでつまらない。しかも、苦労を重ねてようやくオフショア開発で失敗しなくなった会社が、堂々と「うちはオフショア成功した」と自慢するワケがない。「オフショアは相変わらず失敗ばかり」と思っている人は、選択的認知と呼ばれる認知バイアスに陥っていると自覚せよ。

<答2>答えはYesかつNoだ。優秀な中国人SE・PMの賃金は、毎年のように上昇している。ただし、チーム全体でならした中国人SE単価は、過去10年間ほとんど変化していない。生産性の向上が、人件費の向上を上回っているのだ。しかも、ダンピングも横行しているし。一方、中国法人の運営コストは毎年のように上昇しているため、原価削減だけが目的だとオフショア子会社所有のメリットは小さくなってきた。

JETROの2009年度調査レポートによると:
中国日系企業(通信・ソフトウェア業)のスタッフ月収は3604元、マネージャの月給は9232元(たぶん手取り額)。会社側の年間負担額は、それぞれ65,057元と151,231元。これを高いとみるか、安いと見るかはあなた次第。

参考:JETRO(2010)、在アジア・オセアニア日系企業活動実態調査 ―中国・香港・台湾・韓国編― (2009年度調査)

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助詞1つで意味が変わった仕様ミス

日本語が得意な中国人にありがちな問題
<ケース1> 日本語での報告書に誤字や間違いが多く、「対応しません」というコメントにお客様の担当も腹を立ててしまった。

現在開講中のオフショア大學第5期では、異文化コミュニケーションについて学んでいます。

昨日は「オフショア固有の問題分類法」を導入して、オフショア開発でよくある問題を分析するための枠組みを検討しました。


1)中国固有の問題(国や地域別の問題)
中国共産党との癒着、漢字が読めるが故の油断や誤解
ベトナム戦争の爪痕、カースト制の影響などもこちら

2)海外発注固有の問題
言葉の壁、輸出手続の問題など

3)分散開発固有の問題
沖縄と東京の分散開発でも同じ問題が発生する

4)中国オフショアとは全く無関係の問題
日本人による国内オンサイト開発でも問題が発生する

*参考:本誌2009/06/10(第1,079号)オフショア固有の問題分類法


昨日出題した設問に対する回答例を示します。私の答えを鵜呑みにしてはいけません。答えを導くプロセスや隠れた前提条件のあぶり出し技法にこそ着目してください。

<ケース2>
突然、オフショア案件の立ち上げ指令が舞い降りてきました。事前の準備期間が短く、業務知識を教育するも、中国の現場に浸透されませんでした。事前のQ&Aも少なく、最後にデスマーチ化しました。

→(3)分散開発固有の問題
オンサイト開発なら、事前準備がなくとも、常に担当者が膝と膝を突き合わせながら仕様を擦り合わせることでデスマーチを避けることができるから。


<ケース3>
火消しのため、日本人リーダが急遽中国オフショアの現場に飛びました。現場で働く中国人SEは、分からない事があっても、わざわざ日本人リーダに質問したくありません。そのまま自分勝手に作り込みました。仕様理解不足のバグはいつまでも収束しませんでした。

→(2)海外発注固有の問題
言葉の壁が大きいが、日本国内(社内)でしか通用しないコンテクスト(文脈的)によるコミュニケーションばかりに頼る日本人リーダーの力量不足ともいえる。


■問いかけ

中国オフショア開発で発生した以下の問題の原因を分析しなさい。


<項目チェック機能に関する日本から中国への仕様伝達ミス>

日本からの提供された仕様書には、こう書かれていました。

「ユーザーからの入力項目のデータについては、このテーブルが存在しない場合エラーとする」

実は、この仕様書では助詞の使い方が間違っています。テーブル“が”ではなく、テーブル“に”が正解です。日本人でも、たまに犯してしまう小さな誤字脱字の一例です。正しい仕様は以下の通りです。

「ユーザーの入力項目データがこのテーブルに存在しない場合はエラーとする」

ところが、中国では仕様書の通り「テーブル“が”存在しない場合はエラー」と実装してしまいました。つまり、前段から続く「入力項目のエラーチェック」という文脈は完全に無視された格好です。

※自己流で日本語を学んだ中国人にとって、日本語の助詞の用法は極めて難解らしい。

さて、あなたは、この問題をどう処理しますか。問題分析や再発防止策の実施に加えて、担当者の責任追及などを具体的に論じなさい。

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オフショア固有の問題分類法

日本語の強弱を調整できずに失敗
日本語での報告書に誤字や間違いが多く、「対応しません」というコメントにお客様の担当も腹を立ててしまった。

(オフショア大學受講生より)


現在開講中のオフショア大學第5期では、異文化コミュニケーションについて学んでいます。

今週は、拙著「オフショアプロジェクトマネジメントSE編」で解説した内容に沿って、言葉の壁と文化の壁を区別する技術を学びます。次に、個人特性の概念を導入して、単なる個人差と文化的相違の違いを見極める訓練を繰り返します。

オフショア開発では、毎日いろいろな問題が発生します。余裕がない状態だと、私たちはついモグラ叩きの要領で目の前の問題を潰しにかかります。本来なら、問題発生の根本原因に着目すべきなのに。

「曖昧な仕様によりQ&Aが多発するので、設計とQ&A窓口の担当者をわける分業体制に移行する」(典型的な対処療法)

ところが、こうした対処療法はオフショア関係者だけの悪癖ではありません。日本で最も頭がよい職業だと見なされる医者だって、無意識のうちに平然と誤った対処療法を助言します。わざとではなく、本気で間違った助言を与えます。

「ストレスがたまっているようですね。スポーツなどで汗を流して日頃からストレスを発散させましょう」(典型的な処療法)


さて、オフショア開発で発生する問題の分類法には、いくつもの切り口があります。例えば、下記の切り口はいかがでしょうか。

1)中国固有の問題(国や地域別の問題)
中国共産党との癒着、漢字が読めるが故の油断や誤解
ベトナム戦争の爪痕、カースト制の影響などもこちら

2)海外発注固有の問題
言葉の壁、輸出手続の問題など

3)分散開発固有の問題
沖縄と東京の分散開発でも同じ問題が発生する

4)中国オフショアとは全く無関係の問題
日本人による国内オンサイト開発でも問題が発生する

上記の問題分析の切り口を「オフショア固有の問題分類法」と言います。これは、先ほど思いついたオフショア大學の造語です。


■問いかけ

次の問題の原因は、オフショア固有の問題分類法(1)~(4)のうち、どれに該当するか答えなさい。


<ケース1>
日本語での報告書に誤字や間違いが多く、「対応しません」というコメントにお客様の担当も腹を立ててしまった。

→(1)もしくは(2)
海外オフショア固有の問題だが、もしかしたら、日本語が得意な中国人に固有の問題かもしれない


<ケース2>
突然、オフショア案件の立ち上げ指令が舞い降りてきました。事前の準備期間が短く、業務知識を教育するも、中国の現場に浸透されませんでした。事前のQ&Aも少なく、最後にデスマーチ化しました。


<ケース3>
火消しのため、日本人リーダが急遽中国オフショアの現場に飛びました。現場で働く中国人SEは、分からない事があっても、わざわざ日本人リーダに質問したくありません。そのまま自分勝手に作り込みました。仕様理解不足のバグはいつまでも収束しませんでした。

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オフショア切り出し判定基準

それぞれの意味の違いを述べなさい。

・リスク管理
・リスクマネジメント
・リスクコントロール
・リスク評価
・リスクアセスメント
(オフショア大學講義より)


次のリスクの事前評価(risk assessment)に関する問いかけに答えなさい。

<問いかけ>
過去にあなたが体験したオフショア開発プロジェクトを1つ選びます。もしも、オフショア未体験なら、国内協力会社との分散開発でも構いません。あるいは、身近な同僚の体験談でも構いません。

可能な限り、あなた自身が「貢献した」「頑張った」「苦労した」のどれかに該当するプロジェクトから選びます。当該プロジェクトにおけるリスクの事前評価の体験談や教訓を思い出して書きなさい。切り出し判定、メンバの人選など、何でも構いません。

あなたがオフショア側なら、案件受託リスクに関するアセスメントを検討しなさい。

<回答例>
我が社では、国内協力会社との仕事と比べて「楽」かどうかが重要な判断基準です。机上の計算でコスト削減効果があると判っても、国内開発より面倒ならオフショア委託したくありません。


■問いかけ

下記の複数選択によるアンケートに答えなさい。

オフショア案件の切り出し/受託を検討する際に、最も重視する判断基準を挙げなさい。オフショア切り出し基準の「減点要因」と「加点要因」をそれぞれコメント欄に追記しなさい。

◆プロジェクト規模
◆言葉が通じるかどうか
◆対象システムの複雑さ
◆開発プロセスの定式化
◆仕様書等ドキュメントの整備状況
◆ミッションクリティカルかどうか
◆日々の相互確認、相互連携の度合い
◆技術や情報、ノウハウの入手可能性
◆アプリケーションやモジュールの独立性
◆業界知識や独自仕様のカスタマイズの度合い
◆法的な制約
◆戦略的重要性
◆拠点間の距離の近さ
◆固有の知的財産
◆プロジェクト予算の余裕

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○コメントボード


締切:2009年06月09日18時00分
協力:クリックアンケート

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オフショア開発プロジェクト成功の定義


定義
オフショア開発プロジェクト成功とは、以下の要素を全て満足する状態だと定義します。
Q: quality : 品質目標
C: cost: コスト目標
D: delivery : 納期目標
S: scope : スコープ
R: relationship : ステークホルダーとの関係
L: Learning : 組織と人の学習目標


顧客によって、各要素の満足度は異なります。したがって、プロジェクトの成功とは、最適な満足度の組み合わせ(ポートフォリオ)と換言できます。通常は全ての目標水準を満足させる事は出来ないので、トレードオフ(trade-off)と呼ばれる"せめぎ合い"が繰り広げられます。

例1:納期を守るために、予算を削って、scopeを小さくした
例2:初オフショアなので、QCDよりも信頼関係を優先させます

仮説(1)
オフショア開発プロジェクトの成功要因と失敗要因は異なるはずです。まるで、従業員が「転職する理由」と「会社に残る理由」は違うように。例えば「信頼関係がない」は、オフショアを失敗させる大きな要因ですが、信頼関係があるからといって、必ずしもオフショア成功するとは限りません。

仮説(2)
オフショア開発プロジェクトの成功を決定する項目には優先度があります。一般にはQCD目標が重視される一方、「R: relationship : ステークホルダーとの関係」と「L: Learning : 組織と人の学習目標」は軽視されがちです。

以上を踏まえた上で、オフショア開発の成功と失敗について議論を深めましょう。

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今さら人に聞けない(5) 出発前の異文化研修は必要ですか

異文化適応に影響する個人的な要因

(1)出発前の異文化研修
(2)過去における海外経験


(書籍『海外派遣とグローバルビジネス』より)

来月、あなたの同僚が初めての海外出張を迎えます。「あなたの同僚」とは、仕様伝達のために中国出張する日本人SEかもしれません。あるいは、上流工程から参画する中国人ブリッジSEの初来日かもしれません。

ここで、初めての海外出張を迎える従業員のケアについて考えてみましょう。まず、出発前の異文化適応に影響する要因を分析します。

日本人SEの中国出張をケア

出発前の適切な異文化研修は、出張者の精神的な緊張を緩和させます。例えば、初めての中国出張を控えた日本人従業員に対しては、中国人の反日意識や食品や大気汚染等の安全面について、正確で客観的な事実と対処法を知らせます。

必要最低限のノウハウを列挙した小冊子を与えるだけでも効果的ですが、できれば専門家を招いて1時間ほどの異文化研修を実施したいところ。なお、異文化研修では、「あれもこれも詰め込む」ではなく、異文化の重要な側面に焦点を絞ります。

事前研修では、本人だけではなく、配偶者やご家族のことも忘れずに配慮します。本人はケロッとしていても、ご家族が過剰に心配されると仕事に悪影響を及ぼします。実際、海外出張に向けて本人はやる気満々なのに、親が横やりを入れる可能性があります。

「息子は喘息持ちだから中国出張させないでください」
「娘はアトピーなので海外勤務は無理です」


参考)『海外派遣とグローバルビジネス』、J.ステュアート ブラック他(著)、白桃書房 (2001)、p179


■問いかけ

下記の3問にそれぞれ答えなさい。(一人3クリック/要所時間1分)


【問1】あなたの組織では、初めての海外出張を迎える日本人従業員に対して、事前の「異文化研修」を施していますか?

◆実施
◆なし
◆語学研修で十分
◆その他

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【問2】あなたの組織では、初めての海外出張を迎える外国人従業員(中国人ブリッジSEの初来日など)に対して、事前の「異文化研修」を施していますか?

◆実施
◆なし
◆語学研修で十分
◆その他

○結果を見る
○コメントボード


【問3】事前の「異文化研修」で扱うべき“必要最低限”の内容を思いつくままに挙げなさい。

記入例「中国語研修では補えない食事のマナーと中国式カラオケ店については必ず扱うべきだと思います」

○コメントボードに回答を書き込む


締切:2008年09月02日18時00分
協力:クリックアンケート

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今さら人に聞けない(4) オフショア開発の「見える化」

成果を「見える化」し、やる気を持続
社員それぞれの提案件数を集計し、グラフ化して貼り出しました。1万件を達成するには1人あたり月に何件出せばいいのかを計算して、目標ラインとして明記します。
(儲けとツキを呼ぶ「ゴミゼロ化」工場の秘密、p136)

海外からオンサイト常駐技術者を受け入れたときによくある問題。


【ケース】見えない窓口担当 - ブリッジSEは遊んでばかり?

隣の席に座る中国人の常駐技術者が、普段からどのような仕事をしているのかを全く知らない、進捗会議でも表面的で事務的に進められる。

時として、一人で日本常駐する中国人技術者が問題を抱えても誰にも相談できないし、また周りも気がつかないことがあります。同様に、中国との窓口・調整役を務める日本人も、周囲からは遊んでいるように見られます。実際には、あまりにも雑務が多すぎて、周囲との対話が決定的に不足していることがほとんどです。

最近、ITプロジェクトで心の病を抱える技術者が急増しています。責任分担が明確すぎて、柔軟性に欠け、曖昧性に対応できずに立ち往生してしまいます。


■問いかけ

オフショア拠点と日本を結ぶ窓口・調整役は、何をやっているのか分からないけどなぜかいつも忙しそう。以下のキーワードを用いて、この問題への有効な対策を論じなさい。

キーワード:「見える化」「チームビルディング」「対話」

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今さら人に聞けない(3) 仕様の段階的詳細化は認められるか?

「バグ対応」に関する日本・中国・ベトナムの違い
日:お客様への仕様の確認不足による仕様変更は、外部設計(上流工程)のバグである

中:追加費用が発生するかどうかにかかわらず、仕様変更とバグの違い、責任所在にはこだわる

越:バグが出ることは恥ずかしいことだと認識している。技術者としてのプライドは高い

出典)中国とまったく対照的なベトナムオフショア事情
http://www.atmarkit.co.jp/im/cpm/serial/indiaoffshore/03/04.html


「仮の仕様書でとりあえず予習させる」が通用しなかった事例。

発注側(日本在住の中国人):

「まだ仕様は確定していませんが、とりあえず仮の仕様書を送ります。仕様が確定するまで予習しておいてください」

その後、仕様が確定し最新版に改版した仕様書を送付するため、発注者の責任者がパートナー会社の責任者に連絡したところ、パートナー会社の責任者の口から信じがたい言葉が発せられました。

受注側(中国在住の中国人)

「仕様変更は受け付けられません。開発はほぼ完了したので近々納品します。早急に検収してください」

出典)仮仕様書の後に仕様書最終版「仕様変更受け付ない」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080805-00000046-scn-cn


「正式契約前の作業工数を誰が負担すべきか?」

日本の要求仕様書は粒度が粗いことに加えて仕様も未確定です。オフショア開発の正式契約前の仕様把握の工数を誰が負担すべきだと思いますか?

・発注側   (53票) 59%
・受注側   (21票) 23%
・双方で折半 (14票) 16%
・その他   ( 2票) 2%

【コメント(2件)】

「契約されなかったら、受注側。契約されたら発注側の負担ということになるといえるのでは」

「契約受注前の見積作業に対する仕様理解は受注側営業行為と分類しています。従って、受注側負担です。但し、見積書の中に必ず作業準備工数を定義し受託工数に含めます」

出典)オフショア開発フォーラムによるアンケート結果(2007/3)
http://aicoach.tea-nifty.com/offshore/2007/03/post_6379.html


■問いかけ

オフショア開発では、「小さな仕様変更すら認められず有償対応となった」と不満を口にする人が大勢います。中国では、仮仕様やサンプル(凡例)を鵜呑みにして見切り発車する事故が相次いで報告されます。

開発プロセスが未成熟な組織なら仕方がありませんが、CMM/CMMIを達成したオフショア開発ベンダとの取引でも、同様な事故は多発します。すなわち、開発プロセスの成熟度と仮仕様/仕様変更にまつわるトラブルは思ったほど強い因果関係はありません。

実際、CMMIレベル5を達成したインド企業を相手にしても、「仕様変更は即有償対応」に関するトラブルが発生したと報告が入ってきます。インド側との契約締結時によく話し合ったにもかかわらず。


ここでいつもの問いかけ。

オフショア開発で、いかにも日本的な「仕様の段階的詳細化」が通用しない理由を分析しなさい。特に、開発プロセスの成熟度が高くても仕様変更にまつわるトラブルが絶えない事実を踏まえて、オフショア初心者にも分かりやすい言葉で説明しなさい。

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今さら人に聞けない(2) ベトナムの物価上昇

ベトナムを襲う物価上昇

・2008年6月現在、ベトナムの物価上昇率は前年同月比26.8% (CPI)
・政府の予想(毎月1%~1.5%の伸びにとどまる)は楽観的では?
・今後2~3ヶ月で、ベトナム経済の先行きが見極められる


(ベトナム現地法人を持つ日本企業/日本人)

ベトナム人技術者派遣やオフショア開発を進める日本企業の担当者から聞いた話より。

聞き手:幸地司(本誌発行人)
話し手:ベトナム現地法人を持つ日本企業の日本人担当者


――物価上昇に対して、一般のベトナムオフショア開発ベンダは、どのような対策をとっていますか?

◆多くのベトナムオフショア開発ベンダとお付き合いがありますが、正直、物価上昇や為替変動に対して、それほどの危機感は感じません。ベトナムオフショア開発ベンダにとっての主たるコストは、家賃と人件費ですが、家賃に関しては1ヶ月単位で急激に上がるわけでもなく、成功している地元企業の多くは、eタウンや、クワンチュンソフトウェアシティといった、比較的安い家賃のところに事務所を構えています。

人件費に関しても、高くなる傾向にはありますが、オフショア開発の利益が飛んでしまうほどのものではないと思います。決済問題に関して言えば、不思議なことに、ベトナムではあまり為替に関してセンシティブになっている様子はありません。為替変動に対して鷹揚なのは、ベトナムの不思議のひとつです。

取材先:デジパ株式会社
文責:幸地司


■問いかけ

ベトナムを襲う物価上昇は凄まじい。下記の国内シンクタンクの見解からも、その深刻さが伺える。

・ベトナム経済は安定化に向かっているものの、石油製品価格の引き上げで、8月以降のCPI上昇ペース再加速が確実。外国為替市場はいまだ自律的な安定を回復していない。(みずほ総合研究所)

・1997年のタイのような「資本収支危機」に陥るとは考えにくい。(日本総合研究所)


ここでいつもの問いかけ。

ベトナムの物価上昇が今後も続くと仮定します。ベトナムオフショア開発に取り組む日本企業はどのような影響を受けるでしょうか?

(1)ベトナムに現地法人を持つ場合
(2)ベトナムのパートナー企業に直接発注する場合(資本関係なし)
(3)国内パートナー経由でベトナム発注する場合(資本関係なし)

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